《ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~》第三百三十一話 そのさが大膽にして合理的
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第三百三十一話
ディナビア半島に殘る魔族の通行を許す代わりに、ローバーンに囚われている奴隷となっている人々を解放する。
私の提案に対し、魔王軍特務參謀のギャミは小さな目を細めて睨んだ。
天幕の中で互いの視線が火花を散らし工作する、一即発の事態に護衛のイザークとレイが互いに息を呑む。
だが睨みあう私とギャミは、同時に視線を緩め互いに笑った。
「分かった。ロメリア。その方の提案を呑もう」
「え? 呑むのですか?」
控えるイザークがつい口を出す。ギャミは仕方がない奴だと振り返りながらも笑った。
「同胞を助けることは利になる。何より、敵を抱えていては満足に戦えぬ」
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ギャミは手堅い考えを示した。
「まぁ、ディナビア半島に殘る魔族に焦土作戦を行わせ、連合軍がグラナの長城に迫った時には、武裝蜂起される前に奴隷を皆殺しにする。という手もあったのだが……」
ギャミは自らが考えていた策を明らかにする。その方法が一番私達に損害を與えることが出來るだろう。
「では、なぜそうされないのです?」
イザークは首を傾げて問う。なんとも素直な仕草で見ている方としては毒気を抜かれる。
「実行が難しいからだ。焦土作戦は確かに有効だが、ディナビア半島にいる魔族や兵士達には、死ねと言っているようなものだ。機の上で考えるように、綺麗に焼き盡くすことはできん。それに、奴隷を皆殺しにするのも難しい」
ギャミは指を一本立て、弟子に教えるように説いた。
「奴隷を皆殺しにすれば、これまで奴隷がしていた仕事を自分達でしなければいけなくなる。危険だから殺そうと言っても、反対する者は必ず出てくる。それに奴隷達も殺されるとなれば立ち上がる。下手をすればローバーンが落ちかねん」
ギャミは機上の考えが、必ずしもうまく行かないことをよく分かっていた。
私も苦い経験がある。どれほど効率的な策を考えても、敵だけでなく味方すら計算通りにいてくれない。一番効率のいい策よりも、二番目三番目の策の方が結果として上手くいくことも多々あるのだ。
「奴隷を抱える危険は常にあるが、簡単には手放せぬ。だが、同胞の命と引き換えとすれば、異を唱える者もおるまい」
ギャミの説明を聞き、イザークがなるほどと頷く。
「しかしそうなると、停戦の期間を延長する必要があるな」
ギャミが顎に手を當て、つぶやくように話す。私も顎を引く。
ディナビア半島にいる魔族の撤退に合わせて、奴隷となった人々を解放するとなると、何日もの時間がかかる。その間、停戦期間をばさなければならない。
「しかしそれほど長期間の停戦となると、裏切らぬ保証が必要になる」
「それは、人質……という事ですか?」
私の問いにギャミが頷く。
二日間の停戦であれば策を講じる隙がないし、こちらも油斷しなければいい。しかし長期間となると、どうしても隙が生まれてくる。互いに裏を掻こうとする勢力も出てくるだろう。
裏切りをさせないためにも、互いに人質を出し、裏切りを防止すべきだ。
「それなりの相手を出す必要があるな。誰か希はあるか?」
人質と言われ、私は脳裏で候補を考えた。
候補者の選定は重要だ。互いが裏切らない保証であるため、名のある人にしなければならない。
「そちらは、誰を出され得るつもりですか?」
私は控えめに尋ねた。人質換は均衡が大事だ。相手が差し出してくる人質と、同程度の人を選ばなければならない。とはいえ、魔族との人質換は初めてである。どうなるか予想もつかない。
「質として出すのは私だ」
「え?」
「だから私だ。私が行く」
驚き問い返す私に、ギャミが再度告げる。
「ちょ、ちょっと待ちください。ギャミ様。ギャミ様が行かれるのですか⁈ 危険です!」
背後に控えるイザークがぶ。私もこれには驚いたが、目の前にいるギャミは呆気に取られる私に対して、いやらしい笑みを向ける。
「質としてそちらに行くのだ。まさか、拒みはすまいよな?」
目を見開いて笑うギャミに対し、私は口をつぐんだ。
人質として名乗りを上げた、ギャミの目的は明らかだ。彼は人質として連合軍にやってきて、その陣営をに見て帰るつもりなのだ。
これは人質の名を借りた偵察であった。しかし拒否はできない。最初の渉で、相手が提示してきた條件だ。呑まなければ今後の渉に支障が出る。
「大膽……ですね。怖くはないのですか?」
「単ここに乗り込んできた、そなたに言われたくはない」
ギャミが私に言い返す。
「……分かりました。こちらから出す人質は、ここでは答えられませんので、一度持ち帰らせてください」
私はここでの回答を避けた。連合軍との話し合いもあるため、全てを私一人で決めることは出來ない。
「私の話は以上です。今日はお時間をとっていただき、ありがとうございました」
私は席を立ち、會釈する。
「うむ、こちらも有意義な時間だった」
ギャミも笑って頷く。
レイを伴い天幕を辭そうとする私を、ギャミが呼び止めた。
「ロメリアよ、また會う時を楽しみにしている」
「ええ、私もです」
ギャミに対し、私は頷き天幕を出た。
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