《【書籍化】勇者パーティで荷持ちだった戦闘力ゼロの商人 = 俺。ついに追放されたので、地道に商人したいと思います。》49 拠點防衛戦⑤
「ほらほら、もう終わり? また剣の屆く範囲に來てあげたけど?」
「ふざけんなよっ!」
そう言って繰り出されたクラリスの剣は、再び宙を斬った。
『時空の魔石』
それは、とんでもなく厄介な代だった。
首領は絶妙なタイミングでその魔石のスキルを行使して、巧妙に距離を保つことでクラリスの攻撃をほぼ完封していた。
さらに首領は、ロロイの攻撃に対する対策も行っていた。
首領の首に提げられているのは『黎明聖のブローチ』だ。
付與されてるスキルは『魔龍の結界・腐毒魔龍ギルベニア』という、先日の戦闘で魔龍化しかけたロロイの攻撃さえも防ぎきった、非常に強固な結界スキルだった。
ロロイの遠隔打撃は、さっきから數発ほど首領にヒットしている。
だが、首領の纏う強固な結界スキルによりロロイの攻撃はほとんどダメージらしいダメージを與えられてはいなかった。
「むぅ……、やっぱりロロイの攻撃は當たっても全部はじかれてしまうのです」
「さっきアマランシアが言ってた『相』ってやつだな」
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「次は直接ぶん毆ってみるのです」
「その前に、私が斬る」
首領がクラリスからは距離を取りながらヒラヒラと逃げ回っていることから推察すると、クラリスの『闘気剣』ならば首領に致命傷を與えられる可能があるということだ。
相手も、それがわかっているからこそクラリスの方に神経を集中しているのだ。
「おりゃぁぁぁーーーー!」
「こんにゃろうっ!」
二人の攻撃が、再びスカる。
「クラリス! こいつ本當に強すぎて埒があかないのです!」
「くっそ! 先に人魚をやるか?」
「それについて、ちょっと耳を貸してしいのです!」
そう言ってロロイがクラリスを呼び寄せた。
「な、なんだ? 今か?」
「今なのです!」
し前から水の矢の攻撃が再開されている中。
ロロイ達はき回り逃げ回りながらも、建の影で合流した。
「今、ロロイの『倉庫』にアルバスから『首飾りを付けた人魚の人形』と『首飾りの壊れた人魚の人形』が順番に送られてきたのです」
「……なんだそりゃ。わけがわからないな」
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「アルバスとは、たまにこうやって謎々みたいにしてアイテムでお話しをするのです。夫婦の會話なのです」
「ふ、夫婦の會話!? ……で、その意味は?」
「たぶん『人魚の首飾りを壊せ』って意味なのです!」
「……て、天才かよっ」
「ふふん」
「……了解した」
ロロイとクラリスが頷きあい、瞬時にそのための行を開始した。
から飛び出してたクラリスが、一目散に人魚の方へと向かっていく。
先程までとは明らかに違うき方始めた二人を見て、首領がし首を傾げた。
「ん? さっきまでは明らかに人魚への攻撃を避けてたのに……。もしかして『何か』に気づいちゃった? それとも偶然? 弱そうな方から狙うとか、そういうの?」
軽口を叩く首領のきをロロイが遠隔打撃で牽制し、その隙にクラリスが人魚のいる水球に向かって一気に空中を駆け上がっていった。
人魚を包み込んでいる水球は、首領の結界に似たなんらかの強力な魔で形されている。
先程までに何度か放たれたロロイの遠隔打撃は、全て水球の外壁に弾かれてしまっていた。
故にこちらも、順當に考えれば攻略の鍵となるのはクラリスの『闘気剣』だ。
クラリスは、魔障壁(プロテクション)で作った足場で空中を走り回り、水の矢の攻撃範囲からうまく逃れながらどんどんと高い場所まで駆け上がっていく。
「魔障壁(プロテクション)って、そんな使い方もできるんだな」
人魚のいる水球とクラリスのとの間に、いつの間にか首領の姿が現れていた。
首領は足元に風を生み出す不思議な靴を履き、るようにして宙に浮いている。
その顔面付近に、ロロイの遠隔打撃の衝撃波が生じた。
「ん? ふふっ、今またなにかした?」
ロロイの攻撃をけた首領は、なぜかおかしそうに笑っていた。
「あいつの鉄壁。めちゃくちゃいのですよっ!」
「そういう相手は私の専門っ!」
そう言いながら、クラリスは首領へと斬りかかった。
「ああ、キマイラ喰い。ごきげんよう。ちなみにこれは『鉄壁スキル』じゃなくて『結界魔』……」
「うる、せぇっ!」
クラリスの斬撃が、再び宙を切る。
首領は再度『時空の魔石』を用いて更なる上空へと逃れていた。
「ふざけんなっ! ひらひらひらひら逃げんなよっ!」
「逃げるさ。だってその技は『結界侵食』だろ? 結界が破られるとわかってて、わざわざまともにけにいく馬鹿はいないよ」
「くっそ!」
そう言って投げ飛ばされたクラリスの短剣もまた、首領には當たらずに宙を切った。
「だぁぁっ! もう!」
「きぃ、ああっ! うぁぁぁあ……」
激昂するクラリスの頭上で、人魚が苦しそうにもがきながら頭を抱え始めた。
戦い始めた當初から二人が思っていたことだが……
その人魚は、様子がかなりおかしい。
真っ先に、保護している魚人の子供たちの母親である可能が思い浮かんだため、そう言って聲をかけてみたが……
その人魚は奇聲を発するばかりで、『殺してやる』以外の意味のある言葉を発さなかったのだ。
どうにも対応に困っていたら……
アルバスから『人魚の首飾りを壊せ』という指示が飛んできた。
直的に、それは人魚のこのおかしな様子と関連しているようにじた。
戦闘時におけるアルバスの狀況分析能力はずば抜けている。
仲間達の防の側で守られながら、彼がそこでただ守られているだけではないことはずっと前から知っていた。
だからきっと、その指示はこの狀況を打破する一手となる。
二人は、そう信じて疑わなかった。
「クラリス! 先に人魚さんを!」
「わかってる!」
そう言って、クラリスは人魚に向かっていった。
→→→→→
「シャリアート! このままじゃやられちゃうよ? 本當にいいの?」
「あああいぁぁあやぁぁぁぁーーーっ!!」
首領に聲をかけられた人魚が水球から顔を出し、訳のわからない奇聲を発しはじめた。
「お、お前……、マジで大丈夫か?」
「ああぁぁいああーーっ! 殺す! 殺す! 人間を……殺すっ!」
思わず足が止まりかけたクラリスの目の前で、人魚がそうびながらいきなり多數の水の矢を放つ。
「うわっ! くっ、そっ!」
それを魔障壁(プロテクション)でけて回避行を取りながら、クラリスは再び人魚のいる水球との距離を詰めていった。
「あーあ、さすがにもうだめかな」
そう言って、首領が何かをしようとして手をあげる。
「させないのですっ!」
だが、その手はロロイの遠隔打撃によって大きく上に弾かれていた。
「痛っ! くはないけど……、あれ? さっきまでとは威力が段違……」
「うっ、りゃぁぁぁぁーーっっ!!!」
「っ!!」
首領は、そのままロロイの連撃をけて大きく弾き飛ばされた。
「ちっ! ……っ!」
『時空の魔石』を使って瞬時に移するが、その移先でも再び被弾し、再び大きく弾き飛ばされた。
次々と移転を繰り返すも、その先々で次々にロロイのた打撃をけて大きく弾き飛ばされる。
「ああ……、つまりさっきまではわざと手加減してて、ここ一番で本気で毆りに來たってこと? しかも『空間転移』で移転した先の正確な追尾とか……、普通にイカレた超覚じゃん」
「うりゃあああぁああああぁぁあああーーーっ!!」
「アルミラを追い詰めたのは、なにも『無盡(オメガ・ゼロ)』の力だけじゃなかったってことね……」
再びロロイの遠隔打撃を被弾した首領が、ミストリア劇場の壁に激突した。
「ああ、こうなってらもう。そろそろ仕方がないかな」
そう言って結界を張り直した首領に、ロロイが毆りかかる。
だがその打撃は、首領の結界に阻まれてしまった。
「さっきまでの五倍の魔法力を込めた。もう何をしても無駄……」
「じゃ、ないのですよっ! 倉庫取出(デロス)!」
その瞬間、ロロイの手の中には一本の短剣が出現していた。
そのまま橫薙ぎに薙ぎ払われたロロイの短剣の一撃は、首領の結界を易々と引き裂いたのだった。
→→→→→
「人形を、作ってほしい」
「それとアマランシア。……あの短剣を貸してくれないか?」
降り注ぐ水の矢の中で、俺はアマランシアにそう尋ねた。
「……『結界侵食』スキル付きの短剣ですね」
「ああ」
俺の意図は、アマランシアには一瞬で伝わったようだ。
「どう使うのかは……、聞くまでもありませんね。私がそれを持っていることはあの相手にも伝わっているらしく、やはり不用意に近づいてくることはありませんでした」
「だろうな」
「ええ、警戒のされ合で言えば、たぶんクラリスさん以上でしたね」
「ああ、だからそれをロロイに送る。これで、相手の裏をかいてやる」
「わかりました。どうぞ、使ってください」
→→→→→
「おりゃぁぁあーーっ!」
ロロイの繰り出した『結界侵食』スキル付きの短剣によって、首領の周囲に張り巡らされていた魔龍の結界が易々と引き裂かれていく。
「ちっ!」
何が起きたのかを瞬時に理解した首領が、新たなる結界を張り直すより早く……
「とぉぉりゃぁぁぁーーーっ!」
ロロイの全力の拳が、首領の顔面を捉えたのだった。
首領は激しく回転し、ミストリア劇場の観客席を突き破りながら吹っ飛んでいった。
「あ……、劇場ぶっ壊してしまったのです! アルバスとミトラに怒られるのです! ロロイの商店(お店)も、今ので吹っ飛んでしまったのですぅぅ! ど、どーしよーっ!」
ロロイは、頭をかかえながらそんなことをんでいた。
→→→→→
「ロロイはやっぱすげぇな!」
そうこうしているうちに、クラリスは人魚の水球までたどり著いていた。
「に、人間! アルバスの護衛‼︎ 殺してやる!」
水球の中の人魚は、牙を剝き出し、走った目でクラリスを睨みつけた。
そして、敵意をむき出しにしながらも次々と至近距離で水の矢を放ってきた。
「遅ぇよっ!」
至近距離から放たれた水の矢は、クラリスの殘像を貫いただけだった。
その矢が到達するよりも早く、クラリスはさらなる上空へと逃れていた。
そして、を回転させながら人魚のいる水球へと斬りかかる。
「お……らぁっ!」
クラリスの剣が、水球を真っ二つに両斷した。
それと同時に、クラリスは返す刃で人魚の首にある白い首飾りを叩き斬ったのだっあ。
首飾りは弾け飛び、水球からは大量の水が吹き出していく。
「ぎぃぃぃぃーーーーっ!」
人魚は奇聲を発しながら、そのまま大量の水と共に落下していった。
「あっ……、落ちたらまずいか?」
そして人魚は……
落下中の空中で、クラリスが立方の形で展開した魔障壁(プロテクション)の中に閉じ込められた。
「とりあえず、人魚の首飾りはぶっ壊したぞ! これでいいのかアルバス!?」
「こっちもぶっ飛ばしてやったのです!」
クラリスとロロイ。
二人の勝鬨が、同時に上がった。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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