《【書籍化】「お前を追放する」追放されたのは俺ではなく無口な魔法でした【コミカライズ】》間に挾まってみた

「テレサさん。もっと、こっちに來てくださいよ」

エミリーが話し掛けると、テレサは微妙そうな顔をする。

溜息を吐くと、しぶしぶといった様子で彼橫に膝を崩して座った。

「私たちが上手くやらないとこの作戦は功しません。ガリオンさんのためにも頑張りましょう」

エミリーが俺の名を出すと、テレサはいやいやながらもその言葉に頷いた。

「もっとこう、抱き合った方がいいかもしれません」

エミリーがそう提案をすると、テレサは首を縦に振る。自くつもりはないようで、エミリーは「失禮します」と了承を取るとテレサを抱き寄せた。

「えへへへ、テレサさんらかくていい匂いがします」

エミリーはけるような表を浮かべるとテレサの肩に頭を乗せスリスリとこすりつける。このような森の奧で二人がを寄せ雰囲気を醸し出すのは非日常が強い。

ぐいぐい行くエミリーに対し、テレサは間に手を差し込むと顔をしかめ押し戻している。あれは、エミリーの肋骨が當たって痛いと思っている表だ。

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「テレサさんからも抱き著いて來てくださいよぅ」

そんなことには気付いていないらしく、エミリーはゆるふわな笑顔を向けるとテレサにも抱擁を要求する。

俺が見守っていると、彼は首をかし茂みに隠れている俺を恨みがましい目で見てきた。

(あきらめて言う通りにしろ)

言葉に出さず口をかす。俺の言葉が通じたのか、テレサは指示に従う。

なぜこのようなことをしなければならないのかというと、今回のターゲットが『ユニコーン』ではなく『ユリコーン』だったからだ。

『ユリコーン』は『ユニコーン』よりもさらに希な生なのだが、若い同士の絡みを好むという伝説がある。

都合が良いことに、テレサもエミリーもそこらではお目に掛かれないなので、この二人を餌にすれば確実にユリコーンをおびき寄せるのではないかと考えたのだ。

「わっ、テレサさんもようやく積極的になって來てくれたんですね」

決して、俺が百合百合する姿を見たかったわけではない。

あくまで見張るため、意識を仲睦まじく百合あう二人に集中していると……。

『ユリリリリーーーーーーン』

妙な鳴き聲と共に、白馬が姿を現した。

「ひっ⁉」

見定めるようなユリコーンの視線にエミリーが怯えた聲を出す。

テレサはそんなエミリーをぎゅっと抱きしめると、安心させてやった。

「て、テレサさん……」

包み込む優しさと、部にれる暖かくもらかいにエミリーは安心すると彼を見る。

ユリコーンが近付き、二人の様子を観察し始めた。

『ユリリリリ?』

まだ疑わし気な様子で二人の周りをく。

「テレサさん、もっと仲の良いアピールをしないと。表が……」

エミリーは及第點にしても、テレサは相変わらずの無表なためユリコーンに疑われている。

この作戦は二人のが仲睦まじくしている姿を見せ、ユリコーンが油斷している間に捕まえるというものなのだ。違和を覚えたらユリコーンは逃げてしまう。作戦の功はテレサにかかっている。

「こういう時はですね、好きな人を思い浮かべて……」

エミリーが何やらアドバイスを送っているが、小聲なので聞こえない。だが、彼もこのままでは取り逃がしてしまうと思ったのか、一瞬こちらを見ると……。

「か、可いです。今までで一番可い表してます。はぁ……食べちゃいたいですよ」

頬を赤らめ艶やかな表を浮かべた。

エミリーの評価は良いとして、問題はユリコーンの癖に突き刺さるかどうかだ。俺はゴクリとをならし機會を待つ。

『ユリン? ユリ……? ユリリリリーーン!』

品定めをするかのように、ユリコーンが二人へと近付く。

『ユリリリリーーーーーン』

そして、興して蹄を上げると目にハートマークを浮かべた。

「わっ⁉」

頭をもたげさせ、二人の膝へと乗せるユリコーン。百合の間に挾まるとは許されない所業だ。

「や、やりました!?」

ユリコーンは二人の膝に顔を押し付け鼻をひくつかせ臭いを嗅ぐと寛いだ様子を見せる。

先程までとは比べにならないくらい幸せそうだ。無理もない、俺だって許されるなら間に挾まりたい。

「えへへへ、こうしていると可いかもです。角ってそんなにくないですね……不思議なです」

手筈通り、エミリーはユリコーンをで油斷させる。

このままで続け、完全に意識を逸らした時に捕まえる。

しですべて上手く行く。そんな考えこそが慢心だったのだろうか?

『ボアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

気付いたら、他のモンスターが姿を現していた。

(あれはCランクモンスターのビッグボア。い鼻とその巨を活かした突進は大の男數人かかりでも止められず、潰されたら大怪我を負う)

この森で遭遇するには希なモンスターなのだが、タイミングが悪い。

『ボアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

ビッグボアはテレサたちの姿を認めると、突進を開始した。

『ユリリリリッ!?』

異変をじたユリコーンは起き上がると素早くその場から離れる。

ユリコーンが離れたことで自由になったテレサも立ち上がると行を移した。

「噓っ!?」

唯一、狀況の把握が遅れたエミリーは、立ち上がろうとして膝をつく。混しているせいか咄嗟に足がかないようだ。

「いや、駄目っ!」

このままではエミリーが押しつぶされてしまう。そう判斷した俺は茂みから飛び出すと彼を抱き、ビッグボアの線から逃がしてやった。

『ユリッリリ!? ユリィ!? ユルルルルウウウウウウッ!!』

俺が飛び出したことで面を食らったユリコーン。狀況を把握したのか憎悪の視線を俺に送ってくる。

「あっ、こらっ!」

男の姿が見えたことで、あまりにも素早いきでその場から逃げ始める。

「くそっ! 後しだったのに……」

今から追いかければ間に合うかもしれない。俺がユリコーンを追おうとしていると、

「ガリオンさんっ!」

エミリーに呼ばれ見てみると、ビッグボアがこちらを見ていた。

ただでさえユリコーンを追いかけなければ間に合わないというのに、この上邪魔なビッグボアまで……。

『ガリオン私の魔力を――』

視界の端でテレサが何かを書いているが、今の狀況では時間が惜しい。

「すまんが、ちょっと失禮するぞ」

「えっ……? あんっ!」

エミリーの手を握り、魔力を吸わせてもらう。目の前のビッグボアを瞬殺して直ぐに追いかければ間に合うかもしれないから。

「言っとくが手加減はしてやれないからなっ!」

橫ではテレサが手をばし呆然とした様子を見せている。

俺は彼かないのを確認すると、ビッグボアに斬りかかった。

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