《ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~》第三百三十五話 レーリアの歩み

いつも想やブックマーク、評価や誤字字の指摘などありがとうございます。

小學館ガガガブックス様よりロメリア戦記が発売中です。

BLADEコミックス様より、上戸先生の手によるコミカライズ版ロメリア戦記も発売中です。

最新話をマグコミ様で読むことが出來ますよ。

第三百三十五話

ホヴォス連邦スコル公爵家の令嬢レーリアは、天幕の中で支度を整えた。

を包む赤いドレスは、ライオネル王國ロメリアから譲られただ。こそ派手だが簡素な意匠で作られているため、大人びた印象を與える作りとなっていた。

いつもはもっとリボンやフリルが沢山ついた豪華な服を選ぶのだが、今日はこう言った気分だった。

レーリアは姿見の前でかし、髪型や服がおかしくないかを調べる。いつもとはじが違うが、それでも悪くないのではないかと思い、鏡の前で頷く。

満足な笑みを浮かべたレーリアの視界に、裝箱が見えた。箱の上には赤いドレスがかけられている。これもしいドレスだが、スカートの裾が切り裂かれ、短くなっていた。

Advertisement

レーリアは破れたドレスを持ち上げて掲げた。

これもロメリアから借りけていたドレスだ。しかしガンガルガ要塞の攻防戦で、レーリアは自らスカートを切り裂き、刃と刃の間を駆け抜けた。

もはや著る事は出來ないし、ロメリアも捨てもいいと言っていた。だがレーリアはこの服を取っておこうと思っている。

自分にとっては思い出の深い服だった。それに短いスカートで走った時は、実に爽快だった。ロメリアはよく白いドレスを著ているが、時にはズボンを履いて馬を乗り回している。

がズボンを履くと、周りからはみっともないと言われる。だが自由に走り回るのは楽しかった。またやってみたい。

ドレスを掲げながら微笑んでいると、天幕の外から聲が投げかけられた。

「姫様、準備ができましたか?」

「出來た、今行くわ」

レーリアは返事を返して天幕を出ると、割れた腹筋を曝け出すが、斧を背負い待っていた。この的なつきのは、レーリアの護衛である戦士のマイスだった。

元は傭兵だったらしく、言葉遣いはまるでなっていない。しかし腕は確かで、斧を振るわせれば魔族とも互角に戦う傑だ。

「じゃ、軍議に行きましょうか」

まるで友人と話すかのように、マイスは気楽に聲をかける。

レーリアはいちいち咎めたりはせず、軍議が行われるヒルドへと向かった。

軍議の容は知らされてはいない。しかし予想は出來た。ロメリアが魔王軍と戦時條約を締結するため、會談に赴いていたはずだ。

魔王軍と最初の渉であるため、今回は深い話し合いはせず、次回の會談の約束を取り付ける事が目的だった。しかし戻ってきてすぐに軍議が開かれるということは、それ以上の話し合いがあったのだろう。

レーリアが思考しながら歩いていると、護衛として後ろを歩くマイスが明るい聲を上げた。

「あっ、ゼファー」

マイスが呼ぶ名を聞き、レーリアの鼓は跳ね上がった。思考していた事柄は一瞬にして霧散し、視線はマイスが聲を向けた方向を探る。

レーリアはマイスが手を掲げる先に、一人の男を発見した。

い髪に優しげな瞳を持つのは、ハメイル王國のゼファーだった。背後には隻眼の騎士ライセルを伴っている。

ゼファーは父親であるゼブル將軍の厳しい教育により、以前は自信がなく俯きがちだった。だがゼブル將軍の死を乗り越え、今や立派な男へと変貌を遂げていた。

背筋がピンとびたため、以前より大きくじる。顔つきも引き締まり、目には輝きがあった。

「ああ、レーリア様」

マイスの聲に、ゼファーが気付いて顔を向ける。ゼファーの顔を見ると、レーリアは鼓が高まるのをじた。しかしを押し隠し、すまし顔を見せた。

「ご機嫌よう、ゼファー様」

會釈するレーリアに、ゼファーも會釈を返す。その笑顔が眩しく、レーリアは思わず視線を逸らしてしまった。

「よう、調子どう?」

レーリアが視線を逸らしている間に、マイスがゼファーに歩み寄り肩に手をおく。

馴れ馴れしい!

気安く置かれたマイスの手に、レーリアは瞬間的な怒りが湧き上がった。

マイスはガンガルガ要塞の戦いで、ゼファーに命を助けられたことがある。それからというもの、マイスはことあるごとにゼファーに近寄り、気安く聲をかけて時にはベタベタとれたりする。

その度にレーリアの心がわざつき、苛立たしくなってしまう。しかしレーリアとゼファーは、別に人でもなんでもない。マイスが気安い態度をとったからといって、咎める事は出來ない。

レーリアがを押し隠していると、マイスを軽くあしらったゼファーが微笑みを見せる。

「なっ、何よ」

ゼファーがこちらを見てくれて、心嬉しかったが、レーリアの顔は口を尖らせた。

「いえ、今日はいつもとお召しの様子が違いますね。その服もお似合いですよ」

不意打ちのようなゼファーの言葉は、レーリアの心を抜いた。レーリアの顔は紅し、口角が緩んだ。

「なっ、何よ。急に」

レーリアはゼファーから顔を背け、自分の表を隠す。どれほど顔に力をれても、表の緩みが止められなかったからだ。

「早く軍議に行くわよ!」

命令口調で話したレーリアだが、その聲はやや上っていた。一方怒られたゼファーはというと、怒ることなくニコニコと後についてくる。その様子はまるで従僕か護衛のようであった。

レーリアは、隣を歩きなさいよと思ったものの口には出來なかった。

そのためしだけ歩みを緩めた。

    人が読んでいる<ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください