《反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】》【122話】無為に帰す戦略的撤退
真っ白い煙が周囲に充満した。
私が使った相手をかくするための魔だ。
私はすぐさま、前方で傭兵団の者たちを押さえているスティアーノの手を取った。
「今のうちに、逃げるわよ!」
「……え。お、おう!」
そのまま來た道を引き返す。
「逃げんのか?」
「逃げる!」
「へー、似合わねぇ……」
「知ってるわよ」
そんなのは自分がよく分かってる。
それでも、あそこであのローブのを相手し続けていたら、ジリ貧で負ける。
だからこれは、敗走なんかじゃない。
揺れる金髪を手で押さえながら、私は橫並びに走るスティアーノと視線をわした。
「スティアーノ、いい? これはただ逃げてるだけじゃないわ」
「ん……そうなのか?」
「そうよ。これは……戦略的撤退ってやつよ!」
──そう。最近學んだのだ!
『いい? 敵と正面からぶつかり合うだけが強さじゃないの。魔師は常に冷靜に……例えばそう、不利な土壌での戦いがあった場合は、有利な場所まで相手を引きつける。それで……潰すのよ』
元帝國軍魔導師団長。
そして、現特設新鋭軍魔導部門の代表。
エピカ=フォン=ダリウス……彼に教わった。
「地下水道は狹過ぎて、私の魔が存分に活かせないわ。だから……地上に出ることを優先する!」
「地下にいる俺らの仲間はどうするんだ?」
「あの魔師をどうにかしない限り、合流は無理よ」
「確かに……」
「だから先に、ヤツらを地上にき出す!」
これが私の導き出した最適解。
あの魔師を相手取るなら、広い空間に出た方が絶対にいい。
何故ならあののきが、狹所での戦いに慣れたものだったから。
「追手は?」
「大丈夫。私の魔ですぐにはけないはず。今のうちに遠くの方へ……!」
そう言いかけた途端、前面に異様な気配をじた。
「──っ!」
を焼き焦がすような威圧と共に、底の高いブーツの音が反響して耳にってくる。
「甘いわね──ペトラ」
前方から聞こえてくる足音は、どこまでの絶を與えてくるもの。
なんで……?
確実に撒いたはず。
後方から追ってくる気配もなかった。
それなのにどうして……。
どうしてローブのが目の前に?
他の傭兵団の連中はいない。
目の前に立つのはただ一人。
「……なんかアイツ。ヤバくね?」
「ええ。多分超ヤバイわ……多分四肢の一、二本は覚悟した方がいいくらいにね」
ローブのはどこまでも冷徹そうな瞳でこちらへ鋭い眼を向けてくる。
そして軽く手を前に出し、
「おにごっこは終わり。そろそろ眠ってちょうだいな」
先程よりのがよだつような雰囲気を漂わせ、暗い地下水道に眩い閃を生み出した。
おひさです
Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜
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