《異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します》副作用、そして後悔
メルマンさんの言葉を待つ。
「それを聞いて安心しました」
「……え?」
想定していたこととは真逆の言葉が返ってきたため、思わず顔を上げてしまった。
そこには本當に安心したとじ取れる程顔をほころばせているメルマンさんの顔がある。
しかしこっちは何故彼がそんな顔を浮かべているのか分かっていない。
「え、あ、安心ってど、どういう……」
困しているせいで言葉がたどたどしくなってしまう。
そんな俺の意図を汲んでくれたのかメルマンさんはホッとした表から、普段浮かべている優しい笑みを浮かべる。
そして一瞬だけサナの方をチラリと視線だけで様子を確認してから話始める。
「旦那様は換を行うと人がどの様になるかご存じですか?」
「いや、知らない……」
メルマンさんの質問にし躊躇いつつ答える。
その答えを聞いて軽く頷いた後に彼は続ける。
「換、私たち醫者はそれを漿(けっしょう)換と呼んでおります。漿とは、の細胞以外の分で、言うなればの赤くない部分とでも言いましょうか」
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漿。聞いたことのない単語だ。
の赤くない部分というのは薄黃のの部分などだろうか?
そもそもが赤いのは赤球が多いからだったか?
「その漿の部分に毒の有害質があるので、それを換するので漿換です。しかしこれを行うと當然人に影響が及びます」
その言葉に再びが強張る。
やっぱり俺のせいか……
「漿換は薬では対処出來ない場合に苦の策として行うのですが、様々な副作用や合併癥が起こります。癥狀の例としては頭痛や嘔吐、発熱、呼吸困難に染癥などです」
呼吸困難や染癥なんて最悪死ぬような癥狀まで出るのか。
ただでさえ毒で苦しんでいる彼にそんな癥狀は追いうちにも程が──
「つまり今リリー様を襲っている癥狀はクロシオモ草の毒ではなく、恐らく漿換による副作用によるものかと思われます」
毒だけなら薬でどうにかなったのに、面倒をかけてしまった。
「俺のせいで本當に申し訳ない!」
もう一度頭を下げる。
漿換によって染癥を起こせば、恐らく助けるのは困難になる。
確かに漿換という別稱は知らなかったし、どういう癥狀が出るのかも知らなかった。
それにここまで醫療が発展していることも。
染癥にかかった場合、さっきのダンジョンの薬を取りに行く。
いや、いっそ今から取りに行くか?
「あ、いえ。確かにそんな副作用や合併癥はありますが、なくとも原因が摑めたのですから対処は可能です! だから頭を上げてください!」
メルマンさんはそう言ってくれるが、しばらくの間は彼にかなりの苦労をかける。
やっぱり予定を変更してダンジョンに行くか? でもそうなるとキリが後回しになってしまう。
ダンジョンが先かエルフの里が先か……あー! どっちだ どっちを先にする方が良いんだっ
「アズマ」
どちらを優先するか、頭を悩ませていると今まで黙って様子を窺っていたサナに呼ばれる。
普段より低い聲音。そこからでも怒っているのが容易に分かる。
「あなた、もうし冷靜になりなさい」
彼の叱責は正しい。俺がもうし冷靜に判斷出來ていればこんな結果にはならなかった。
「ああ……俺の詰めの甘さと判斷の誤りが原因だ。冷靜に対処していれば、違う結果になったのに……すまない!」
今度はサナに向けてすぐ様頭を下げる。
いつも出來ると思って、なんとかなると思って行していたが、その結果上手くいったことの方がない。
リリーと初めて會った時、ユキナが連れ去られた時。
最善の選択が出來ていれば、公判なんて起こらなかったし皆も怪我せずに済んだ。
エルフの里に全員で向かっていればサキュバスに接せずに済んだ。
いや、それも公判が起こらなければ行かなかったかもしれない。そうなっていたら、危険な目に遭うことはなかった。
全部、俺が間違えたから……
「最悪だ……」
掠れるような聲で呟く。
目が熱い。悔しさを堪えたいのか、奧歯を強く食いしばる。
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