《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》922 別れ
謁見の間へと戻るのはボク一人だけ。そう決めた。
「なっ!?どうしてですの!わたくしたちも參りますわ!」
「そうです!リュカリュカ一人になんて任せていられませんよ!」
相談もなしにいきなり決めたことだから、二人からはそういった非難の聲が上がるだろうことは想定済みだ。でも、ネイトさんや。その言い方はどうかと思うのよ。それだと毎度のようにボクが何かしらやらかしているみたいではないですか!?
まあ、プレイヤーな上にVRゲーム初心者だったから、『OAW』の世界観や常識に疎いところはあったと思うけれどさ……。
おっと、いけない。想定外の口撃をけたことで本題から意識がそれてしまった。
「何を言っているのよ。二人とも悪霊との戦いでMPが枯渇寸前になっているでしょうが。いざという時に自分のも守れないなんて足手まといにしかならないから」
あれから時間経過による自然回復で多はマシになっているかもしれないけれど、それでもまだまだ本調子には遠く及ばないギリギリな狀態のはずだ。そんな彼たちをこれ以上危険にさらしたくはないし、言い方は悪いが最悪邪魔になってしまうかもしれない。
Advertisement
ボクがもっと々と周囲に気を配れれば何とかできたかもしれないが、今のところそんな便利な技能が生えてくる様子もなければ、プレイヤースキルに目覚める気配もない。
まあ、自分が天才じゃないのは塔も昔に分かっていたことだ。さらにまことしやかに存在が噂されている円なイベント進行のためのプレイヤーへの優遇措置、俗にいう主人公特権が発する兆(きざ)しも見られない。二人を連れて行ったところでバッドエンドへの選択肢が増加するばかりだろう。
「確かに萬全とは言い難いですが……」
彼たちも自分の狀態は把握しているため戦力になり得ないと理解できてしまうのか、悔しそうに苦しそうに俯いていた。
うっ……。罪悪がひしひしと……。いやいや、ここで流されて危険な目に合わせてはそれこそ後悔することになる。ここは毅然とした態度で拒否しないと!ボクはノーと言えるニポン人なので!
「で、ですが、謁見の間について行くことはできなくても、ここでリュカリュカの帰りを待つくらいはさせてしいですわ!」
「そうです!あなた一人を犠牲にして出するなんてできません!」
うん?何か決定的なすれ違いが生じているような……?
「確かにミルファとネイトには先に出してもらうつもりだけど、ボクは別に死ぬつもりはないよ。というか出するための別の當てもあるし」
「え?」
「は?」
ボクの答えに目を丸くする二人。……なるほど。命を懸けるつもりで、ではなく命を捨てるつもりで謁見の間に向かうと思っていたのか。この二つは似ているようでいて、主に生き殘るという気概が全く違うからねえ。
それは止めようとするし同行しようとするはずだわ。逆の立場なら間違いなく同じことを言ったと斷言できるもの。
「という訳だから安心して出しておいてね。あ、変に勘ぐってもいけないから言っておくけど、出するための當てがあるのは本當だから。自己犠牲のために適當なことを言っている訳じゃないから」
ただ、それを悠長に説明している暇はない。既にカウントダウンは始まっているのだ。ファジーだけど。
「し、しかし……」
「だけれど……」
「うがー!もう!それじゃあこれを預かっておいて!」
歯切れの悪い態度に業を煮やしたボクが取り出したのは、うちの子たちのお家こと『ファーム』だった。
「二人には大事なうちの子たちを預けます。言っておくけどあくまで一時的に預けるだけだからね。後で絶対に返してもらうから!」
例えパーティーメンバーの二人であっても、うちの子たちはあげません!
「どう?これなら信用できるでしょ?」
「……正直なところまだ不安な部分は殘っておりますけれど、そこまでされたからには信用するほかありませんわ」
「同じくです。リュカリュカがこの子たちのことをどんなに大切にしているのかは、わたしたちが一番そばで見てきましたから。この子たちを不幸にするような真似はしないでしょう」
これで二人の方の説得は完了だね。殘るはうちの子たちだけれど、
「みんな、ミルファとネイトのことを守ってあげてね。それでちょっとの間だけお留守番をお願いするうわっとお!?」
しかし、その臺詞を言い切ることはできなかった。なんとエッ君が突撃するかのような勢いでボクのに飛び込んできたのだ。
「ちょっ!?エッ君!?いい子だから聞き分けて?」
言い聞かせようとしてもひたすら「イヤイヤ!」とを揺するばかり。時折わがままを言ったりこらえがなかったりすることはあったけれど、ここまで拒否反応を示してムズがるのは珍しい。
「困ったね……」
「連れて行ってあげればいいじゃないですか。そうなってしまえばもう、梃子でも離れませんよ」
「ええ。それにエッ君が付いていてくれるのであれば、わたくしたちもしは安心できるというものですわ」
むう……。先に無理を通したこともあって斷り辛い。それに困りつつも嬉しくじていたことも事実だった。なんだかんだとエッ君とはゲーム初日からの付き合いだからね。ある意味相棒とすら言える子なのだ。
「……ふう。仕方ないか。リーヴとトレアは悪いけど二人を守ってあげてね」
任せておけとグッと拳を握る二人。頼りにしていることに噓はないが、いかんせんリーヴはピグミーサイズだしトレアも人化しているので姿だということもあって、どうにもほんわかと和(なご)んでしまいそうになる。
いやはや、締まらないなあ。まあ、下手に悲壯あふれるよりはボクたちらしいのかもしれない。
「先にクンビーラに戻って待っていて」
「分かりましたわ。……必ず、無事に帰ってきてくださいまし」
「もちろん」
ミルファが付きだした拳にこつんと合わせる。公主家のお嬢様なのだけれどねえ。なんとも勇ましいことで。
「ついでに、『天空都市』もしっかりと片付けてきてくださいね」
「ついででやるには大仕事だなあ」
苦笑いを浮かべながらネイトともこつん。
壁の『はっしゃボタン』をポチっとすれば、さっそく出までのカウントダウンが始まった。ネイトに渡した『ファーム』へとリーヴとトレアがったことを確認すると、エッ君とポッドの外へ。どうせすぐに再會するのだ。仰々しい別れの挨拶はいらない。
そして、出ポッドが出されていくを見送った。
無職転生 - 蛇足編 -
『無職転生-異世界行ったら本気出す-』の番外編。 ビヘイリル王國での戦いに勝利したルーデウス・グレイラット。 彼はこの先なにを思い、なにを為すのか……。 ※本編を読んでいない方への配慮を考えて書いてはおりません。興味あるけど本編を読んでいない、という方は、本編を先に読むことを強くおすすめします。 本編はこちら:http://ncode.syosetu.com/n9669bk/
8 72No title
「人は皆’’才能’’という特別な力を持っている」 森で暮らす青年レイスは、ある日突然「なんでもひとつだけ願いを葉えるから」と訳も分からず國王に魔王討伐の依頼をされる。 幼馴染のカイと共に、お金も物資も情報もないまま問答無用で始まってしまった魔王討伐の旅。 しかし旅をしていく內に浮かび上がってきた人物は、2人の脳裏に在りし日の痛烈な過去を思い出させる。 才能に苛まれ、才能に助けられ、幸福と絶望を繰り返しながらそれでも生きる彼らは、どんなハッピーエンドを迎えるのか。 初めてなので間違えてるとこは教えて頂けると大変幸せます。 駄作ですが暖かい目で読んでやってください( _ _)
8 103七つの大罪全て犯した俺は異世界で無雙する
俺はニートだ自墮落な生活を送っていた。 そんな俺はある日コンビニに出かけていると、奇妙な貓に會い時空の狹間に飲み込まれてしまう。
8 71異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?
「全ての條件は揃いました」 平凡な高校生活を送っていた佐野 祐。 だが神の都合で、異世界に強制転移させられてしまう。 そして、祐が神からもらった力、それはもしかしたら神にも匹敵する力だった。 ※投稿頻度は不定期ですが約1週間周期を目標にしてます。
8 135光輝の一等星
100年前の核戦爭により、人類が地下で暮らさなければならなくなった世界。幼くして親をなくした少女、飛鷲涼は七夕の日、琴織聖と名乗る少女と出合い、地下世界の、そして、涼自身の隠された血統の秘密に向き合っていく。涼を結びつける宿命の糸は一體どこに繋がっているのか……? 失うものが多すぎる世界の中で、傷つきながらも明日に向かって輝き続ける少年少女たちの物語。 (注意點)①最新話以外は管理を簡単にするため、まとめているので、1話がかなり長くなっている作品です。長すぎ嫌という人は最新の幕から読んでいただければ良いかと(一応、気を付けて書いていますが、話のなかの用語や狀況が多少わかりにくいかもしれません)。 ②視點の変更が幕によって変わります。 ③幕によりますが、男性視點が出てきます。
8 177人違いで異世界に召喚されたが、その後美少女ハーレム狀態になった件
人違いでこの世を去った高校2年生の寺尾翔太。翔太を殺した神に懇願され、最強の能力をもらう代わりに異世界へ行ってくれと頼まれた。その先で翔太を待ち受けていたものとは……? ※畫像のキャラは、本作品登場キャラクター、『アリサ』のイメージです。
8 66