《骸骨魔師のプレイ日記》魔王國深淵探索基地

ログインしました。四日間かけて私達は結晶窟跡地を防衛拠點へと変貌させた。『ノックス』や『エビタイ』、それにアン達の拠點などこれまでのノウハウがあったのでここまで素早く完させることが出來たのだ。どんな経験も無駄にはならないのである。

に伴い、結晶窟跡地の名稱は変化している。その名は『魔王國深淵探索基地』。シンプルかつ非常にわかりやすい名前にしたのだが、仲間達には不評である。何故だ。

しかしながら、ここを利用する妖人(フィーンド)と千足魔(キィラプス)は何も言われていない。どうやら地名などに頓著がないらしい。彼らにも詰られていたら流石に心が折れていたかもしれない。

「ああ。おいででしたか、王よ」

そんな探索基地にやって來た私達を出迎えたのは妖人(フィーンド)のリャナルメである。『深淵の結晶窟』の攻略と防衛拠點の建設を始めた頃に、リャナルメ達は自分から『アルトスノム魔王國』に所屬したいと言い出したのだ。

どうやら有効的な集落で居続けるより、私達の國民になった方が都合が良いと判斷したらしい。私達としても國民になってくれれば探索基地を任せやすくなるので、彼らを國民にすることを斷るという意見は全く出なかった。

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ただし、これには裏話がある。というのも魔王國とどう付き合うかについてリャナルメが主導して妖人(フィーンド)達が私達を品定めしていたようなのだ。

何を基準にしていたのかと言えば、『侵塩の結晶窟』の攻略の否とそれにかかる時間だったらしい。失敗すれば徐々に疎遠になるように振る舞い、時間がかかれば良き隣人に、そして素早ければ魔王國に加する。そのように方針を決めていたそうだ。

私達が結晶窟を攻略したのは、妖人(フィーンド)達がこの方針を定めた直後のことだったと言う。品定めしていたリャナルメ達が度肝を抜かれたようだ。

この報を私にこっそりと教えてくれたのはリャナルメの夫であるルドヒェグだった。寡黙だが義理堅い彼は自分達が加わる國の國王である私には筋を通すべきだとして教えてくれたのだ。しかも罰を下すのならば自分が引きけるからリャナルメ達は見逃してしい、と頭を下げたのである。

個人的には付き合うべき相手を見定めようと品定めするリャナルメの強かさは嫌いではない。戦國時代の國人領主もそうしていたのだ。一族が生き延びるために最良の方法を模索していたということなのだから。

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同時に無條件のイエスマンではない分、相談役とするにはリャナルメのような人こそ相応しかろう。現実的な意見を述べてくれそうだし、彼らを蔑ろにしていないというアピールにもなる。それとなく質問するようにしておかなければなるまい。

そして裏話を語りながらも罰は自分が取ると頭を下げたルドヒェグにも好が持てる。隠していては仁義に反するが、話すこと自が一族への背信だ。板挾みになった結果、全責任を自分が負うから許してくれと両方に筋を通そうとする俠気は頼もしい。口下手だが熱い心の持ち主である彼の覚悟に免じて罪に問わないと約束した。

ちなみにルドヒェグの語ってくれた事実は私しか知らない。ルドヒェグには他の者達には言わないように口止めもしている。それは妖人(フィーンド)に不必要な不快じてしくなかったからだ。

私はリャナルメの立ち回りを評価しているが、嫌悪を抱く者も確実に現れる。特に私達への強い忠誠心を見せている疵人(スカー)や四腳人(ケンタウロス)達は怒りを見せるかもしれない。國民間のが起きないように配慮するのは私達の仕事であろう。

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「王ガイラッシャッタゾ。オ迎エセヨ」

千足魔(キィラプス)もまた、一部だけが魔王國に加わることとなった。どうして一部なのかと言うと、それは我々が行ったお禮參りのせいだった。

千足魔(キィラプス)の若者が深淵探索をするマック達を襲撃し、彼らは得られるはずだったアイテムを橫取りされた。そのケジメを付けるべく私達は千足魔(キィラプス)の集落の近くを虱潰しに捜索し、痛め付けて謝罪と賠償を要求した。

この行為そのものは必要だったと思っている。友好的な者達には友好的に接するのが我々の方針だが、敵対されても許していては舐められてしまう。仮にお禮參りという名の報復をしていなければ、妖人(フィーンド)達は私達を侮っていたかもしれない。故に私は全く後悔していなかった。

だが、痛い目を見た千足魔(キィラプス)達にはそう思わない者達がいたらしい。特にゴゥ殿が処刑した盜人の関係者は私達に対して不満を募らせているというのだ。

自業自得と言えばそれまでかもしれないが、実際に処刑された者の関係者が不満…もっとハッキリ言ってしまえば死の原因になった私達を憎悪していてもおかしくない。逆恨みも甚だしいが、本人達にとっては正當な怒りなのだからそれを解消するのは骨が折れるだろう。

そうして怒り狂う者達が反魔王國派として強手段によって、つまり武力によって我々を深淵から追い出そうと畫策したらしい。正直に言って無謀であり、それを理解する者達が計畫が形になる前に収束させたようだ。

この一件によって千足魔(キィラプス)の一部は我々との関係をより深めるべきだと思うようになった。彼らは親魔王國派となり、逆に反魔王國派はより頑なに我々を嫌うようになったのである。

結果、千足魔(キィラプス)達は三つの派閥に分かれてしまった。それは親魔王國派、反魔王國派、そして中立派である。ただし最も多いのは中立派であり、しかも中立派は魔王國と協調路線を取るべきだと考えているそうだ。

以上の経緯から、魔王國に加わることになった千足魔(キィラプス)は親魔王國派と中立派から半數ずつやって來ている。親魔王國派は魔王國と一族の繋がりを強くするために、そして中立派は偏りのない視線から魔王國を見極めるために。

千足魔(キィラプス)に関して面倒なのは、どの派閥も一族にとってその考えが有益だと思っている點であろう。解決するために私達が口を出せば余計に拗れそうなので、私達からアクションを起こすつもりはなかった。

中立派に私達がどんな者達なのかを好きなだけ観察してもらい、こちらには敵意はないし我々と付き合っていれば利益が生まれるのだと知ってもらう。そしてしずつ中立派を魔王國寄りに変えていくのだ。

あと千足魔(キィラプス)の親魔王國派のトップはゴゥ殿である。その影響からか親魔王國派は戦士が多く、砦の防衛を任せるにはうってつけであった。ゴゥ殿の場合はエリステルへの復讐の機會を逃さないためかもしれないが、カリスマのある古強者が來てくれたのはありがたかった。

「今日はどうなさったので?」

「探索もあるが、その前に地下の様子を見に行こうと思ってな…何かやらかしたか?」

「イイエ。時折発音ハ聞コエマスガ、ソレダケデス」

今日の目的はさらなる深淵探索と地下に設置した研究所の様子をうかがうためだった。例の切り株を最大限に活用したいとしいたけ達が力説した結果、『魔王國深淵探索基地』の地下には研究所の出張所が作られていた。

妖人(フィーンド)と千足魔(キィラプス)に迷を掛けてはいないようだが、発音とな?一何をやっているんだ、あいつらは…ここは防衛拠點なのだぞ?忘れているのか?いや、十中八九忘れているんだろうなぁ。

私はため息混じりに基地の地下へと降りていく。かつてテナントがっていた場所だが、今では妖人(フィーンド)と千足魔(キィラプス)の居住區になっている。まだまだ空きスペースは多く、その一部は魔王國のプレイヤーが泊まり込むための仮眠室になっていた。

「様子を見に來たぞ…凄いことになっているな」

ボスエリアだった最下層に降りると、そこは私の思っていた以上にゴチャゴチャした空間になっていた。床を満たす重の上に筏のように石膏ボードが浮かべられていて、その上には大小様々な機材が設置されている。さらに素材アイテムがそこら中に散らばっていた。

おいおい、機材の持ち込みはパーツに分けてインベントリに突っ込んでいたのだろうと納得出來るぞ?だが、アイテムが散らばっているのはいただけない。重の上で放置したら品質が低下するじゃないか!

私は子供が散らかしっぱなしにした玩を拾うお母さんのようにアイテムを拾い集めて一纏めにしようとした。しかし、そんな私の顔面目掛けて何かが飛んできたので、反的に尾で迎撃する。

「うおっ!?何をする!?」

「何をするって、そりゃこっちのセリフ!実験の邪魔をするんじゃあない!」

だがそれは中ったポーション瓶だったらしく、私は微小ではあれどダメージをけてしまった。瓶の投擲には武技まで使われていたのか、ポーションは広範囲にまき散らされる。ポーションの品質が低かったのが最後の理なのだろうが、ここまでされたら流石に怒っても良いだろう。

だが、実際に怒られたのは私だった。どうやら重に浸けたアイテムがどうなるのかを調べる実験を行っていたようなのだ。散らばっているのか実験中なのか、わかりにくいのは止めてくれ。『実験中』くらい書いてくれても良いだろうに。

「実験はともかくだ。切り株はどうなった?」

「フヒヒ!良くぞ聞いてくれました!」

私にポーション瓶を投擲した張本人であるしいたけは、先ほどまでの怒りを一瞬で吹き飛ばして私の腕を引っ張っていく。そうして私が見せられたのは、大量の魔道や機械類が繋がれた切り株であった。

より的に言えば王(クイーン)塩獣(ソルティア)が寄生していた亀裂にはドクンドクンと脈打つ杭が刺さっており、その杭からびる何本もの管がその先端に魔導や機械類に繋がっている。生の技まで流用しているようだ。

「切り株君が無理せず生産可能な魔力の量を見極めて、必ずそれ以下の魔力しか吸い出さない!さらに生と半分融合させることで必要とあらば治療も可能!さらにさらに…」

「あー、ありがとう。上手く利用出來ているのならそれで良いぞ」

「あっ、そう?じゃ、実験に戻るから」

質問がないのなら用はないとばかりにしいたけはノシノシと実験に戻っていく。困ったものだ、と苦笑しながら私も上へ戻るのだった。

次回は6月27日に投稿予定です。

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