《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》431 忘れたころにやって來る……。

々と問題はあったが……。

アンナとの初詣は、どうにか無事に終わりを迎えた。

故郷である真島駅へ列車がつくと、和服姿の彼に手を振る。

「またな、アンナ」

「うん☆ 今日すごく楽しかったよ。改めて、今年もよろしくね☆」

「ああ、また今年もたくさん取材しような」

バイバイとは言わず、お互い笑顔で手を振る。

別れが惜しいけど……しぐらいは我慢しないとな。

が乗る列車は発車し、その姿が小さくなるまで、手を振り続けた。

「さ、俺もそろそろ帰るか」

ここでアンナとの余韻を、楽しむつもりだったが……。

我が家へ帰るってことはまだ親父がいるんだ。

もう夕方だし、さすがに夫婦の時間。終わってるよね?

自宅の裏側に回り込み、玄関のドアに手をやる。

恐る恐るドアノブを回すと、中から男の聲が聞こえて來た。

「あぁ~ いいよぉ~ 琴音ちゃん!」

親父の聲だ……まさか、商売道である容院を使って、プレイ中なのか?

「やっぱりの琴音ちゃんが一番だわ~」

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「もう六さんたら、いつもそう言ってくれるけど。他の人に浮気してないの?」

「するわけないだろ……こんなテクは琴音ちゃんだけなんだから、ああっ!」

親父のぎ聲を聞いた俺は、即座に店の中へと駆け込む。

そこは腐っても、普段お客さんが、母さんに髪を整えてもらう場所だから。

「おい! あんたら、いい加減にしろよ!」

威勢よく、怒鳴り込んだのは良かったが。

俺が目にした景は、予想していたものとは全然違う。

母さんが痛いBLエプロンを著て、親父の長い髪をハサミで切っていたから……。

「おう、タク。おかえり。アンナちゃんだっけ? 初詣どうだった?」

ケロっとした顔で、そう言う親父。

「ああ……うん。楽しかったよ」

「そうか。なら良かったぜ。俺の著も似合ってんじゃねーか。へへへ、初孫を期待してっからな!」

このクソ親父。

アンナとは、お孫さんを作れません。

そのあと、母さんから事を聞くと。

どうやら親父は、普段髪を切らないらしい。

ヒーロー業が忙しく。金もないため。

長い髪は放置して、ああなったようだ。

そして、もう一つ。

夫婦の間にルールがあるようで、母さん以外の容師には、髪を切らせないそうだ。

だから、たまに帰って來た時。

母さんがしっかり短く整えるのだとか。

でも、また帰ってくるころには、肩までびているだろう。

変わった夫婦だな。

部屋に戻り、著いで、部屋著に著替える。

パソコンを起し、今日収穫した和服アンナの寫真を整理する。

「またフォルダが、一つ増えてしまったな……」

これで脳における「あ~れ~」劇場が楽しめるというものだ。

そう思うと、笑いが止まらない。

鼻息を荒くしながら、モニターを眺めていると、機の上に置いていたスマホが鳴り始める。

相手がアンナだと思い込んでいた俺は、名前も確認せず、電話に出る。

「もしもし? アンナか? 今日は楽しかったな」

『……』

ん? どうしたんだ。黙り込んでいる。

「おい、アンナ。どうした? やはりを冷やしたのか?」

を冷やしたですって……?』

普段、優しく話してくれる、らしいアンナの聲ではなかった。

今にも凍てついてしまいそうな、冷えきった聲。

「え……アンナじゃないのか?」

恐る恐る、スマホを耳から離し、畫面を確認したら。

著信名はマリアだった。

気がついた時には、もう既に遅かった。

を冷やしたって……タクト。あなた、まさか元旦から、ラブホテルへ行っていたの!?』

酷い誤解をされてしまったようだ。

「ち、違うぞ! 斷じて、そんなことはしていない! その……アンナとは、初詣に行っていただけだ」

『初詣ですって? どうせ、あのブリブリアンナだから、出度の高いミニスカとかで行ったんでしょ?』

アンナに対するイメージって、そんなにアホっぽいの?

ちゃんと、和服を著ていたけどなぁ……。

「と、ところでマリア。一、何の用だ?」

俺がそう問うと、彼は怒りをわにする。

『なにがですって!? それは、タクト。あなたがやった大罪のことに決まってるでしょ!』

隨分、興しているようだ。聲が震えている。

「え? 俺がマリアに? なにかしたのか?」

『とぼけないで、ちょうだい!』

「いや……本當に言っている意味が、わからないのだが」

マリアの怒っている理由がわからないので、謝罪するにもできない。

その態度が、更に彼を興させてしまう。

『まだわからないの!? あなた、去年ラブホテルに2回も行ったそうじゃない!?』

「え!? なんで……そのことを」

『全部、タクトの小説に書いてあったわよ! 忘れたの!?』

「あ……」

ヤベッ、去年に同時発売された”気にヤン”の2巻と3巻のことだ。

3巻はただの腐子がり上がるだけだから、放っておいて……。

問題は、2巻だ。

2巻の容は、サブヒロインである赤坂 ひなたをメインキャラとして、登場させた。

見せ場として俺が、三ツ橋高校の福間 相馬から、彼を助け出し。

事故とはいえ、ラブホテルにるというシーンがある。

まあ、ラストにアンナと一緒にコスプレパーティーをするのだが……。

「その、あれはちょっと々あってだな……」

『タクト。言ったわよね? ホテルでそういうこと、したことはないって。あれは噓だったの!?』

これは、しくじった……。

作品をリアルに仕上げるため、起きた出來事を細かく書いたつもりだ。

しかし、それが墓を掘ってしまうとはな。

だが、俺はひなたやアンナと、大人の関係に至っていない。

あくまでも、ラブホテルへっただけだ。

だって、まだ貞だもん。おの処は、リキに奪われたけど……。

「待ってくれ、マリア。確かにラブホテルへ行ったことを黙っていたが……何もしていない。ひなたは事故で、アンナとは取材だ」

言っていて、苦しい弁解だと思った。

『ラブホテルへ行って、何もしないカップルなんているの?』

「そ、それは、比較する相手がいないから、分からんが……」

『ふ~ん……』

電話の向こう側で、眉間にしわをよせるマリアの顔が想像できる。

『まあ、いいわ。なにもしていないようだし……』

「そ、そうか! なら今度、どこかへ取材に……」

と言いかけたところで、マリアが俺の聲を遮る。

『そうね。婚約者である私を差し置いて、ラブホテルへ行ったことは許さないわ。だから、記憶の改ざんをしましょう』

「へ?」

『明日、私とラブホテルへ行きましょう♪』

「ウソでしょ……」

もちろん、拒否権はなかった。

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