《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》96 フェリクス様の10年間 5

何度も何度も同じような言葉を言ってもらったからだろうか。

それとも、バドが言うようにたくさん食べて、多くの人と接したことで、が戻ってきたのだろうか。

その時初めて、私はフェリクス様が本気で私に頼んでいるように思われた。

本気で私にをしたがっているように。

けれど、そんなことがあるのだろうか?

私は彼の真意を確かめようと、正面から彼を見つめる。

すると、いつも通り端正な顔立ちが目にった。

結婚した當初から、フェリクス様は非常に整った顔立ちをしていたけれど、10年の年月を経たことで経験に基づく深みが加わり、より端正さが際立ってきたように思われる。

彼はその時々で、腰まである髪をくびったり、そのまま流していたりしているけれど、どの場合も艶っぽくて、彼の整った顔立ちをより引き立てていた。

そのため、廊下や庭園でとすれ違うたびに、彼たちが呆けたようにフェリクス様を見つめていることがよくあった。

けれど、たちが見とれていた原因の大部分は、フェリクス様の顔立ちだけではなく、10年の間に別人のように変わってしまった雰囲気によるものだろう。

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私の側にいる時はいつだって、ただただ優しくて心配の彼だけど、時折見かける一人の彼は、孤高で近寄りがたく、大國の王らしい覇気を備えていたのだから。

そう、彼は私と違って10年分の長を果たしていた。

私が何も変わらないまま眠り続けていた間に、彼は有益な10年を積み重ねていたのだ。

その結果、みずみずしい若木のようだったは、鍛錬されて完された騎士のとなった。

若さと甘みがあり、しだけ衝的で無鉄砲だった格は、思慮深く人の話を聞くことができる、忍耐力と深い思いやりをに付けた格に変わった。

10年前の彼は、時にその若さを侮られることがあったけれど、今や誰もが跪く大國の王だ。

完全に人々を掌握して従えており、そのことは騎士や文たちと接するフェリクス様を見ているだけで把握することができる。

なぜなら誰もがフェリクス様をこれ以上はないほど敬っている様子が、言の端々から見て取れたからだ。

そんな風に全てに優れているのであれば、多くのたちが憧れ、彼を求めてきても不思議はない。

そんな彼が、今さら10年前から何一つ長していない私を求めることなどあるのだろうか?

「フェリクス様はこれ以上ないほど魅力的だわ。大勢のたちがあなたの元に大挙しているのではないかしら」

大陸中を見渡しても、彼ほどに魅力的な男は片手の指の數ほどもいないだろうと考えての言葉だったけれど、フェリクス様は悲しそうに問いかけてきた。

「ひどく論理的な言葉だね。君の口調から判斷するに、その『大勢の』の中に君はっていないのだろう? それではゼロと同じだ」

フェリクス様は自問自答すると、寂し気に付け加えた。

「私が求めるのは君だけだ。だから、君以外は誰も必要ない」

私は本當に不思議に思って、彼に問いかける。

「フェリクス様はどうして私にこだわるの? 昨日も言ったけれど、あなたは虹髪のと結婚すべきだわ」

私はやっと魔心を捨て去ることができて、冷靜に事を判斷できるようになったのだ。

そうしたら、虹髪のとの婚姻が彼にとって最上の方法であることを、簡単に導き出せたのだから、私の提案が最善の道のはずなのに。

そう考える私に向かって、フェリクス様は辛抱強く説明を続けた。

「ルピア、私は既に結婚している。君を娶った時、生涯君と添い遂げると私は誓った。そして、君は非常に魅力的だから、私は君だけをんでいる。そんなことはあり得るはずもないが、……もしも今後、君以上に私に利するが現れたとしても、私は妃を挿げ替えようとは思わない。生涯側にいたいのは君だけだ」

「でも、あなたのためなのに」

もう1度言い返すと、フェリクス様は弱々しい笑みを浮かべて、私の手を両手で挾み込んできた。

「君の気持ちだけけ取っておくよ。だがね、真心から私のために助言してくれる君には言いにくいが、君の提案はこれっぽっちも私のためにはならない。何度だって繰り返すが、私は君しか必要ないのだ。それに、この10年もの間、君はずっと私の王妃で、その間もこの國は繁栄し続けてきた。眠り続けていても、君は我が國をかにしたのだよ」

「…………」

そうだとしたら、それはただ眠り続けていた私の力では一切ない。

フェリクス様が妃に頼ることなく、王として國を繁栄させることができることの顕れなのだ。

そう考えていると、フェリクス様は縋るように見つめてきた。

「今後、君が嫌がることは一切しない。だから、私の妃であり続けることを、もう1度考えてみてくれないか?」

「フェリクス様」

何と答えていいか分からずに名前を呼ぶと、彼は真剣な表で続けた。

「10年の間に変化したこの國のあり様を、じっくりと見て回ると君は言ったね。その間、できればこの國にずっと住み続けることを考えてほしい。……許されるのなら、私はずっと君と子どもとともにいたいのだ」

いよいよ來週の6/7(水)にノベル2巻が発売されます。

約半分を書き下ろしており、どの話も読んでもらいたい、とってもいい出來栄えになりました。

イラストもどれも素晴らしくて、「これが見たかった!!」を全部描いてもらうことができましたので、ぜひぜひよろしくおねがいします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

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