《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》4

「一通り人造魔石の能確認が終わったので、話をもうちょっと詰めていこうか」

「……はい」

ご自分の作った魔導飛行船がく事を確認出來てツヤツヤした顔をしたクロヴィスさんと、クランマスターの部屋に移する事になった。當然、魔導飛行船をかすのもクランの人達大勢が見守る中でやったので大変目立ってしまって……注目を浴びるのが苦手な私はちょっと疲れてしまっていた。

ここからは、月にどのくらい生産できそうかとか、本格的に生産するとしてそれにいくら初期費用が必要か、など細かい話をする事になる、と聞いている。そのために私も拠となる金額を提示できるように準備してきた。

「リアナさん、次に三〇等級以上の人造魔石が作れたら絶対私に売ってくださいね⁈ 約束ですよ⁈」と大げさに嘆くニアレさんは錬金工房に戻って行った。代わりに、副クランマスターのジェスさんがやってくる。彼はクランマスターのデリクが皇太子クロヴィスであると知っている。

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部屋にって來た途端に「クロヴィス様、聞いてない事を々とやるのはおやめください」と本名を口にしてお説教を始めたので、ここではデリクさんと呼ばなくて大丈夫みたいだ。

一応、冒険者デリクは「デリク・クロバイスル」とわざと名乗っているので、うっかりにもある程度対応できるだろうが。

「だってジェス。こんなすごい発明、興しない方がおかしいだろう?」

「素晴らしい研究だとは私も分かりますけど……」

やれやれ、といった顔のジェスさんは早々に諦めてしまったようで、クランマスターのものと並んだ執務機に座ると書面を広げた。

「まずは安全確保だね。あの人造魔石の生産には生きた魔を利用するけど、それらが逃げ出さないかとか……ミミックスライムは特別、新たな能力を獲得しやすいい品種なんだろう? 未知の能力を得て、我々が制できない事態になる危険はどのくらいある?」

真っ先に気にするところがそこなのか、とちょっと意外にじる。

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天才の人って、ご自分は出來てしまうから「余裕」を含めた安全面を軽視する傾向があると思ってたから。

例えばウィルフレッドお兄様は、グリフォンの討伐に「ミスをしなければ三人で一討伐出來るのに、凡人がしくじる事を考えて配備しなければならないからな」と嫌そうにしていた。

実力者でも、もしもの事があったら命を失う事もあるから、と考える私はいつも「リリアーヌは臆病だな」と笑われていた。

「まぁ、俺のように強くないからな、そうやって慎重にした方がいいだろう」なんて言われて野茂思い出して、ちょっと憂鬱な気持ちになってしまう。

……だって、準備が足りなかったと後悔するよりは良いから。

「今までは上手く魔石が育ってる個が一度に數なので私だけで管理出來てましたが、今後は人を複數人雇って代で一日中途切れなく監視を稼働させる予定です。また、ミミックスライムを大量に繁させる事でどんな例外が生まれるか正直予測出來ないのでそこはちょっと……」

「リアナさん、問題が起きると竜の咆哮(ドラゴン・ロア)の責任になるのは理解してますよね? 非公式とはいえ、ここはミドガラント皇太子クロヴィス様のクランです。危険があるなら事業としては……」

「まぁまぁ、待ちなよジェフ。僕はそのリスク、慎重なリアナ君なら問題にはならないと思ってるよ」

「そんな無責任な」

「僕だって賭けをしてる訳では無い。ジェフ、君は魔導車に乗るだろう?」

「それとこれに何の関係が」

「魔導車で事故が起きて死ぬ人もいる、それが分かってて魔導車は便利だ。運転に注意を払って、通事故を警戒すればそのリスクはかなり減らせると理解してるからこそ魔導車に乗るだろう?」

「…………」

かなり暴論寄りの例え話だったが、ジェフさんは難しい顔をしたものの反対の聲を挙げるのを一旦やめた。

「これも同じだよ。このミミックスライムがいつか変異して、伝承に殘るような……國を一つ飲み込んだ黒く覆うもの(ギガススライム)みたいなものになる可能はあるのだろう。砂漠に落とした針を一年後に見つけるくらいの確率でね。あるいは、この研究をする者が功績目當ての無茶を通す者だったら、比べにならないくらい危険になるけど……僕はリアナ君はそんな愚か者じゃないと思う」

「ね?」とジェフさんから視線を外して私に笑いかけるクロヴィスさんに、ちょっと気圧されそうになって仰け反る。

「も、もちろんです。危険について論じたら可能は絶対ゼロにはなりませんけど、限りなく低くする事は出來ます」

「期待してるよ」

咄嗟に、臆さず言い返せて良かった……。

その後は、人造魔石を生産するために必要な専用の広い工房の設備についてや、生産するために集める人員の話、私の権利関係の話……あと私は「第一皇子フレデリクの部下」になるので、將來的にちょっとややこしい事になる立ち位置についても。

私はクランの正式なメンバーではないし、今後も正式に所屬する予定もない。「フレデリク皇子が後援してる人造魔石を発明した錬金師」に、竜の咆哮(ドラゴン・ロア)が協力する代わりに人造魔石を優先的に販売する……という取引をした事になっている。

これからも魔を捕まえて生きたまま連れてきてしいとか、そういった依頼をする事になるだろう。

「じゃあこれは、資金提供者である僕からの依頼ね。今から半年以に、遠距離共振に使える人造魔石を開発してしい」

「それは……」

「もちろん、力じゃないよ。共振の核に出來る品質の人造魔石の事だ」

私自はまったくその可能に気付いていなかったが、たしかに……この技なら、意図してまったく「同じもの」と言える人造魔石を作り出すことが出來る。

リンデメンで作っていた人工魔石は魔道の核に出來る程の品質はなかったけど、こちらなら……。

もし可能になったら……クロヴィスさんが使っている雙頭竜の魔石ほどとは言わないが、普通の雙子の魔の魔石を使った遠距離共振より確実にない時間で同期出來るものが作れるだろう。

「わ、分かりました。まずは三〇等級以上の人造魔石が生される條件を探す事と、遠距離共振に使える人造魔石の開発を目指します」

「遠距離共振の方は可能ならでいい。達できなくてもペナルティは無いから、でも本気で取り組んでしいな」

「承知しました」

フランクに喋っているクロヴィスさんだが、指示を出す時はなんだか、こちらの背筋がびるような威じる。また固くなってると笑われたけど、この時のクロヴィスさんはとてもじゃないが……ただの友人の弟さんとして接する事なんて出來そうにない。

「あと、この人造魔石はレッドマンティス以外の魔でも作れるのかな」

「ミミックスライムの多の調整は必要になりますが、他の卵生の魔でも恐らく可能だと思います」

レッドマンティスを選んだのは、ある程度一定の品質の卵がまとめて得やすかったのが理由だ。魔石を大きく育てるのにはスライムを魔力が富な餌で飼育する必要があるが、これは他の魔などで構わない。

このスライムの餌は、魔を解して出た素材や食として利用できない部分を買い取る契約をここのクランと、この地域の冒険者ギルドと結んでいる。

「可能なら今後は魚系の魔を使ってしいなと思って。巖桂魔魚とかはどうかな」

「そう……ですね。それで作れるか試すことも出來ますが……でもどうしてですか?」

「これから人造魔石をたくさん作るとなると、魔の養も必要になると思うんだよね」

「かなり先の話ですけど、その可能はありますね。やはり魔の生態系が突然崩れるのは怖いですもんね」

討伐対象とは言え、特に最近私が高値で買い取っているので、割の良い素材としてとても人気の依頼になっている。このままでは來年の春、この地域のレッドマンティスの數は激減してしまうだろう。

なので魔石の核として他の魔が使えないかは元々試すつもりでいたが、なるほど養と言う手もあるか。

「ああ、その心配もあるけど……レッドマンティスはさ、空を飛べちゃうでしょ? 生まれてすぐは普通の蟲くらいに小さいし」

確かに飛ぶ。人より大きいなので飛行距離はあまり長くないが、腳力で跳ぶだけではなく翅でしっかり飛ぶ。

孵ってすぐはとても小さく、野生だと四%ほどしたになれないらしい。養するなら……確かに小さな蟲の飼育は難しいかもしれないな。

「空を飛ばれると安全に管理するコストがバカ高くなるから。魚系なら陸地に作った生簀からは逃げられないし、何か起きて殺す時も生簀の水を抜くだけでいい。素人でも安全に管理できるだろう?」

「た、たしかに……」

まったくの盲點だった。確かに、將來原料になるレッドマンティスを養する……となると頑丈で屋のある広い部屋が必要になってしまう。生簀の方がお金はかかるが、どちらがより確実に安全に管理できるかと言ったら魚系の魔だろう。

今ならまだ方向転換も可能だ。私は頭の中で、魚系の魔の卵を効率的に手にれる方法を考え始めた。

「今日は想像以上の収穫があったよ。條件については話した通りで……件の選定や採用する人員についてはジェフと詳しく詰めておいてくれ」

「はい、かしこまりました」

「だから、固いってば」

愉快そうに笑うクロヴィスさんは、上機嫌のままクランマスター用の個室から出て行って。私はその背中を見ながら、期待に沿える果を出せた事にホッとして息を吐き出した。

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