《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》140話 バカバトル
◇◇◇◇
「神種だなんだかんだもう知らねえ! てめえのホラー期間はもうお終いだァ!! さんざんビビらせてくれた分倍返しにしてやらァ! ボコボコにぶっ殺してやるぜえ!」
耳たぶびらびら、それが夜の海の底から帰還した。
「それ……なんですか?」
班長が目を剝き、震える指先をソレに向ける。
「よおお、班長殿ォ、アンタなかなかに悪玉だなァ……悪い奴だよな、お前え」
「……これは思ったよりヤバいかもしれませんね〜」
班長の顔には冷や汗がじっとりと浮かび始めている。
『りゅうぐうを食べた……? おなかが壊れていません、川の流れの音がします。かっぱさんがりゅうぐうを突いて遊んでいます。もじゃもじゃの古い人がりゅうぐうをおせんべいにして食べています』
「あ、アサマ様……? 何を……」
「あ、味山さん、なのか?」
「お、お兄さん……?
「あ、アンタ……なんや、それ……」
あっけに取られるこの場の全員、白川が、熊野が固まり、ソレを見つめる。
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もし、ここにいるのが英雄ならば、讃えた。
生き殘った白川親子や、それを庇い続けた熊野に優しい言葉をかけただろう。
だが、ここにいるのは英雄ではない。
「テメェらもう、完全に俺の敵なァ"〜!! おめでとう!! 今日が亡國記念日だ! イズ王國のなァ!」
ぎゅおん!!
「うお!」
「きゃ!」
「は、や……」
耳男のが躍、飛び跳ね、地を駆け、一瞬で白川親子を、熊野を追い越す。
彼らよりも前へ、最前へ。
もうこの男の目の前には敵しかいない。
「ずっ〜っと、テメェらばっかり楽しそうによお、人を、イジメやがってよお〜!! あんま気分良いモンじゃあねえんだぜ、そういうのお!」
「アサマ様、アレとまともに話してはなりません、殺しましょう」
『はい』
「あ? 何言っぺきょっーー!?」
ばたん。耳男の頭、頭? 頭が潰れる。
アサマが古い枝のようなしわがれた手のひらを合わせた瞬間、萬力で押し潰されたように。
「あ!?」
「ーーあ、あああ!? あかん、あかん、あかんあかん!? そんな、だ、ダメ、ダメや……!……え?」
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驚愕、恐れ、悲嘆、そしてまた驚愕。
白川親子と熊野の表はありとあらゆるにクルクル変わる。
何故か。
「たらーん、なぁんちゃってえ。死んだフリだぜ」
じゅぶ、ぶぶ。
破裂した頭があっという間に元に戻る。
「アンタ、それ、なんなん……?」
「うわ〜人間が出來て良いことじゃないですね〜」
このver2.0の世界に適応した者ほど、その有り様は異常。
神種、その圧倒的な存在と人類の格付けはすでに決まっている、はずなのに。
『…………おやまを怖がらないおやまの聲が屆かないかきもさるもきのめも、全部、アレを怖がる……おやま……あの人……空っぽなのに、暖かくて……ーー』
アサマが初めて、きを止めた。
この日、歴史上、初めて神種が地上において人間にーー
「あ〜? ん〜? これでテメェに殺されるのは2、3回目だけどよお……な〜んか、アレだな、お前、弱くなってねえか?」
『怖い』
ーー怯えた。神種が、明らかにたった1人の人間を警戒し始めた。
TIPS€ 神話攻略……通常ルートでの神解明僅
TIPS€條件達 "神種に3回以上殺されて、死なない"
TIPS€ 隠しルートでの神話攻略が発生、神種の畏怖、恐怖による存在強化の弱化を確認
「ん〜?」
アサマの力が、僅かに弱まり始めている。
それはシンプルな理由だ。
神とは恐ろしいが故に畏ろしいのだ。
人が何をしようとも正すら分からぬままに、遊び殺される。
それが神と人の関係、この世界のルールで。
「まあ、いいや、試してみるか、々」
「え?」
「は?」
ボン。
味山の足元が発する。足の足型がコンクリートの地面に刻まれる。
耳男狀態での作は、耳の大力のフル稼働によるものとなる。
その速度、迫力たるや。
『はや』
「よお、そのマントくれよ」
一瞬の差、神の纏う襤褸の一部を味山が引き裂く。
『あ』
「うん、ピッタリ、よし、これでコンプラ問題は解決、後は」
味山が、じっと、それを見る。
1番口が周り、1番トサカに來る男を。
「あ」
「班長、お前からな」
「ひッ、あ、アサマ様!? 早く、殺しーー」
味山が班長を毆り飛ばそうとしたその時だった。
『じゃま、です』
パンっ。弾けた、潰れたトマトのように赤が広がる。
味山ではなく、班長の頭がそうなった。
「あ?」
『今はしお靜かに。後でお話ししましょうね、かいじゃくさん』
「おおっと、仲間割れか? まあ、なんでも良いけどよお、アサマさま、テメェ何がしてえんだ?」
『……おやまの中には遊んでくれる人がいませんでした。先におやまに來た子達も遊んでくれる人がいませんでした』
耳男を見下ろす襤褸を纏う神。
『おやまの神様が遊んでくれていました。でもとても、とても悲しそうでした。私はたのしかったけど、神様は楽しそうではありませんでした』
「何の話だ?」
「……アサマ様の昔の話や」
怪訝な聲をあげる味山に熊野がそっと聲を掛ける。
「アンタ、下がっとけ。俺はアシュフィールドみたいに用じゃない。巻き込むぞ」
「……聞いて、アサマ様の正の話、あの方は……あの子達は、子どもや」
「こども……?」
闇と泥と枯れ木が襤褸を纏った姿のソレはじっと、味山だけを見ている。
『あなたはとても笑っています。とてもとても楽しそう。手鞠は好きですか? 花火は好きですか? 鬼ごっこは? かくれんぼは? お父さんは遊んでくれませんでした、守ってくれませんでした、あなたはおやまの香りがします、でも、おやまではありません、わかりません、不思議です』
ぐねぐね、くねくね。不定形のその姿がねじれたり、歪んだり。
奇妙なことに、どこかからお囃子の音も聞こえてきた。
「遊んでほしいだけ、なんや。見てほしいだけなんや、ひとりぼっちで死んだ可哀想な子なんや……ウチはそれに、同してしもうた……いや、ウチだけやない、きっとあの子らを見捨てれんかったのは、あの神様もーー」
苦しそうに呟く熊野を味山が耳のをほじりながら見つめて。
「ほーん。なるほど、じゃあアレだ、アサマはガキっつー事かァ……あ? じゃあなんだ、俺、何回もガキの癇癪で殺されちまってた訳か?」
「え……? い、いや、ウチはそういう事を言うとるんやなくて」
「いや、そう言うことだろ。……なんかそう考えると途端にムカついてきたな。おい、アサマ」
『話しかけられました、名前を呼ばれました、誰かお返事してください、怖いです、嫌です、怒られそうです、私お話ししてみたいです、じゃあどうぞ、はい、なんですか?』
味山の問いに、アサマがモゴモゴ蠢きつつも返事をして。
「お前、何がしたいんだ? こんな人間って、ガキを花嫁だなんだと宣って。イズ王國だとか、なんとかわけわかんねえことをして。神様ってのはみんなそうなのか?」
『……え、え、え、え、え』
味山にはある仮説があった。
あのホラーハウスで得た報、今の熊野の言葉。
アサマの正に関する、仮説。
TIPS€ 神話攻略進行 隠しルートによる神の陳腐化進行、アサマの正に対する複數の報獲得済み
「まあ、いいや。俺は探索者だからな。化けが好き勝手してるならやることは一つだ」
『私はずっとずっとあそこにいたかった。おやま? あれ、わたし、おウチ、どこ……ここ、違います違います。ああ、1人は嫌です、あなたはだあれ。寂しい、1人は冷たくて暗くて怖くて』
TIPS€ 神話攻略進行20%に突、攻略ボーナス発生"権能"への耐手
「味山只人の探索記録、アレフチームとの離間後、地上にて"怪種"を発見、駆除に移る」
もう細かい理由はいらない。未だ神の全容は見えず。
だが、もう味山は最前に立っている。
『あ、あああ……ふふ。おやまの聲が聞こえます。神様はわたし達を抱きしめてくれました。でも、もう遊んでくれません。あなたはどうですか?』
ドロドロドロドロ。
あの世の泥が、味山達の周りに湧く。
フジヤマお面の人間達はただ、這いつくばるまで。
黒い泥が、一斉に味山達を覆い盡くそうと。
「波!」
「お父さん……!」
「いかんっ!」
親子が互いを、指定探索者が國民を。それぞれが己が守るべきものを庇おうとーー。
『あそぼう』
神が、神らしく、神のままに、人の命を遊び殺す。
泥が、常世ならぬ幽生の泥が生者を溶かそうと迫って。
TIPS€ それは、この世ならざるものを送るための"火"である。
TIPS€ 死すべきものをあるべき場所に
「ジャワ、はじまりの火葬者」
ぼおう。
「え」
「わあ……」
「なんや、これ……アサマ様の泥が……」
燃える、燃え盡きる。
男の燃え続ける右腕から散らばる火のが、その泥にれた瞬間、黒い泥が燃え始める。
その火は優しく、それでいて力強くこの世にあってはならないものを送る。
『え、え、え?』
「いいぜ、アサマ」
がばっ。
燃える泥の合間をい、味山がアサマの巨に組みついて。
「遊んでやるよ、クソガキ」
『あ、ああああはーー』
ぼおう。
右腕の火が、アサマに燃え移る。
舞い散る火のついた襤褸、悶える黒い泥。
「なん、や、それ」
あっけに取られる熊野の目の前で、あり得ない景が繰り広げられている。
「ギャ、ハハハハハハハハ!! ハハハハハハハハ!! よお! 化け!! あそぼう、か!! あそぼうかァ!! ホテルでも似たような事言ってたなァ!! 良い! 良いぜ! 遊ぼう!」
『え、え、え、え、ふ、ふふふふ、フフフフフフフフ。今、あそぼうとわれました、これは遊びのいでしょうか? フフフフフフフフフ、やった、やったよお、やったよう、あそぼう、あそぼう!!」
火の中で、燃える男と神が笑っていた。
右腕から燃え広がる火はすでに神を薪として燃え上がる。
耳の面の男もまた燃え上がる火の中で、未だ神のに組み付いたままに。
「ありえんやろ、それ……」
燃え上がり、溶けた所からたちどころに再生していく耳男。
そもそも、火をまるでものともしていないアサマ。
互いにこの世の理の外にある者同士。
熊野は目の前で起きていることのほとんどを理解出來ていない。
わかることは一つだけ。
「ンギャアアアアアア、アッチイイイイイ!?」
『ふふ、フフフフス、フフス、フフス。すごい、なんで、死なないの? フフフフスフフス』
パチン!!
アサマの歪にびた腕が耳男の顔面を毆る。
ぐるぐる、捻じ曲がりへし折れる男の首。だが、
「ぎゅべ!? やりやがったな、このバカ!! 斷頭はやばいんだよ!!」
じゃるるる。耳を塞ぎたくなる水音と共に、ねじれ千切れかけた首が逆方向に回転し、再生する。
そのまま耳男が拳骨をアサマに叩きつけて。
『ヤッ!? いたい、いたい、ぶたれた、フフス』
ぼこん!
地面に陥沒するように沈むアサマ。燃え続ける火が消えるほどの勢い。
神と人間が殺し合い、毆り合う。
それが、立している。
熊野にわかることは一つだけ。
「ギャハハハハハハハハハ!! テメェ! 理もなかなかやるなァ!」
『いたい、いたい、ああ、でも、たのしい』
「同格や……」
この日、初めて地上に現れた。
神種と同格の殺し合いが出來る存在が。
それは地上が呆けて忘れた最前の者たち。
今は忘れられた星が、見出した最弱で、最狂の探索者。
「てめええの殺し方.思いついたぜええええ!!」
ぼんっ。
耳の男がアサマを足蹴に真上に飛び上がる。がしゃん、がしゃ。
ホテルの壁にぶつかりながら、その建の屋上へ。
『え?』
「え」
耳男の姿が消える。
アサマと熊野が、同時に上を見上げて。
夜の空、ホテルの屋上。
ぎ、ギギギギガ、イイイイ、バキン!!
何か、とても頭の悪い大きな音が響いて。
「ははーん、さてはてめえ、ほのおタイプだな?」
そして、その音よりもさらに頭の悪い聲が夜のイズに響いた。
読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!
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