《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》解明の手掛かり
「ただいま帰ったぞ~」
「あらリアナ様、琥珀ちゃん……お帰りなさい。クロヴィス様とのお話はいかがでしたか?」
「ただいま……アンナ。そうね、お眼鏡にかなう果は出せたみたいで、明日からあの新しい魔石をもっと安定して作れるようく予定なの」
「あら、なら今夜はお祝いですね! 晩飯豪華にしておいて良かったです」
「おぉーー! 馳走じゃ!」
ミドガラントで借りている戸建ての中にると、味しそうな匂いが漂ってきた。広いキッチンのあるこの家で暮らすようになってから、元々料理上手だったアンナはさらに料理に凝るようになって、毎日手の込んだ食事を作ってくれている。
大変なのではと思うが、本人からは「料理は趣味として楽しんでますよ」と言われているので、私や琥珀がするのは自分の部屋の掃除と管理などに留めている。
アンナには今日クロヴィスさんに報告する事をし前から伝えていた。つまり私の研究が気にってもらえると最初から確信してて、こうしてお祝いを用意してくれていたという事だ。
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その信頼がとても嬉しい。
今日はクロヴィスさんと手合わせをしたせいで服や髪も埃っぽくなってるから、夕食は琥珀と私がシャワーを浴びてからになった。
琥珀が浴室に行った後、アンナと今日あった事を他にもお互い話す。近々帝都の市場で祭りがあるらしく、その準備であちこち忙しそうにしていたらしい。お祭りかぁ……楽しそうだな。
「あと、そうそう。リアナ様にお手紙が來てましたよ」
「手紙が?」
何の変哲もない、よくあるクリームの封筒を手に取ってちょっと考える。普通の配達で來たなら、クロヴィスさんではないだろう。第一、用があったなら今日言ってるはずだ。わざわざ手紙でも同じ容を出す人ではない。
くるりと封筒をひっくり返すと、見覚えのない男の人の名前が差出人として書かれていた。
「リック・フェルド……あ、これフレドさんの手紙よ、アンナ」
「フレドさんが使ってた偽名ですか?」
「初めて見るけど、フレデリック、の綴りを並び替えたら出來る名前だから多分そうだと思う」
連絡役はエディさんが勤めていたけど、今はフレドさんと一緒にミドガラントの地方の神殿に行っている。フレドさんの目について調べものがあった現地に向かったのだ。
正確には、「関係があるかもしれない」だが。それも確かめるために、直接確認しに行ったので先々週から會っていない。
……家を出てからもう一年経つけど、フレドさんとこんなに顔を合わせないって初めてだから何だか違和がある。ちょっと寂しいな……寂しいって、私何言ってるんだろう。
いや……だって、実家にいた時に家族と過ごす時間よりも多かったから……。ア、アンナと離れてた時も寂しいって思ってたし。
一瞬思い浮かんだを忘れようとするように、手紙の容に改めて視線を向ける。やはりフレドさんからの手紙で間違いなかったようだ。
フレドさんはまだこの國の貴族を警戒しているのだろう。エディさんを挾めない時はこうして手紙を出すのにも偽名を使うくらいだし、第一皇子が病気療養から復帰するという表向きの話もまだ公表されていない。
実際、本當に病気療養からの復帰なら、ごく親しい人だけ快癒した事を知っている狀況もおかしくない。買いに出かけたりだけの社の場に出たりはするけど、その後実際ちゃんと健康になったと確信が持ててから発表するとかね。
後からそう説明できる狀況を使って、第一皇子に戻るための立場や資金をしっかり準備しているのだと言っていた。
また、社界に出るにはフレドさんの目について、せめて制できるようにならないとフレドさんのが危ない、と皆の意見が一致したのもある。
目についてはフレドさんのの安全だけではなく、クロヴィスさんが求める「ミドガラント帝國の改革」のためにも必要な事だ。フレドさんの母親の取り巻きを含めた、あちらの派閥を切り崩すために。
この方について……私は直接見た事は無いが、クロヴィスさんがおかしいと思うような変な求心力のある人だそうだ。フレドさんの目と同じか、それより強い力があるのではないかとフレドさんも予想していた。
この不思議な力がその原因なら、制する方法を見つけておかないとこの派閥を円満に解散させる事が難しくなってしまう。
「道理の合わない強固な抵抗に出られたら、無で改革が出來ないからね」と何でもない事のように呟いたクロヴィスさんの事を思い出して私はため息をつく。絶対そんな手段を取らせるわけにはいかない、何としてでもいい解決策を見つけないと。私も出來る限り協力するつもりだ。
フレドさんの警戒は依然強いようで、手紙にも詳しい事は書いてなかったけど、訪れた先……つまり地方の神殿で有用な報が得られた、そうけ取れる容が書いてあった。
狀況が良い方向になりそうだ、とも。
「えーと……あ、明日には帝都に帰ってくるんだって。それで、空いてる日にここに來たいって……」
「かしこまりました。明日以降にけれられるよう準備はしておきますが、いつを指定なさりますか?」
「日付が決まってる予定は特に無いから……明後日で返事しておいてくれる?」
「承りました」
「……あ、待って。やっぱり、私が自分で手紙書くから、明日手配してもらっていい?」
そう言った私を、何だかアンナが生暖かい目で見て來る。
「うふふ、分かりました」
「な、何だか変な勘違いしてない? 私はただ、この手紙がフレドさんの直筆だから、私も禮儀として自分で書こうと思っただけで……」
「え? 勘違いなんてしてませんよぉ」
何だか含みのある言い方が気になったが、ちょうどそのタイミングで琥珀がシャワーから出て來たのでこの話は有耶無耶になってしまったのだった。
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