《骸骨魔師のプレイ日記》結晶窟の王 その一
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種族(レイス):王(クイーン)塩獣(ソルティア)Lv100
職業(ジョブ):寄生支配者 Lv10
能力(スキル):【知力超強化】
【寄生支配】
【思考共有】
【超速繁】
【配下超強化】
【強化指揮】
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王(クイーン)塩獣(ソルティア)。ガラスの切り株のようなモノの上に乗っていた敵の正だ。私を含めて【鑑定】した者達は驚いた。そのレベルと、それに見合わない能力(スキル)に。
レベル100と言えば長の限界點の一つである。この王(クイーン)塩獣(ソルティア)はレベル100、すなわちここにいる誰よりもレベルが高いのだ。
にもかかわらず、保有している能力(スキル)の數はたったの六つ。『ノックス』のかつての名、『霧泣姫の都』にいた二のボス。その片割れであったクロード・ジョルダンとは數が違いすぎる。あまりにもなすぎるのだ。
しかもステータス強化系の能力(スキル)は知力だけ、自分が戦闘するために使える能力(スキル)は一つもない。斷言しよう。レベル100の個では王(クイーン)塩獣(ソルティア)は最弱クラスの魔であると。
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「ヤバくねェかァ?」
「ああ、そうだな」
だが、私達は誰一人として王(クイーン)塩獣(ソルティア)を侮っていなかった。いや、それどころか絶絶命の危機にあるとすら思っている。その理由は王(クイーン)塩獣(ソルティア)本ではなく、その周囲にあった。
一つ目をギョロリとこちらに向けた直後、王(クイーン)塩獣(ソルティア)の周囲の海中から塩獣(ソルティア)、それも強化個ばかりが出現したからだ。その數は百はいるだろう。単純な數でこちらの倍であった。
最悪なのは『3F』で遭遇した塩獣(ソルティア)のさらなる上位種が多數混ざっていることだ。しかもその種類は一種類ではない。信じがたいことに四種類もいたのだ。
一種類目は王(クイーン)塩獣(ソルティア)を囲むのは大盾を持つ塩獣(ソルティア)である。奴らはエイジの持つモノに匹敵する分厚く、頑丈な大盾を両手でしっかりと持って腰を落としていた。防に特化しているのだろう。あれを正面突破することは不可能に近かった。
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二種類目は四本腕にそれぞれ別の武を持った塩獣(ソルティア)である。大盾とは真逆に攻撃に特化しているのだろう。四本の腕が持つ武はそれぞれ剣、槍、鎚、そして鞭である。四本腕の集団が微だにせず一列に並んでいる景は中々に威圧があった。
三種類目は獣型の塩獣(ソルティア)である。ただし、普通の獣とは一線を畫す容貌だ。獅子の頭に並ぶ山羊の頭、蝙蝠の翼に先端が蛇頭になっている尾…そう、一般的にイメージされる合獣(キメラ)だったのである。數は二とないが、戦闘力はかなり高そうだった。
最後の四種類目だが…実際は新種に數えて良いものかわからない。何故なら、その姿はわ(・)か(・)ら(・)な(・)い(・)からだ。
姿が見えないのに何故存在しているとわかるのか?それは魔力探知(マジックソナー)に反応があったからだ。その場所は海中。つまり、弾力の強い軽モドキの下であった。
他の塩獣(ソルティア)が海面に現れたのに、未だ海中に潛む理由。それが敵の控えであればそれで良い。だが、これが水中に適応した塩獣(ソルティア)だった場合が厄介であろう。何をしてくるのか予想がつかないからだ。
「イザーム、下のことには気付いてる?」
「ああ。なら、他のクランもわかっているはず。近くの結晶の上に移するぞ」
私の肩に飛び乗って來たルビーが端的に尋ねる。私が気付いていることに斥候職が気付かないはずがない。海中に潛む塩獣(ソルティア)のことは當たり前に知っているらしい。
そして私とルビーに出來ることが他のクランの斥候職が気付かないはずがない。私達と同じように、近くにある大型の侵塩の結晶の上へと避難していた。
「來るぞォ!」
「陸地に上がられたら困るということだ!急げ!」
小島のような結晶の上に陣取ろうとする私達だったが、それを阻むように王(クイーン)塩獣(ソルティア)は塩獣(ソルティア)達をこちらへ殺到させた。だが、それは小島の上に避難されることを嫌がったと考えられる。やはり海中に適応した個だと考えた方が良いだろう。
水中にいる敵の數は六。特別に多くはないが、決して無視できる數でもない。不用意に軽モドキの上に降りてしまうと下から襲われそうだ。
「分斷された挙げ句、限られた小島に押し込められた狀態で戦わなければならない。全く、不利な狀況だ」
「おいおい、諦めんのかァ?」
「いや、そんなつもりは一切ないぞ。飛べない者達を中心に防を固める。飛べる者達は集まって王(クイーン)塩獣(ソルティア)の首を狙う。この場は…兎路に任せる」
「はいはい」
集団の指揮を取ることが多い兎路に小島での防衛を任せ、私は飛行可能な者達で集まって王(クイーン)塩獣(ソルティア)を直接狙うという策を取ることにした。防を固めて反撃の好機を窺うのも考えたが、この狀況で後手に回ってから巻き返すのは無理だろう。強引にでも敵の指揮を潰す。それしか打開策はなかった。
私は各クランのリーダーに素早くメッセージを送ってから空中に飛翔した。我々のクランから飛翔したのは私と七甲、そしてルビーである。飛行可能な者には源十郎とモッさんもいるのだが、前者は飛行があまり得意ではないし後者に至ってはここにいない。まさかボス戦になると思っていなかったので、全員が揃っている訳ではないのだ。
空中に飛び上がった私達に合流したのは『不死野郎』のポップコーンとサーラだけであった。『溶巖遊泳部』はともかく、『八岐大蛇』の中には飛行可能なプレイヤーもいる。だが、モッさんと同じく今日は不參加だったのだ。
「この人數でボスを狙うって…」
「無謀だよねぇ」
「そんなことないっす!気合で何とかなるっすよ!」
「いやいや、気合だけでどうにかなるもんちゃうやろ。なぁ、ボス?」
ポップコーンとサーラは半ば諦めているが、シオは闘志を燃やしている。冷靜な七甲は意味深な視線を私に向ける。どうやら発破を掛けろと言いたいようだ。
いいだろう。気持ちで負けていたら勝てる勝負を落としてしまいかねない。ここは揺する味方をい立たせるためにも、私の王としての能力(スキル)を使うべきだろう。
「みんな、聞いてくれ!想定外の事態だが、あの王(クイーン)塩獣(ソルティア)を倒してしまえば『侵塩の結晶窟』は我々が攻略することになる!これまでの苦労が報われるぞ!そして、今日ここに來られなかった不運な者達に自慢してやれぇ!」
「「「うおおおおおっ!」」」
「良い返事だ!【不死災魔王の大號令】、発!い立て!叩き潰せ!」
私は聲を張り上げて鼓舞してから、満を持して【不死災魔王の大號令】を発する。その瞬間、『アルトスノム魔王國』に屬する仲間達全員のステータスが強化された。
全のステータスを向上させ、集団としての力を底上げする。自分の戦闘力もさることながら、味方を強化可能というのが『王』によって得られる能力(スキル)の真骨頂と言えよう。
大號令で強化されたステータスと鼓舞されて昂ぶった士気によって、仲間達はそれぞれのやり方で小島の上での防衛戦を繰り広げた。我らが『夜行衆(ナイトウォーカー)』はジゴロウと源十郎という二本柱が主軸となり、円陣を組んで迎撃している。あの二人がいるならばしばらくは安心だろう。
マック達『不死野郎』やウロコスキー達『八岐大蛇』同じように円陣を組んで防衛戦に臨んでいる。彼らも優れたプレイヤーなので、きっと持ちこたえてくれるだろう。
「はっはっは!防は我々の真骨頂だと教えてやるぞ!」
ただ、トロロン率いる『溶巖遊泳部』だけはが違っている。彼らはそれまで冷やして黒い鎧のようになっていたを赤熱させ、全から大量のマグマを生み出した。そのマグマは瞬く間に小島を覆い、冷えてい巖へと変化していく。たった數十秒でトロロン達が立て籠もった小島は、極小の火山島へと変貌したのである。
火山の火口からは火山弾が噴き上がり、それらは味方に襲い掛かろうとする塩獣(ソルティア)達に降り注ぐ。攻防一の陣地を築く手腕は他のクランの追隨を許さないようだ。
「皆が戦っている間に決めるしかない。シオ」
「はいっす」
返事するや否や、シオは予備作をほとんど見せずに矢を放つ。矢は王(クイーン)塩獣(ソルティア)へ向かって真っ直ぐに飛び…周囲を守る大盾兵によって防がれてしまった。
防がれることは予想である。やはり大盾兵を崩さない限りは王(クイーン)塩獣(ソルティア)へと攻撃を通すことは難しいようだ。
大盾兵による鉄壁の防を崩さなければ勝利は覚束ない。だが、敵は塩獣(ソルティア)であり、侵塩によって魔力を削ってくる相手だ。中和剤はまだ殘っているが、無限ではない。仲間達は近いに必ず息切れしてしまうだろう。
そのタイムリミットまでに私達が大將首を取ることが勝利條件と言える。絶的な狀況ではあるが、勝算はある。私達は急いで王(クイーン)塩獣(ソルティア)の頭上目掛けて飛翔するのだった。
次回は6月7日に投稿予定です。
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