《【コミカライズ配信中】アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~》第282話 原初の本能
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そして王國革命編が決著する第5巻が発売されます。
引き続きご顧いただければ幸いです。
2人がぶつかり合った瞬間、空間は曲がり、大地は嘶いた。
1人は長い銀髪と、金の瞳を鋭くらせた淑。
もう1人――いや、もう1は黃金のと、九つの尾を持つ九尾の狐である。
その景は英雄譚に出てくるような聖と魔獣の戦いに似ている。
聖は骸骨の柄がついた剣で大地を割れば、魔獣は炎を吐き出し、山をも溶かす。
気がつけば、一帯に合った村は消滅し、ただ焼け野原が広がっている。
殘っていた天上族の姿も消え、立っているのは2つの影だけだった。
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互いに化け……。
その力は同じ天上族からですら危険視した。
このストラバールに太古の時代に墮とされ、生きてきたもの同士の戦い。
思えば、カラミティにしても、ハッサル――神狐(しんこ)にしても同じ境遇の存在で合った。
違うのは、互いのスタンスだ。
カラミティは最初こそと暴力をんだが、孤獨とぶつかり、自分のと骨から生まれた我が子たちのために、強さと秩序を求めた。
未來をむことができるハッサルは、世界と他人に絶し、滅びと混をんだ。
皮にも2人は今、掃き溜めとも言われたストラバールのために戦っている。
カラミティは自分がした子どもたちのため。
ハッサルは1からストラバールを作り直すため。
2人は長い時間を生きてきた。
長い時の末に、2人が導き出した答えは全く違う。
いずれも自分の考えを信じ、そして決して曲げようとはしない。
意地と意地のぶつかり合い。
お題目こそ世界のためで合っても、結局それは相容れないもの同士の喧嘩(ヽヽ)という側面を有していた。
一、何百と互いの技を撃ち出しただろう。
何千という時間が経ったような気がするし、1分という短い時間しか経っていないようにも思う。
技の數も、時間も、何度立ち上がったかも覚えていない。
カラミティも、ハッサルもそれだけ集中していた。
戦いに勝利するというよりも、自分の“我(が)”を通すために……。
命よりも信念を貫くために、創世の生きたちは互いのに噛みつく。
「ぐっ!」
最初に地面に手をついたのは、カラミティだった。
それを見て、ハッサルはニヤリと笑う。
「はあ……。はあ……。あら? はあ……。はあ……。もう終わり……かしら……。はあ……。カラミティ……」
「黙れ、狐。お前こそ隨分と息が上がっているようだな。歳か?」
「はあ、はあ……。強がりは良しなさい。地面に手をついて、這いつくばってるくせに」
「獣に合わせてやっているだけだ」
「口が減らない」
「お前だけには言われたくない!」
両者とも口はよく回るものの、1歩もけない。
カラミティは剣を刺したままかさず、ハッサルも尾を地面に下ろしたまま荒い息を吐き出す。
極限の疲労……。
互いに人間でいう心臓をかすことだけに必死になっている狀態だ。
だが、2人は笑っていた。
2人の考え方の違いは、太古から行き違っている。
2人とも自分の信念を曲げず、ここまでやってきた。
2人とも、お互いの顔すら見たくない。
2人の得をぶつけ合うことすら、唾棄するほどいがみ合っている。
しかし、互いの中は高揚としていた。
戦えば、戦うほど。全力を出せば、出すほど。
が高鳴る(ヽヽヽヽヽ)。
それはに似た熱とはほど遠い。
互いの本能を賛歌するような常識から外れた狂気。
つまり、闘爭と暴力……。
カラミティも、ハッサルも、神にも似た時間を過ごし、全知全能に近い力を手にれていた。
深い真理を探究し、お互いに世界の未來をより良く拓こうと、考えに考えぬいた結果が、2人が持つ信念だ。
けれど、ここに來て、もうどうでもいいように思えてきていた。
それは2人が立つ傷付いた大地の慘狀を見ても、明らかだろう。
忘れていた獣としての本能。
戦いによって呼び出されたそれは、薬を浴びたような強い充実をもたらしていた。
國の王として君臨し、生命の起源たる業を背負い戦うカラミティ。
膨大に広がる未來という海を眺め続けたハッサル。
2人のに往來したのは、シンプルにたった1つだけ。
目の前の相手よりも強くありたい。
新米冒険者でも持っている、ひどく人間じみた考え方だった。
長い、長い、沈黙……。
聞こえてきたのは、互いの息づかいだけ。
しかし、それも終わりを告げる。
舌の皮が剝けるのではないかと思う程、息を飲み込む。
唯一いていた心の臓の力も立ち上がる力に変え、両者は再び対峙した。
「決著を著けるぞ、ハッサル」
「むところよ、カラミティ」
カラミティが立ち上がって剣を向ければ、ハッサルは傷付いた自慢の九尾を避雷針のように立てた。
両者は睨み合う。
地面を蹴り、剣を、牙と爪を、互いのに突き立てるべく接近していく。
星と星の衝突を想起させるような重厚な瞬間は終わる。
ついに決著した。
に染まった黃金のに、深々と剣が突き刺さっていた。
今まさに銀髪の淑に向けられた牙は、頭蓋を噛み付く前に頭頂の上の部分で止まっている。
カラミティも、ハッサルも元は天上族である。
互いの種族としての弱點を知っている。
カラミティの剣はその弱點を、見事に貫いていた。
「な…………ぜ……?」
ハッサルは言葉を絞り出す。
「私は未來を見ていた。あなたに勝利する未來を……。何故?」
「未來を見えてなお、わからないなら、お前が見ていたのは未來ではない。お前の願だ」
「――――っ!!」
「お前と我は終ぞ心を等しくすることはなかった。……いや、お前自はそれを拒否した。もしかしたら、ガーファリアならばお前の唯一の理解者になったかもしれないがな」
「な、何故、そこでガーファリアが出てくるのよ?」
「お前が傅くことを初めて許した相手だ。……我は會ったことがないが、見事な益荒男(ますらお)であろう」
「…………」
「お前が本気でガーファリアとともに、この世界を破滅させるなら、ヴォルフも危なかったかも知れぬな。なあ、ハッサルよ」
ハッサルからの返答はない。
靜かに目を閉じ、尾を下ろし、神を模した像のように焼け野原の上に座っていた。
すでに、もう事切れていたのだ。
「創世よりの宿業……。果たさせてもらった。もう未來を見ることはなかろう。……1萬年分眠れ、我が知己よ」
カラミティは剣を抜く。
を払い、銀髪を翻して歩き出す。
北へ……。
ふらつく足を叱咤し、1歩でも、半歩でも認めた男が戦う戦場へと向かうのだった。
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