新たな塩獣(ソルティア)が誕生してしまえば、全てが振り出しに戻ってしまう。殘されるのは塩獣(ソルティア)の軍勢と人數が減った上に消耗してしまった私達だ。そうなれば勝利など絶対に不可能だろう。

「ここが勝負所と見た!やろうか、皆!」

「「「おう!!!」」」

その時、トロロンの掛け聲と『溶巖遊泳部』のメンバーの勇ましい咆哮が上がる。直後、戦場全にポップコーンの絶を掻き消さんばかりの音が響き渡った。

音の正はトロロン達が作り出した即席の火山の噴火である。彼らは連続して噴火させ、溶巖弾によって広範囲に攻撃していた。だが、今回の噴火の勢いは次元が違う。何と彼らが作っていた即席の火山が側から砕されるほどの威力だったのである。

即席とは言え、ここまで塩獣(ソルティア)、それも上位種の集団を寄せ付けなかった火山が吹き飛んだのだ。その威力は凄まじく、火山に取り付いてた塩獣(ソルティア)は一斉に弾け飛んでいた。

ただ、それは副次的な効果に過ぎない。トロロンの狙いはそちらにはなかった。彼がやろうとしたこと。それはあの火山から放てる最大火力の溶巖弾を発することだった。

降り注ぐ溶巖弾は戦場全に拡散しているが、その大半は明らかに王(クイーン)塩獣(ソルティア)の上に集中している。幾つもの溶巖弾が大盾兵型塩獣(ソルティア)の融合へと突き刺さり、そのを散させていった。

溶巖弾は一つ一つが倍以上に大きく、それでいてこれまで籠められている熱量が桁違いだったらしい。下げられた防力とシオ達によって大きく削られた力では耐えられず、恐ろしいほどの防力で守りを固めていた大盾兵型塩獣(ソルティア)は跡形もなく消え去った。

ステータスを平均化させるというのはステータスの低かった部分が上昇することになる。目の前の融合塩獣(ソルティア)ならば、恐らくは敏捷が発的に上昇しているのだろう。

だが、せっかく上昇したステータスを活かして回避するわけにもいかない。何故なら、奴らの存在意義は足を止めて王(クイーン)塩獣(ソルティア)を守ることだからだ。回避可能だったかもしれないのに、それをしてはならないのならば単純な弱化である。これが大盾兵型塩獣(ソルティア)と相が良いと判斷した理由であった。

「見えたっ!これなら…やっていい!?」

「七甲共々、やってやれ!」

「やったるで!」

新たな塩獣(ソルティア)を作中だった王(クイーン)塩獣(ソルティア)だったが、守る壁が消えているので完全に無防備な狀態だ。弾薬や魔力などのリソースが続く限り攻撃を続けているシオとポップコーンに加え、私の護衛としてついてくれていたサーラと七甲にも獨自の判斷で攻勢に加わってもらう。今の狀況であれば、私が討ち取られる心配よりも王(クイーン)塩獣(ソルティア)討伐を優先するべきだからだ。

サーラが持っていた大鎌を振り上げると、刃が炎のように揺らめき始める。その狀態の大鎌を振り下ろすと、離れた場所にいる王(クイーン)塩獣(ソルティア)にいきなり大きな裂傷を負った。どうやら離れた位置を斬り裂く武技か『奧義』であるようだ。

七甲は仕込み刀を抜いていた錫杖を元に戻し、に咥えながら両手で印を結ぶ。すると彼の目の前の空間が歪み、そこからソフトボールほどのサイズにんだフェルフェニール様の頭部が現れた。その口が大きく開かれると、そこから目で追えない速度で舌がばされた。

七甲が使ったのは【幻影召喚：神代闇龍帝】である。私達のクランの全員が使えるのだが、その中でも【召喚魔】に特化した七甲が使うのが最も威力が高くすることが出來る。それは漫然と使うだけでも威力は高くなるのだが、七甲は自の『』によってそのサイズを小しながら威力を増幅させられるのだ。

王(クイーン)塩獣(ソルティア)は平均化されてもなお、100レベルという高いレベルに裏打ちされた合計ステータスによって度重なる猛攻を浴びてもまだ生きていた。しかしながら、七甲の一撃はその力を削り取ったらしい。作途中だった塩獣(ソルティア)達のが崩れていくことからもそれは明らかだ。

「ギギ…ギギィ!」

「ぐはっ!?」

勝った。そう思って油斷した瞬間、王(クイーン)塩獣(ソルティア)は最期の最期に一本の針を出した。王(クイーン)塩獣(ソルティア)に出などの能力(スキル)はなく、本當に悪足掻きに過ぎなかったはずだ。

しかしながら、その悪足掻きは本懐を遂げたと言える。攻撃に集中していたサーラと七甲の間を通り抜け…強力な『』と能力(スキル)のコンボを限界まで使ったことによって力も魔力も底をついた私の頸骨を掠めたのだから。

王(クイーン)塩獣(ソルティア)は自軍が敗北した切っ掛けが私にあるとわかっていたのだろう。最も憎い相手へと放った嫌がらせのような一撃だったに違いない。

だが、私がそれを食らったのはちょうど力と魔力を使い切った瞬間だった。そして王(クイーン)塩獣(ソルティア)がレベル100としては最下級のステータスしか持っていない上に攻撃用の能力(スキル)を保有していないとしても、私の低い防力ではダメージがってしまう。殘り1しか殘っていない力を。

「ボス!?」

「イザームさん!?」

私の力は盡き果て、力がらなくなって墜落していく。その視界の端で、同じく崩れていく王(クイーン)塩獣(ソルティア)の一つ目が満足げに歪んでいるように見えるのだった。

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戦闘に勝利しました。

全員に特別報酬と50SPが贈られます。

種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

種族(レイス)レベルが長限界に到達しました。

條件を満たせば種族(レイス)が進化しますが、レベルが上昇することはありません。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

【知力超強化】レベルが上昇しました。

【神超強化】レベルが上昇しました。

【力回復速度上昇】レベルが上昇しました。

【魔力回復速度上昇】レベルが上昇しました。

【魔力制】レベルが上昇しました。

【不死の叡智】レベルが上昇しました。

【深淵の住人】レベルが上昇しました。

【深淵のオーラ】レベルが上昇しました。

【浮遊する雙頭骨】レベルが上昇しました。

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はい、生きてます。いや、不死(アンデッド)なんですけれども。いやぁ、本當に危なかった。力の數字が0になったのは間違いないのだから。

様々な幸運に恵まれて私の頸骨に針を掠めさせた王(クイーン)塩獣(ソルティア)にとって唯一の誤算。それこそ私の有する【生への執著】という能力(スキル)である。私は死亡判定が出ても再び力を1にして復活するのだ。

復活した私は素早く中和剤を自分に掛けつつ、墜落する勢を整えて浮遊狀態をキープする。その後、しいたけ達の手で改良された不死(アンデッド)用の回復薬で力を回復させながら【杖】の集魔陣という武技によって魔力も回復させていた。

仮にあの針が私の骨に突き刺さっていたならば、私は即座にもう一度死んでいただろう。そして私の【魔力回復速度上昇】という能力(スキル)のレベルが低ければ、付著した侵塩によってやはり死んでいたに違いない。運は王(クイーン)塩獣(ソルティア)に軍配が上がったのかもしれないが、積み上げてきたモノがそれを防いだと言ったところか。

「しかし、驚いたな。まさか王(クイーン)塩獣(ソルティア)を倒しても塩獣(ソルティア)達が消えないとは」

一方で私にとっての誤算は王(クイーン)塩獣(ソルティア)を倒した後も、既に生された塩獣(ソルティア)達は死ぬまで戦い続けたことだ。一緒に死ぬか電池の切れた玩のようにけなくなると勝手に思いこんでいたが、そう甘くはなかったようだ。

恐らくは一度出された命令を果たすまでは止まらないという質を持っていたのだろう。おで王(クイーン)塩獣(ソルティア)を倒したのに殘黨狩りが終わるまで戦闘終了扱いにならなかった。

ちなみに、この殘黨狩りにおいて私は完全に役立たずだった。蟲の息な上に攻撃するための魔力すらも枯渇した私は言うなれば出涸らしのようなモノ。余計なことをしても足を引っ張ることになっただろう。死にかけの狀態で高みの見をさせてもらったわ。

「よォ、兄弟ィ。お手柄だったなァ」

「そう喜べんだろう。被害は甚大だ」

戦闘が終わった後、生き殘っていたのは二十人を切っていた。五十人で行していたのだがら、半數以上が死に戻りしたことになる。我がクランでも指揮を任せた兎路が討たれるなど、激戦であったことを窺える戦いであった。

今頃は全員が『ノックス』で復活しているのだろう。私達はそれぞれに討伐の報告をしているが、仇を取った禮をする者もいればその場に自分がいないことを悔しがる者もいる。本人の格に起因するようだ。

ちなみに、ジゴロウと雙璧をす源十郎も生き殘っているが非常に不機嫌だ。何故ならルビーが討たれてしまったからである。あんなに骨に不機嫌な源十郎を見るのは初めてかもしれない。

「何にせよ、得られたアイテムの分配は最初に決めていた通りにすれば問題はない。ただ…」

「おう。どうすりゃいいんだろォなァ、あれ」

集団で行する際、最も問題になりやすいのが分配についてだ。その點はちゃんと決めてあったのだが、倒した後に殘ったあるモノが問題だった。それは王(クイーン)塩獣(ソルティア)が座っていたガラスのような切り株であった。

次回は6月19日に投稿予定です。