《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月20日:技能とは「能う」技

「………む」

結構"イイ"のがったと思ったんだが。

吹き飛んだRiotは砕け散るでもなく、地面を転がるでもなく、なんと吹き飛びつつも制を立て直して「著地」していた。

「ダメ軽? いや、防されたじは無かったが……」

系のスキルやエンチャントを付與したプレイヤーを毆ると、なんというか……い(・・)のだ。抵抗というか、思ったよりも吹き飛ばない、みたいな……だが、今の「角牛の威(オックス)」は間違いなく直撃だった。

その上で耐えきられた。それも、幸運食いしばりってじではない、カッコよく著地してる風を裝ってるけど膝をえぐめにりむいていたのを見逃していないぞ。あれは確実に1以上ダメージがれ方だった……つまり、あの時點で「角牛の威」+り傷に耐えられるだけのHPを持っていたということだ。

考えられる可能は三つ。

1:防ではなくダメージ數値そのものを軽減する何かしらの対策がされている

2:単純に生命線(HP)が極太(多い)

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3:要するにダメージでHPが1にならなければ、り傷ができてもへっちゃら。つまり……

「黒い煙は回復エフェクトの隠蔽がメインか? なんか赤いが一瞬混ざってたよな?」

「…………」

ロールプレイするなら沈黙は使い分けた方がいいぜ、それは肯定の沈黙だ。

否定寄りの沈黙はとりあえず鼻で笑っておくと誤魔化しやすい。

「戦闘中の回復は止していないはずだ………」

「まぁ特にはしてないな」

するならするでやりようはあるし、していいなら俺も使うしな。

とはいえ、原理が見抜けなければそれは立派な脅威だ。再現がある場合、下手するとトドメが刺せないまである。

「…………」

攻撃をける「前」に発する必要があると仮定すれば、発を隠す理由にも納得がいく。要するにカウンター技だからな。

だがあの赤いは攻撃をけた「後」だった、つまり発そのものを隠す意図ではない……と思う。仕方ねえ、カマかけるか。

「手品(・・)にしちゃあタネが割れやすいんじゃあないか!?」

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「っ!!」

あえての無手、それを見るからに「これで充分」と拳骨を構えながら愚直に突っ込む。

「そんなに顔(・)から能力を割り出されたくないか!?」

「!!!」

お、一発目のカマ掛けでヒットか。首から上か下かでカマを掛けるつもりだったんだが……顔で識別可能な何かしらによる回復効果、ね。

まず一番最初に思い浮かんだのは「呪い(マーキング)」だ。リュカオーンや今は亡きジークヴルムなんかからの攻撃で、永続的に傷が殘り続ける俺にとっては非常に覚えがあるアレ。ロクでもないもんではあるが、デメリット以外にも副次効果があるのは事実なのだ。ただ、あれらは基本的に永続的な効果だからダメージに反応して回復、なんて都合の良い運用ができるとはちょっと考えづらい……無い、とは言い切れないので保留。

短剣を振るRiotのきは隨分と堂にったものだ。暗殺者の経験あるの? と思ったが流石にそれはないだろう……となると、こういうきが求められるゲームの経験者、ってのが一番あり得る可能か。

とはいえ、インファイトでナイフ振り回すのは俺だっていろんなゲームで経験済みだ。コツは「腕がそういう形をした人間との毆り合い」と割り切ること。兇にだけ注視してると毆られる。

こちらは徒手空拳だが、さっきの角牛の威(オックス)がよほど強く印象に殘っているらしい。向こうも攻めてはいるがどこか及び腰……というよりも至近距離での戦闘を警戒している。刃は通らないのは散々見せてきたしな。

とはいえ省エネモードでもそう長くはもたない。もう勝負をつけなければ、最悪メイド服が散しかねないからな……流石にメイド服とはいえ「惜しい」というはある。

「さて…………」

・顔を見られるとなにかしらの原理、理屈がバレるから隠している。

・あの黒い煙は超至近距離まで近づけばうっすらと顔が見える。

・Riotのアバターは男、細見、形。まぁこれはどうでもいい。

・目は赤、犬歯が発達している…………そして白の

ここまで報が集まればおのずと推測が仮説となり、解答に繋がっていく。

だがその上で「分かったから何ができるでもない」という結論が出てしまった……種族特(・・・・)は如何ともしがたい。

となれば取れる手段もおのずと限られる……否、取れる手段が決まった、と言うべきか。

「じゃあそろそろ決著つけるか鉄砲玉……お前の暗殺プレイには圧倒的に足りてないものがあるッ!」

「何……?」

一撃の火力?ノー。最終的に対象がくたばればいいのならDoTなり即死魔法なり手段の質はなんでもいい。

気取られない隠?ノー。暗殺とステルスキルは別だ、木の上から気取られないよう飛び降りて頸椎狙いでナイフを振り下ろすのも、真正面から「天誅ァー!!!」と刃を橫向きにした包丁で晝ドラ天誅するのも、両方暗殺というカテゴリから外れることはない。

ではRiotには何が足りてないのか。

「───暗殺は迅速に。鉄則だぜ」

その言葉と共に、俺は一歩踏み出して………

……

…………

先生はおっしゃった。飛び方を知らない鳥はいない、と。

せこれは別にペンギンも空の飛び方は知ってるとかそういう屁理屈でごねるような容ではなく、空を飛ぶ鳥は何も分からないまま宙に浮いてるわけではない。ということだ。

要するに想像力、どんな「速さ」がしいのか……自然と思い浮かぶのは失った黒い雷の加護。

ならば思い浮かべるのは一つだろう。故にその名は───

…………

……

「───「超速(ルクシオン)」。」

七連結同調、俺(サンラク)から失われたそれを求めた先に……の速度を得た。

「っ!!?」

Riotからすれば意味が分からないだろう。何せ、いきなり目の前に現れた俺がさらにその姿を消したのだから。

種明かしをするなら「めっちゃ高速で目の前までダッシュした後に多重的円周運《オービット・ムーブメント》で背後に回り込んだだけ」なのだが………ちょっと俺の姿がの線にしか見えないくらい高速ってだけだ。

そして回り込んだRiotの背中にそっと掌を押し當てる。

が悪い癖にやたら「赤」が目立つ顔、鋭くびた犬歯。赤い回復エフェクト……詳細は知らないが存在は知っている。

種族としての「型」をそのままに、しかし種族としての名稱が変更されるもの……Riotの正は竜鬼族(ヴァンパイア)!それがあののような回復エフェクトの正!!分かったからってどうしろってんだ!杭を心臓に刺したら誰だって死ぬっつーの!!

ので、そうすることにした。

「死ぬまで毆る、迅速にな……!!」

ばづん!! と破裂音のような……あるいはものすごく重いビンタの音のような。そんな重く響く衝撃がRiotの背中にれた俺の掌から放たれる。直撃した側はさながら蛇に睨まれた蛙のような覚だろう……

これぞ二連結同調「震無極(しんむきょく)」。

掌(てのひら)か足の裏がれていることがこのスキルの発條件。効果は強力かつ三秒間の直(スタン)。

この俺の前で二秒以上スタンする意味を今から思い知らせてやるよ───!!

星海飛腳(アステ・ランナー)+韋駄天権現+重律超越《フィジクス・トランセンド》+アブレイズ・アドバンスドエール+ディオーネーの神助《ディオーネー・アシスタンス》+リミット・アセンション+

連結する時にサンラクが不思議な踴りをしながら「の速度來いの速度來い……!!」と念じていたから獲得した…………のではなく、「それに近しい挙をしたか」と最大速度の「速度強化系の機力スキルを習得しやすくなる」のダブル補正で解された。

には「そこにいるけどいない狀態の短距離転移を超連続して繰り返すことでゴール地點までのオブジェクトをすり抜けながら直進する」速パラパラ漫畫みたいなスキルなため、直線のA地點からB地點まで辿り著く速さは臨界速よりも上だがこれを習得しても最大速度は獲得できない。

要するに「スタートからゴールまで、一応その場に存在してるし前に進んでるからこれは走るスキルです」と過程を誤魔化して結果的にの速度でいてますよ!と自己申告する屁理屈スキル。

この「結果的に見ればそうとも言える」加速と「正しい過程から続いた結果」による加速を同時に使うのがティーアスの超越速(徒競走で自分以外全員転んだなら自分が一番速い、ということだし普通に走っても自分が一番速い、の二乗加速。先生がケーキを食う時世界の全てが転ばされてるんですね)

ちなみにほぼ転移だが「目視座標に向かって直進する」という質上、そこに別のオブジェクトが設置される、もしくは進行上に壁などで視覚的に塞がれるとその塞いだオブジェクトに派手に激突する、というデメリットがある。

実際は走ってないし加速でもないが自己申告してるのでその通りの被害が後付で付與される。

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