《骸骨魔師のプレイ日記》侵塩の結晶窟 その五
ログインしました。結局、昨日は一日中対戦會のために奔走することになった。そのおでクエストを大量に消化することは出來たものの、今日も同じことをしたいかと問われるとそれは否である。私だって探索したいのだ。
ということで、今日は深淵探索のお時間だ。今日目指すのは未だに誰も到達していないと聞く『3F』である。最上階以來、我々が最初に探索する階層になることだろう。
フロアマップによれば、この『3F』は雑貨店が集まっていたらしい。古代の雑貨がどんなものかはわからないし、殘っているのかも不明である。だからこそ探索のし甲斐があるというものだ。
「いっちょやっかァ」
「腕が鳴るのぅ」
「気合いれて行こか」
「索敵は任せて!」
「狙撃はお任せっす」
今日のメンバーはジゴロウ、源十郎、七甲、ルビー、そしてシオだった。他のメンバーは都合が付かなかったり、対戦會などでクエストをクリアしたりしているはずだ。
何にせよ、今日集めた報は皆と共有することになる。何か特徴や注意すべき點があるかどうか、厳しくチェックしておかねばなるまい。
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そんなこんなで私達は探索を開始する。吹き抜けを一階層ずつ降り、可能な限りその階層の塩獣(ソルティア)を討伐していく。塩獣(ソルティア)は別階層から味方を呼ぶことがあり、上の階層をある程度掃除しておかなければ挾撃されてしまうからだ。
吹き抜けを突っ切って下層まで行ければ時短になるが、ほぼ間違いなく帰れなくなる。これが『侵塩の結晶窟』の攻略に時間がかかる最大の原因であった。
「オラァ!次ィ!」
「今ので最後だよ」
「やれやれ。こう數が多いと老骨には堪えるわい」
採掘を一切行わず真っ直ぐに下を目指しているのに、かなり時間をかけて『4F』を攻略したところだ。準備した中和剤の量は十分に殘っているものの、想定以上に消耗しているのも事実であった。
侵塩は浴びるだけで影響を免れ得ない上に事前の予防が現狀では不可能なのが厄介過ぎる。何か対策しなければ、最下層にいるであろうボスの討伐どころか、そこまでたどり著くのも難しかろう。
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「ようやく次は『3F』だ。気を引き締めよう」
「ういっす」
小休憩と回復などを済ませた後、私達はついに『3F』に降りることになった。ここからが今日の探索における本番だ。つい先ほどまでの倦怠は鳴りを潛め、私を含めた全員がやる気に満ちていた。
『3F』は初めて足を踏みれる場所ではあるが、他の階層と変わっている部分は特にじられない。どこもかしこも侵塩の結晶だらけだ。強いて言うなら、採掘ポイントが若干多くなっていることだろうか。それも私の気の所為レベル、すなわち誤差でしかなかった。
「気を付けて。降りてくるのを察知してこっちに來るのがいるよ」
ルビーが警告するや否や、三の塩獣(ソルティア)がこちらに走ってくる姿が見えてくる。そのの二は上の階層でも現れた塩獣(ソルティア)の上位種であろう。姿からして、塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)だと思われた。
だが、その二を従えるように先陣を切っているのはしが異なる塩獣(ソルティア)だった。が一回り大きくなっているのも変化の一つだが、それ以上に持っている武が明らかに違う。の丈ほどもある大剣を擔いでいるのだ。
さらなる上位種が現れた可能が高い。私は早速、先頭を駆ける個を【鑑定】する。その容は以下の通りであった。
ーーーーーーーーーー
種族(レイス):塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン) Lv82
職業(ジョブ):侵蝕大剣士 Lv2
能力(スキル):【大剣】
【雙剣】
【格闘】
【盾】
【力超強化】
【筋力超強化】
【防力超強化】
【用超強化】
【半流】
【侵蝕】
【連係】
【限定武生:侵塩】
【限定武強化:侵塩】
【限定生:侵塩】
【限定強化:侵塩】
【理耐】
【魔耐】
【狀態異常耐】
ーーーーーーーーーー
名前は高位(ハイ)が付いただけ。しかし、実際にはやれることがいくつも増えているらしい。武系能力(スキル)はただの【剣】と【盾】だったのに、【剣】は【大剣】と【雙剣】の進化した能力(スキル)を二つも保有している上に【格闘】まで會得している。【盾】は據え置きな辺り、攻撃特化になったようだ。
さらに生可能なのは武だけでなく、も可能になっているらしい。恐らくは源十郎のように腕が四本以上に出來るのだろう。【雙剣】と組み合わせ、剣を振るいながら増やした腕で毆ってくるかもしれない。
加えてれたら厄介なことになる侵塩でこれをやって來るのだからたまったものではない。數は三とこちらよりもないが、決して侮って良い相手ではなかった。
「先頭にいるのはレベル82の塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)だそうだ。今は大剣しか持っていないが、雙剣も使えるらしい。ひょっとしたら大剣の二刀流も使ってくるぞ」
「パワフルなやっちゃなぁ」
「それとおそらくだが、の一部を作り出せる。腕や足が増えるかもしれんぞ」
「イザームさんみたいになるかもってことっすね?」
引き合いに出されて驚いたが、言われてみれば私も腕を増やしたり尾を増やしたりとやりたい放題している。否定することは出來ず、ただ首肯するのみにとどめた。
レベルは82だが、深淵の魔はプラス10レベルだと思うべきだと我々は知っている。つまり、塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)は我々と同格なのだ。
そして同格の敵を前にして、一対一で戦いたいと思うであろうジゴロウと源十郎の二人も同行している。どっちが戦うのかで一悶著あるかと思ったが、意外にもジゴロウはあっさりと譲った。
「出発前の取り決めだからなァ」
「うむ。儂が出る。急所への攻撃は任せるぞい」
既に協定を結んでいたらしい。しかも一対一にこだわるつもりはないようだ。そう言って源十郎は四本の腕で大太刀を正眼に構えると、踏み込みながら背中の翅を羽ばたかせて突撃する。一瞬でトップスピードになる姿は、何度見ても迫力があるなぁ。
一気に間合いを詰められた塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)は、反応が間に合わなかったのかその場で急停止して大剣を盾のように掲げる。そこへ撃ち込まれた源十郎の大太刀は、大剣を両斷するにとどまらずの侵塩の大部分を削り取った。
そこへ私は何時でも放てるように準備していた魔、風魔手裏剣によって追撃を加える。源十郎は一対一にこだわるかと思っていたが、この一戦で帰還するつもりはないのでわきまえているようだ。単純に昨日の対戦會で満足しているだけかもしれないが。
出鼻を挫かれた塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)は、傷口を庇いながら退避しようとする。それをカバーするように後続の塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)達が前に出ようとした。
「させっかよォ」
「ほいよっと」
しかし、カバーすることすら許さないのがジゴロウとシオであった。源十郎に匹敵する速度で踏み込んだジゴロウは拳にまとった炎と雷だけを用にぶつけることで、シオは著弾と同時に炸裂する矢によって押し返しつつ侵塩を吹き飛ばしていた。
そこに追撃を加えるのは七甲とルビーである。源十郎が抉った部分に七甲の召喚獣が突っ込んで自し、シオが矢によって出させた本をルビーが斬り裂く。即席ではあれど、高度な連攜であった。
「ほう。面白いのぅ」
塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)を四人が抑えている間に追撃していた源十郎だったが、彼の目の前で塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)に変化が起きる。源十郎に両斷された大剣を投擲すると、両手に一本ずつ長めの片手剣を作り出したのだ。
さらに両膝(・)から下の部分が二つに分かれ、太は二本なのに脛から下は四本あるという異形になっている。奇妙としか言いようがないが、あれに意味はあるのだろうか?その答えは源十郎がすぐに示してくれた。
「なるほどのう。足の數が倍になり、蹴りと共に放たれる侵塩が倍になる。厄介じゃな」
塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)は剣からだけでなく、格闘でも侵塩を撒き散らせる。この時、蹴りの武技を使えば足が二つあるので二倍の量の侵塩が放たれるのだ。源十郎の言う通り、厄介極まりなかった。
源十郎は完全に回避することは不可能と斷じ、雙剣と格闘の直撃だけを避けながらカウンターをれている。出した本に私が魔を叩き込んでいた。ジワジワと、しかし確実に塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)の力は減って行った。
「よォ、爺さん。代わってやろうかァ?」
「要らぬ世話よ。すぐに終わらせるのでな」
塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)を片付けたジゴロウが挑発するように代役を買って出るが、源十郎はピシャリと斷った。そして大太刀で袈裟斬りに塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)を斬り裂き、出した本に私が魔を當てる…前に大太刀を鋭く反転させた源十郎がこれを両斷する。
ダメージが蓄積していたこともあり、ついに塩獣(ソルティア)高位(ハイ)剣士(ソードマン)はかなくなった。戦闘終了のアナウンスも流れ、『3F』の初戦はさほど危険なく勝利するのだった。
次回は5月26日に投稿予定です。
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