《骸骨魔師のプレイ日記》エリステル分析會議

ログインしました。今日はルビーが撮影した濁白(クラウディ)墮(フォールン)熾天使(セラフィム)のエリステルの畫像を見ながら分析をすることになっている。集合場所は『エビタイ』にあるコンラート所有の倉庫であった。

ここにいるのは深淵探索組だけでなく、海巨人(オケアス)との流を行っている者達も含めた希者全員である。別け隔てなく集めた理由は二つ。一つは様々な視點から分析することで攻略の糸口を探り出すため。もう一つは海に出ている彼らもまたエリステル戦には參戦するからだ。

エリステル戦は我々の戦力を結集させなければ勝つことなど出來ない。昨日のにルビーから見せられた畫像を見て私はそう確信していて、それを周知してもらうために今日集まってもらったのだ。

「あら、アタシ達が最後かしら?」

「遅いよママぁ〜…痛ぇ!?」

「えっ、気持ち悪い…」

「ジョークなんだから、ガチトーンで言うのは止めてやれ。確かにし…いや、結構アレだったが」

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遅刻はしていないが最も遅參したのはママとアマハを始めとした彼の仲間達だった。それを『ザ☆王國』のタマがからかい、隣にいたコンベアが頭を毆って黙らせる。あのコンビのやり取りはいつも通りではあった。

ただ、ママの言い方が悪かったらしい。私の隣にいるアイリスは心底気持ちが悪いのか、手をくねらせて嫌悪を示している。私は苦笑しながら彼を宥めた。

「さて、と。全員が揃ったな。わかっているとは思うが、一応口に出しておく。これから見せるのは戦う強敵、濁白(クラウディ)墮(フォールン)熾天使(セラフィム)のエリステルの畫像だ。これを見て自由に議論をしてもらいたい。ルビー?」

「はいはーい。じゃあ送信するね」

ルビーは參加者全員へとエリステルの畫像を添付したメッセージを送信する。私は既にけ取っているが、メニュー畫面を開いてその畫像を改めて広げた。

まず最初の畫像は深淵の海に浮かぶ小さな小島と、その上にある灰の球だ。小島の大きさは実際に見たルビー曰く直徑で十メートルほどらしく、球はこの小島とほぼ同じ大きさだった。

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次の畫像はより拡大された灰の球であった。ここまで拡大されると球の表面がよく見える。それによると灰というよりも、白と黒の二の羽を持つ翼が折りたたまれたモノであるらしい。これがエリステルの翼なのは言うまでもない。

まず間違いなく元々は純白だったのだろう。深淵の影響で黒く染まった部分と元々の白が混在する翼…『濁った白』とは良く言ったものだ。

三枚目の畫像はこの灰の翼の一部が広げられた瞬間である。この畫像で広げられたのは一対二枚の翼だけだ。翼を広げた時の全長は二十メートルはあるだろうか。個としての大きさで匹敵する者は魔王國のプレイヤーに一人も存在しないだろう。

翼によって側が隠れていた訳だが、この一対二枚が広げられても殘りの部分は他の翼によって隠されている。全容が明らかになった訳ではなかった。

ただし、これだけでも分かることはある。まず広げられたことで出したのはエリステルの腕だった。以前に戦闘した天使は背中から翼が生えた人型だったので、腕は二本…だと思っていた。しかし、実際はそうではない。エリステルには三本の腕が生えているのである。まさかの奇數なのだ。

正確には右腕が一本に左腕が二本。どうやら元からあったのは二本で、二本目の左腕は深淵の影響で生えたらしい。どうしてそんなことがわかるのかと言うと、一本だけ明らかに形狀が違うからだ。

三本の、二本は人間などの腕に酷似している。翼と同じく元々は純白だったのだろう腕は指先から肘までは真っ黒に染まっていて、二の腕も黒の斑點がまばらに散らばっていた。形狀はそのままでも深淵の影響はしっかりと見て取れた。

そして二本目の左腕だが、まず特筆するべきはその長さであろう。他の二本に比べて明らかに長く、それでいて太い。長さは二倍ほどあり、その原因は肘が三つもあることだ。この関節の多さは可域の広さに直結しているので、あの腕は複雑怪奇なきをしそうだ。

太さなど三倍近くあるだろう。全は黒でビッシリと覆われていることを考慮しても太すぎる。外見からの勝手なイメージだが、他の二本とは比べにならないくらいに力強い印象をけた。

指先には短剣のめいた鋭利な爪が生えている。この三本目の腕だけでも立派な武と言えるだろう。戦闘になれば注意を払わなければならないのは言うまでもない。

そして四枚目にして最後の畫像はエリステルの右腕が高速でブレた瞬間だった。この直後、ルビーの分と七甲の召喚獣が消されている。十中八九攻撃されたのだろうが、殘念ながら何をされたのか全くわからない。常人の視力ではどうしようもない何かを行えることだけはわかった。

「ボクは連続で撮ってるから、場面の中間の畫像もあるよ。撮影しに行った時の流れがわかりやすいように四つにまとめただけだから、今から時系列順に並べた畫像を送るね」

この四枚はルビーの撮影した畫像から厳選したモノだ。彼は一分ほど観察しており、その間は可能な限り撮影し続けていたのである。

その中で四つの要素、すなわち『エリステルが小島の上に浮かんでいること』、『普段は丸めている複數枚の翼とそれを広げた時の大きさ』、『三本ある腕の形狀』、そして『目で追うことも難しい攻撃手段を持つこと』が最もわかりやすい畫像を選んだのだ。細かく検証するためには他の畫像も必要である。ルビーは全員に全ての畫像をまとめて送信した。

さて、ここからが検証の始まりだ。正直に言って、わかることはないだろう。それでもわかることは必ずあるはずだ。憶測の域を出ないかもしれないが、最悪を想定しながら考察するのは実際に戦う時に役立つはずだ。

「発言は自由だ。活発に議論しよう」

「んじゃあ最初に言わせてもらうがよ。どうやって殺られたのかもわかんねぇなら、回避なんて悠長なことは言ってらんねぇんじゃねぇかな」

「なるほど。攻撃をけ止める盾役は重要になりそうだ」

目にも止まらぬ速さでの攻撃手段を持つのなら、防力と力でけ切るしかない。なくとも対処法を確立させるまではそうしなければ被害が拡大する一方だろう。鉄壁の防は必須だろう。

そうなると各クランの盾役には集まって防する練習をしてもらう必要がある。ウチで防特化と言うとエイジしかいない。個人の戦闘力が高過ぎる二人の戦闘狂がいる弊害かもしれないな。

「熾天使(セラフィム)って聞いたからちょっと調べたんだけど、三対六枚の翼を持つらしいの。この娘もそうなのかしら?」

「そいつぁ早合點でしょうねぇ。腕が増えてんですぜ?翼も増えてるかもしれやせんし、逆に減ってるかもしれやせん」

「どっちにしても大きいよね〜。モフモフしてそう。毟ってクッションにしたいや」

熾天使(セラフィム)ウロコスキーは現狀で翼の數を決め付けることに慎重な姿勢を見せている。腕の長さがし大柄な人間程度ということもあり、翼はあまりにも大きく、遠近がおかしくなりそうだ。

圧倒的な格上ということもあり、翼で毆られただけでも私なら死ぬ確信がある。大きさはそれだけで武ということもあり、最初から數を決め付けていては危険だということだろう。

タマはその場でゴロゴロしながら畫像を眺めて翼の羽しがっている。自由過ぎないか?まあ、マイペースでもやる時はやる男だと知っているのでとやかく言うつもりはないのだが、隣のアイリスは深いため息を吐いていた。

「アタシはこの島そのものが気になるね」

「それは何故?」

「深淵の島ってどこも跡かなんかだって聞いてるよ。でもこれって跡っていうか…」

「…骨塚か何かに見えるな」

アンが注目したのはエリステルが浮かんでいる小島そのものだった。『蒼鱗海賊団』の船長である彼は深淵ではなく海巨人(オケアス)との流組だが、私達が彼らの話を聞いているように彼らも私達の話を聞いている。それで深淵にある島は大が古代の跡だと知っているのだ。

アンに指摘されて小島が寫っている複數の畫像を集め、拡大してよく観察してみる。すると彼の言う通り小島の地上部分には跡らしい部分はない。その代わりとばかりに小島の地表を埋め盡くしているの無數の骨であった。

海中に跡があるのかもしれないが、地表部分を覆い盡くしながらこんもりと盛り上がっていることから考えて凄まじい量の骨があるはずだ。深淵の魔達の骨なのだろうか。骨を集めるなど偏執的である。

実際に遭遇してしまった経験があるゴゥ殿は、エリステルには嗜趣味があると言っていた。嗜趣味に加えて骨を収集する趣味まであるとしたら最悪だ。早めに倒して置かなければ、私もコレクションにされてしまいそうだ。

「気味が悪いわね」

「獲の骨を殘す意味はわかんねぇが、あんまり気にする必要はねぇだろ?」

「アタシの勘でしかないんだけどね、この骨の下に何かあるんじゃないかい?骨だけで島が出來てるってのよりも、ベースに跡があってその上に骨が積み重なっているんじゃないのかねぇ」

コレクション云々は冗談として、骨の下か。調べる価値はありそうだ。ゴゥ殿が遭遇した際、相を変えて逃げたと聞く。それは逆説的に、相を変えるほどに重要な何かがあると言うこと。調べ上げれば弱點に繋がる可能もある調べる価値はありそうだ。

私達はそれから議論を重ねたが、すればするほど報不足であることを痛することになった。だが、これで全てのクランがエリステルの兇悪さを理解したし、何を調べるべきかの方針も決めることが出來た。これだけでも今日の場を設けたことは功だったと言える。

これからはルビー以外の斥候職プレイヤーも加わって、本格的にエリステルを調べていくことになるだろう。薄皮を剝くようにしずつ本質を詳らかにし、確実に葬ってやろうではないか!

次回は7月5日に投稿予定です。

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