《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》『第四十九章 どこかで誰かが見ている。』 432 ファッションってのは自由ですから……。

まだ”三が日”の二日目だというのに。

朝早くから、電車に乗りこみ……博多へと向かっている。

今回の目的は、取材なのだろうか?

正直、博多にこだわらなくても、良い場所だ。

だって、ラブホテルだもの。

田舎でもあるだろうに。

去年、俺がひなたやアンナとラブホテルへ行った……と作品に書いてしまったため。

マリアが例の如く。記憶の改ざんを行うため、三度同じホテルへ行くことになった。

なにが楽しくて、貞が3回もラブホテルへ行くんだ……。

そう思いながら博多駅の中央広場へと向かう。

説明は不要だと思うが、一応……黒田節の像で、待ち合わせすることになっている。

ジーパンのポケットから、スマホを取り出すと。

何件かメールがっていた。

ミハイルからだ。

『タクト。お正月を楽しんでる? オレはね、今勉強しているの☆ ほら、もうすぐ一ツ橋高校の期末試験じゃん? だから、返卻されたレポートを頑張って覚えているの☆』

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「ぐっ!?」

その文章を見た瞬間、に激しい痛みを覚える。

罪悪からだ。

アホのミハイルが、お正月だというのに。

期末試験の勉強だと!?

昨年と違い、めっちゃ真面目になってる。

きっと……俺と一緒に卒業したいから、苦手な勉強を頑張っているんだろう。

まあ、天才である俺は、あんな園の試験なんて、予習復習する必要はない。

しかし、そんな頑張っているミハイルを思うと。

今から行く場所に、ためらいをじる。

とりあえず、ミハイルのメールに返信を送ることにした。

『正月から偉いな。そんなに頑張っているなら、今度の試験は良い結果になるかもな』

それに対して、すぐに彼から返事が屆く。

『ホント!? じゃあ、頑張る☆ タクトはなにしているの? 勉強?』

いかん、この回答に失敗すれば、ミハイル……いや、アンナがホテルへ襲撃に來るはずだ。

それだけは阻止せねば……事件になりかねない。

言葉を選び、慎重にメッセージを打ち込む。

『俺はミハイルが作ったお雑煮とおせち料理で、お腹がいっぱいだ。それでちょっと休んでいる』

うむ。これならば、彼が不快な思いをしない。

尚且つ、マリアの存在も隠せる。

『そっか~☆ タクトがひとりで食べちゃったんだぁ☆ じゃあまた來年も作るよ☆ お腹を橫にして休んだ方がいいよ。またね、タクト☆』

「よし……今回は大丈夫だ」

小さく拳を作って、勝利を確信する。

いや、恐怖が薄れたにすぎない。

背後からマリアを刺す……恐れがあったからな。

「ごめんなさい。待たせでしょ?」

視線を上げると、ひとりのが目の前に立っていた。

の長い髪に、寶石のような碧い瞳。

こちらをじっと見つめて、笑みを浮かべる。

待っていた人間が、俺だと分かったからだろう。

「いや、そこまで待ってないさ。マリア」

の名前を口に出すと、嬉しそうにする。

「ふふふ。ごめんなさいね。ちょっと寢ぐせが直らなくて……」

「ほう。俺は別に髪型なんて、気にしないが」

「私が気にするのよ! タクトって本當にデリカシーがないわね!」

笑ったと思ったら、怒ったよ……。

なんで?

今日のマリアも、ファッションは普段と変わらず。

黒を基調としたシンプルなデザインのワンピースを著ている。

元には、白い大きなリボン。

細くて長い腳は、白のタイツで覆われている。

まあ真冬なので、上著として、ファーコートを羽織っているが。

しかし、あれだな。

アンナとは違い、なんというか合いがシンプルで、つまらない。

それでいて、毎度同じ服を著ているような……。

俺はその疑問をマリアにぶつけてみた。

「なあ……気になることがあるのだが、聞いてもいいか?」

「え? タクトが私に質問なんて……珍しいわね。良いわよ、なんでも聞いて♪」

そう言って、を張るマリア。

ノーブラだから、トップがけてしまいそう。

「あのさ。お前ってなんで毎回、同じ服を著ているんだ? 1著しか持ってないのか?」

俺がそう言った瞬間、整った彼の顔がグシャっと歪む。

「はぁっ!? 私がそんな貧乏に見えるの!? 失禮ね! こう見えて、アパレルブランドの社長よ! ファッションには気を使っているわ!」

また怒られてしまった。

「しかしだな……俺から見るに、同じのワンピースを、著ているように見えるのだが」

「それは、タクトの目が腐っているからよ! 分かる人には分かるの!」

確かに俺は、ファッションには疎い。

でも、素人から見ても、同じ服にしか見えない。

「じゃあ……同じように見えても、全然違うファッションなのか?」

「そうよ! こう見えて、私は自分でデザインした服を著ているの。モデルもやっているわ。だから宣伝も兼ねて人気の商品を、自ら著て歩いて回るのよ」

「つまり、今一番人気な商品だから、著ているということか?」

「ええ。今著ている服も全て、売れているベスト5から決めたわ!」

「なるほどな……」

でも、その考えだと。

売れ行きによって、自のコーディネートがランキングで固定されるんだろ?

じゃあ、変がない限り、同じ服じゃんか。

なんか前にもこんな話を、誰かとしたような……。

あ、退學した制服を大量に購し、著回している北神 ほのかと話した時か。

俺は年がら年中、タケノブルーだけ著ているから、関係ないね。

このブランドだけで良し。俺はマリアと違う。

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