《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》919 隠し場所
理由は々あれどこうして王様を倒したことでほころびが出てしまったのだから、結果として彼のを式に組み込んだのは失敗だったということになるのだろう。
でも、その理由というが全て向きというか同じ『天空都市』陣営に向けられたものだったから、そもそも外部からの侵者によって王様が倒されてしまうなど想定もしていなかったのかもしれない。
『神々の塔』という本丸一歩手前にまで反勢力に攻め寄せられていてなお徹底抗戦する構えだったよみたいだものねえ……。まあ、それだけこの二か所を死守できていれば形勢逆転できると考えていたのだろう。
街の中に迷宮を擁するシャンディラが『三國戦爭』の折に『土卿王國ジオグランド』の軍勢に取り囲まれても落ちなかったように、探索して調達するという手間こそかかるけれど迷宮は様々な資の供給源として利用できる。
ましてや『神々の塔』は『大陸統一國家』ですらも及びもつかないほどの超技を誇っていた『古代魔法文明期』の人口迷宮だという。一攫千金どころか世界すら狙えてしまう超兵なども眠っているかもしれないのだ。
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そんなものが手元にあれば、強気にもなってしまうというものか。
ただ、ベリーハードモードどころかそれ以上の鬼や地獄といった極悪クラスの難易度設定になっているのだよね……。多分ゲーム的にはひたすら強い魔と戦うとか、何階層まで到達できるか挑戦するとか、レアアイテムを探してスニーキングミッションといったエンドコンテンツを提供する場として計畫しているのではないかしら。
そしてここからが重要で、スラットさんいわくあの時代ですら誰も帰ってきた人がいなかったらしいのだ。つまりは絵に描いた餅もしくは捕らぬ貍の皮算用狀態だった訳。
うん。やっぱり『天空都市』側の人たちは自信過剰な上に拠のない自信が掛けられたはた迷なほどの自信の塊だったのだと思うよ。
人間、謙虛さを忘れちゃいけないということですな。……何か違う?あれ?
さて、王様のという重要パーツを失ったことで見る見るうちに輝きを弱めていった魔法陣ですが……。
最後の悪あがきだったのか、それとも補助電源的なものが作していたのか、ギリギリで図形や文字っぽいものが見える程度の量を維持していた。が、いつまでもそれが続くはずもなく。ボクたちがあれやこれやとお話しをしている間に、いつの間にか完全に消えてしまっていたのだった。
「これで終わりましたの?」
「どうなんだろう?なくとも死霊化の式は解けたと思うんだけどさ」
「解けるとどうなるのでしょうか?」
「この世に縛り付けているから解放されたんだから、仏というか昇天するんじゃないか……。あ!?」
ふと頭をよぎった嫌な想像に、思わず聲がれてしまう。
「正直聞きたくない気持ちでいっぱいなのですが……。なにを思いついてしまったのですか?」
「その言い方は酷くないかな!?碌でもないことを想像したのは事実だけど!」
「そんなことより、早くその容を教えてくださいまし!」
そんなことって……。最近二人からの扱いが酷くないかな?泣いちゃうよ!?
まあ、今はそれどころじゃないから泣かないけど!
「同意の上ではあったみたいだけど、式で無理矢理にと神を分けられていたんだから、解放されたらまた一つに戻ろうとするんじゃないかと思ったの」
「『天空都市』の人々が復活するということですの!?」
「それだけならまだいいかな」
ミルファの反応に虛ろな目で返す。これはこれでそうなると大変ではあるのだが、グロかったりエグかったりはしないからね。殘念ながらボクが想像してしまったのはもっとえげつないやつです。
「死霊になった人たちってその時點で自我とかが希薄になっているでしょう。加えてその狀態で本當に長い年月を過ごしている。そうやって変質してしまった神というか魂を、の方はけ付けることができるのかな?」
呟いた直後は分からなかったようだが、すぐに言わんとしていることが理解できてしまったのかミルファもネイトも顔を青ざめさせていた。
詳しい描寫は省くけれど、が耐えきれなければ崩壊するだろうし、神が耐えきれずに発狂するか……。いずれにしても碌な結末は迎えられなさそう。
「悲慘ですわね……」
「まあ、ね……。でも仮にそうだとしても彼らにも責任のあることだから。同はしないよ」
ボクは聖人君子ではないし、死霊になった彼らを放置しておくこともできなかった。
「せめて余計な痛苦をけることがないように、祈るくらいはしておいてあげようか」
単なる自己満足と言われればそれまでだが、ゲームの世界だからプレイヤーであるボクの意向に沿った展開になってくれるかもしれない。まあ、そもそもグロエグ現象が起きると決まった訳でもないのだ。
「とにかくこれで死霊化は解除されてから魔力を取り出すこともできなくなったから、そのうち『天空都市』の維持ができなくなるはずだよ」
「その予兆が現れるのを見屆ければようやく安心できますね」
「うん。だけどその前に逃亡出用の転移魔法陣を見つけておかないと」
ここまできて『天空都市』の崩壊に巻き込まれるとか絶対にごめんだ。まずはこちらの安全の確保から始めよう。
「ですが王を逃がすためのの代ですわよね?そんなものが簡単に見つかるとは思えませんわ」
「そこはまあ、當てがあるから大丈夫」
不安がるミルファに言い置いて、その當て(・・)である玉座へと向かう。良かった。砂のように崩れた王様のはきれいさっぱり消えてしまっている。さすがにこんもりと殘っていたら引いてしまう。
あ、床に転がったままになっている王冠にはれませんよ。盜難防止や不正な利用をされないように、どんな呪いがかかっているか分かったものではないもの。
「ここは定番の玉座の後ろからかな」
しゃがみこんでじっくりと床を調べてみると……。あった、あった!ありました!
よく観察しないと気付くことができないくらいに細いものだけれど、確かに床を覆う材の継ぎ目とは異なる線が見えた。
なんだかんだで『OAW』の運営は基本に忠実というかベタなネタ好きなところがあるから、絶対に仕込んであると思ったのよ!
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