《【コミカライズ配信中】アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~》第282話 原初の本能

☆★☆★ コミック第5巻 6月12日発売 ☆★☆★

おかげさまでシリーズ累計20萬部を突破いたしました!

お買い上げいただいた読者の皆様、ありがとうございます。

そして王國革命編が決著する第5巻が発売されます。

引き続きご顧いただければ幸いです。

2人がぶつかり合った瞬間、空間は曲がり、大地は嘶いた。

1人は長い銀髪と、金の瞳を鋭くらせた淑

もう1人――いや、もう1は黃金と、九つの尾を持つ九尾の狐である。

その景は英雄譚に出てくるような聖と魔獣の戦いに似ている。

は骸骨の柄がついた剣で大地を割れば、魔獣は炎を吐き出し、山をも溶かす。

気がつけば、一帯に合った村は消滅し、ただ焼け野原が広がっている。

殘っていた天上族の姿も消え、立っているのは2つの影だけだった。

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互いに化け……。

その力は同じ天上族からですら危険視した。

このストラバールに太古の時代に墮とされ、生きてきたもの同士の戦い。

思えば、カラミティにしても、ハッサル――神狐(しんこ)にしても同じ境遇の存在で合った。

違うのは、互いのスタンスだ。

カラミティは最初こそと暴力をんだが、孤獨とぶつかり、自分のと骨から生まれた我が子たちのために、強さと秩序を求めた。

未來をむことができるハッサルは、世界と他人に絶し、滅びと混んだ。

にも2人は今、掃き溜めとも言われたストラバールのために戦っている。

カラミティは自分がした子どもたちのため。

ハッサルは1からストラバールを作り直すため。

2人は長い時間を生きてきた。

長い時の末に、2人が導き出した答えは全く違う。

いずれも自分の考えを信じ、そして決して曲げようとはしない。

意地と意地のぶつかり合い。

お題目こそ世界のためで合っても、結局それは相容れないもの同士の喧嘩(ヽヽ)という側面を有していた。

、何百と互いの技を撃ち出しただろう。

何千という時間が経ったような気がするし、1分という短い時間しか経っていないようにも思う。

技の數も、時間も、何度立ち上がったかも覚えていない。

カラミティも、ハッサルもそれだけ集中していた。

戦いに勝利するというよりも、自分の“我(が)”を通すために……。

命よりも信念を貫くために、創世の生きたちは互いのに噛みつく。

「ぐっ!」

最初に地面に手をついたのは、カラミティだった。

それを見て、ハッサルはニヤリと笑う。

「はあ……。はあ……。あら? はあ……。はあ……。もう終わり……かしら……。はあ……。カラミティ……」

「黙れ、狐。お前こそ隨分と息が上がっているようだな。歳か?」

「はあ、はあ……。強がりは良しなさい。地面に手をついて、這いつくばってるくせに」

「獣に合わせてやっているだけだ」

「口が減らない

「お前だけには言われたくない!」

両者とも口はよく回るものの、1歩もけない。

カラミティは剣を刺したままかさず、ハッサルも尾を地面に下ろしたまま荒い息を吐き出す。

極限の疲労……。

互いに人間でいう心臓をかすことだけに必死になっている狀態だ。

だが、2人は笑っていた。

2人の考え方の違いは、太古から行き違っている。

2人とも自分の信念を曲げず、ここまでやってきた。

2人とも、お互いの顔すら見たくない。

2人の得をぶつけ合うことすら、唾棄するほどいがみ合っている。

しかし、互いの中は高揚としていた。

戦えば、戦うほど。全力を出せば、出すほど。

が高鳴る(ヽヽヽヽヽ)。

それはに似た熱とはほど遠い。

互いの本能を賛歌するような常識から外れた狂気。

つまり、闘爭と暴力……。

カラミティも、ハッサルも、神にも似た時間を過ごし、全知全能に近い力を手にれていた。

深い真理を探究し、お互いに世界の未來をより良く拓こうと、考えに考えぬいた結果が、2人が持つ信念だ。

けれど、ここに來て、もうどうでもいいように思えてきていた。

それは2人が立つ傷付いた大地の慘狀を見ても、明らかだろう。

忘れていた獣としての本能。

戦いによって呼び出されたそれは、薬を浴びたような強い充実をもたらしていた。

國の王として君臨し、生命の起源たる業を背負い戦うカラミティ。

膨大に広がる未來という海を眺め続けたハッサル。

2人のに往來したのは、シンプルにたった1つだけ。

目の前の相手よりも強くありたい。

新米冒険者でも持っている、ひどく人間じみた考え方だった。

長い、長い、沈黙……。

聞こえてきたのは、互いの息づかいだけ。

しかし、それも終わりを告げる。

舌の皮が剝けるのではないかと思う程、息を飲み込む。

唯一いていた心の臓の力も立ち上がる力に変え、両者は再び対峙した。

「決著を著けるぞ、ハッサル」

むところよ、カラミティ」

カラミティが立ち上がって剣を向ければ、ハッサルは傷付いた自慢の九尾を避雷針のように立てた。

両者は睨み合う。

地面を蹴り、剣を、牙と爪を、互いのに突き立てるべく接近していく。

星と星の衝突を想起させるような重厚な瞬間は終わる。

ついに決著した。

に染まった黃金に、深々と剣が突き刺さっていた。

今まさに銀髪の淑に向けられた牙は、頭蓋を噛み付く前に頭頂の上の部分で止まっている。

カラミティも、ハッサルも元は天上族である。

互いの種族としての弱點を知っている。

カラミティの剣はその弱點を、見事に貫いていた。

「な…………ぜ……?」

ハッサルは言葉を絞り出す。

「私は未來を見ていた。あなたに勝利する未來を……。何故?」

「未來を見えてなお、わからないなら、お前が見ていたのは未來ではない。お前の願だ」

「――――っ!!」

「お前と我は終ぞ心を等しくすることはなかった。……いや、お前自はそれを拒否した。もしかしたら、ガーファリアならばお前の唯一の理解者になったかもしれないがな」

「な、何故、そこでガーファリアが出てくるのよ?」

「お前が傅くことを初めて許した相手だ。……我は會ったことがないが、見事な益荒男(ますらお)であろう」

「…………」

「お前が本気でガーファリアとともに、この世界を破滅させるなら、ヴォルフも危なかったかも知れぬな。なあ、ハッサルよ」

ハッサルからの返答はない。

靜かに目を閉じ、尾を下ろし、神を模した像のように焼け野原の上に座っていた。

すでに、もう事切れていたのだ。

「創世よりの宿業……。果たさせてもらった。もう未來を見ることはなかろう。……1萬年分眠れ、我が知己よ」

カラミティは剣を抜く。

を払い、銀髪を翻して歩き出す。

北へ……。

ふらつく足を叱咤し、1歩でも、半歩でも認めた男が戦う戦場へと向かうのだった。

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