《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》第148話『請問』

時と場所を戻し、聖アニュッシュ學園。

萩澤キョウカは一人、自室で自分の手元を眺めていた。

だが、そこに明確な何かが握られているわけではなく、ただ行く當てを失った視線がそこへと向かっていただけだった。

その穏靜な様子とは裏腹に、キョウカの脳で、思考は激烈な速度で回転し続けていた。

というのも、先の出撃から引き揚げる直前に見た、テルヒコのヌンチャクから滴った不自然なのこと。

過去に彼がどのような行いをしてきたのか、キョウカはソウタから話を聞いている。

それを踏まえた上で、あの誰もいない民家に、強力な才華を持つ男が、何の創傷もなく、たった1人でそこにいる理由があるだろうか。

もちろん、彼の怠惰な格故に、あの場所で【排斥対象】の撃破をサボタージュしていた可能は否定できない。

だが、キョウカの頭の中で確かに存在する彼への殘酷で忍暴な鬼気は、その可能の考慮を阻んでいた。

結局のところ、人が人を疑う理由というものはその程度である。

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『彼ならやりかねない』とか、『彼ならしていそうだ』とか、全く拠など存在しない先観だけで、人は人へ容易く疑いをかける。

そんな妄想を広げていると。

「どうした。キョウカ。」

ふと後ろから、靜かな聲が聞こえた。

振り返ると、シャワーを浴び終え、寢間著に著替えたソウタの姿があった。

「ううん。なんでもないよ、ソウくん。」

未だ脳で殘響する最悪な推測を全く以ってじさせない、朗らかで優しげな笑顔でキョウカは応えた。

「………そうか。」

そんな意図を知ってか知らずか、ソウタはまたも靜かにそう応えた。

「風呂、空いたから。」

「うん。分かった。」

キョウカはそのまますっと立ち上がり、風呂場へと足を運んでいった。

その後、シャワーを浴び、汗と汚れを洗い流したキョウカは、テルヒコにメッセージを送った。

『明日、第二公園で會えませんか?』

その意図は明確、何故あの民家に1人でいたのか、その真実を確かめるためだ。

その真実が明らかになったとて、キョウカにメリットがあるわけではない。

だが、もし萬が一、彼が卑劣で殘忍な罪を未だに重ねているのだとしたら、それを止めない理由はない。

キョウカの中には、猜疑心と共に、確かな責任があった。

20分後、通知音が鳴った。

『いいよ。』

それをロック畫面で確認し、キョウカは寢室へと向かい、眠りについた。

翌日、12:07分。

教室で、コウジ、ヒカリ、レンタ、サナエ、ハレは、それぞれ機を寄せ合い晝食を囲んでいた。

「ヒカリ先輩のお弁當って、いつも味しそうですよね〜」

ハレがヒカリの弁當を見てつぶやく。

ヒカリの手にある弁當には、青椒、プチトマト、ほうれん草の胡麻和え、だし巻き玉子、ウィンナー、そして白米が鎮座している。

ウィンナーは可らしくタコの造形を模している。

「簡単なものと、前の日の夕飯の殘りしか使ってないわよ?」

「いや〜、それでも尊敬しちゃいますね!凄いですよね!」

「そんなことないわよ。ハレのだって、とっても味しそうじゃない。上手よ。」

し照れくさそうに微笑みながら、ヒカリはハレの弁當を見返した。

そこには、カレーライスと、冷凍と思しきカニクリームコロッケがあった。

シンプルではあるが、食をそそるものである。

しかし。

「コレはいやぁ〜…その……」

なんだか歯切れが悪そうに、ハレが言葉に詰まった。

「すみません、それ作ってるの俺です。」

そう割ってったのは、マサタだった。

「えっ」

それまで黙々と食べていたコウジが、思わず聲をらした。

「いや、俺も盡つくしも朝練があるんで、早めに起きて俺が作ってるんですよ。」

「いやいや、ちょっと待てよ。マサタと盡って、同じ部屋だったのか…?」

「え、そうですけど?言ってませんでしたっけ?」

『はっ!?』

「えっ?」

コウジ、ヒカリ、レンタ、サナエの聲が重なった。

「アンタなんでそういう事をちゃんと伝えないのよ!嫌なら斷っても良いのよ!?」

ヒカリが悲鳴のような聲でびながら、ハレの両肩をがっしりと摑む。

「なんで?」

「盡……先以まずもって、誠に申し訳無い………。」

サナエは心苦しそうに、ハレに頭を下げる。

「酷くね?」

「盡さん…可哀想に……」

レンタは同するような目でハレを見た。

「泣いてもいい?」

なぜか自分が完全に悪者扱いされている現狀で、救いを求めてコウジを見やる。

目が合う。すると。

「…………………………変なことすんなよ?」

「コウジ先輩もッスか!?」

どうやらこの場にマサタの味方はいなかったようだ。

「……にしても、あの2人、ずっと一緒だよな」

目線を逸らしたコウジがそう呟いた。

視線の先では、萩澤キョウカと桐咲ソウタが向かい合って弁當を食べている。

弁當のは同じ。おそらくキョウカが作っているのだろう。

「ええ、アタシがった時からずっとあんなじなのよ。」

ヒカリが続けた。

2人の食事風景こそ仲睦まじく見えるものの、二人の間に會話は一切なく、黙々と箸を進めている。

というのも、ソウタは左手に參考書を持ちながらひたすら弁當箱のを口へと運ぶばかりで、とても會話を弾ませるような空気ではなかった。

「仲が良いのか悪いのかわからないね…」

小さな聲でレンタが呟く。

その2人の様子を、サナエは靜かに見つめていた。

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