《ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~》第二百三十六話 魔王軍の回答

七月十日にロメリア戦記のコミックス第三巻が発売予定です。

そして七月十九日に小説版ロメリア戦記外伝が電子書籍で発売されます

小説に関しては、完全書下ろしの未発表作品です

なろう版だと三十八話と三十九話の間の話となります

第二百三十六話

顔を赤らめたレーリアが、終始笑顔のゼファーと歩調を合わせて軍議が行われるヒルド砦の館にった。

館にると、中にはすでに半數以上が集まっていた。

上座に居るのは、金の髪に日に焼けたのヒューリオン王國のヒュースだった。彼の頭上には寶石があしらわれた王冠が掲げられ、肩には天鵞絨のガウンがかけられている。

ヒューリオン王國は太王と稱された第十四代ヒューリオン王が崩し、ヒュース王子がその後を継いて十五代目の王となった。

ヒューリオン王國では即位の際にかつての名を捨て、ヒューリオンの名を継ぐ慣しとなっている。だがまだ正式な戴冠式を経ていない為、ヒューリオンを名乗ることは出來ないらしい。よって王冠をかぶっていてもヒュース王子と呼ぶことになっている。

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ヒュースの前では、白いを著たライオネル王國のロメリアが立ち、何かを話していた。ロメリアの背後には、空のように青い鎧を著た騎士が、直立不の姿勢を保っている。

彼こそはロメリア二十騎士の中でも、最強の呼び聲高い風の騎士レイヴァンだ。

魔法で空を飛ぶことからついた由來だが、現在では翼竜を駆り、自在に空を飛ぶ竜騎士となっている。

ヒュースとロメリアは、何かを熱心に話していた。聞こえてくる話を総合すると、どうやらライオネル王國の補給部隊が數日後に到著予定らしい。

連合軍と魔王軍は陣地を取ったり取られたりしているため、全的に資が不足している。補給が屆くのはありがたいと言えるだろう。

「それではレーリア様。失禮します」

側にいたゼファーが一禮し、自分の席に向かっていく。レーリアは宮廷作法に則った優雅な仕草で例を返す。レーリアの隣ではマイスが気安く手を振り、ゼファーに別れを告げていた。

マイスの気安さは咎めず、レーリアは視線をゼファーから部屋に戻す。まだ集まっていない人として、ヘイレント王國のヘレンとガンブ將軍、そしてフルグスク帝國のグーデリア皇がまだ來ていなかった。

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一方でホヴォス連邦のディモス將軍は、すでに來ており席についている。

レーリアはディモス將軍とは視線を合わせず、その隣に座った。

ディモス將軍は祖國を同じくし、本來は味方である。しかしディモス將軍はレーリアを見捨てようとしたことがあった。自國の將軍だが、とても味方とは思えず會話はしない。

ディモス將軍と目を合わせないため視線を彷徨わせていると、白髪の老人と緑のドレスを著た。そして黒髪の青年がやって來る。

白髪に長い髭を蓄えた老人は、ヘイレント王國のガンブ將軍だ。緑のドレスを著たは大きな目がらしい、ヘイレント王國の王ヘレン。背後に侍るのは騎士ベインズだ。

レーリアがヘレンを見ると、ヘレンもこちらに気づき、手を小さく掲げて挨拶をする。レーリアも會釈をして頷いた。

レーリアとヘレンは、親友と言ってもいい間柄だ。生死を何度も共にし、固い絆で結ばれていると信じている。

「ヘレン様。今日も怪我人の治療をされていたのですか?」

レーリアは席に著くヘレンの髪が、ほんのれていることに気づいた。

ヘレンは癒し手として、怪我人の治療に當たっている。髪形がれていることから、おそらく先ほどまで治療を行なっていたのだろう。

「ほんのし、癒し手の皆様のお手伝いを」

ヘレンははにかみながら答えたが、それは控えめすぎる表現というものだった。

ヘレンは現在、癒し手達を纏める立場となっていた。王自ら怪我人を癒して回るその姿は、まさに聖典に語られる聖人の行いそのものだった。

「あまりを詰めすぎないようにね」

レーリアはやんわりと注意した。

ヘレンはのようならしい顔をしているが、面には強い芯がある。それはいいことだが、怪我人を前にすれば張り切り過ぎてしまうところがある。

「大丈夫です。手伝ってくれるベインズもいますし」

頷くヘレンの顔はしやつれているものの、目には輝きがあった。を壊さないか心配だが、親友が頑張っているのだから、今は見守るしかない。

ロメリアとヒュースとの話合いが終わり、ロメリアが自の席に座る。するとその時、銀の髪に深い青のドレスをに纏ったが、二人の侍従を伴いやってきた。フルグスク帝國の皇グーデリアだ。

「すまぬ。遅れたな」

大國の皇は席につきながら謝罪した。しかし遅れるのも無理はない。グーデリアは勝ち取ったガンガルガ要塞を防衛するため、月騎士団と共に要塞の守りについている。ヒルド砦の部にいたレーリア達より遅れるのは仕方がない。

「それで急な軍議を開くこととなったが、魔王軍から何かを言ってきたのか?」

グーデリアが長いまつの下、銀の瞳をロメリアに向ける。視線をけて、亜麻の髪をしたロメリアは細い顎を引いた。

「はい。魔王軍と戦時條約を結ぶ件についてですが、魔王軍は前向きに考えるという回答を得ました」

ロメリアが渉の首尾を話す。

これはレーリアには意外だった。あの魔王軍が、話し合いに応じるとは思えなかったからだ。しかし軍議の席につくガンブ將軍やディモス將軍。それにグーデリアやゼファーも顔で頷いていた。戦場を知る者ほど、當然と言った顔をしていた。

敵であっても話し合い、妥協すべきところは妥協するのだ。レーリアにとっては心するやら呆れるやらであった。

「それで、ディナビア半島に殘る魔族と、囚われて奴隷となった人々を換するという話はどうなった?」

グーデリアが質の聲で尋ねる。ガンブ將軍やレーリアの隣にいるディモス將軍も、答えを急かすようにロメリアに視線を送る。

ガンガルガ要塞から北に位置するディナビア半島には、まだ多くの魔族が殘っている。要塞が連合軍の手に落ちた今、半島に殘された魔族は逃げられない。ロメリアは殘された魔族をローバーンへと逃す代わりに、ローバーンに囚われたままとなっている人々の解放を要求するべきだと言い出したのだ。

ロメリアの提案は、軍議でも意見が割れた。魔王軍がそこまで渉に応じるとは、誰も思えなかったからだ。

「その件に関しても、魔王軍は前向きに検討するとのことです」

ロメリアの答えを聞き、ディモス將軍やガンブ將軍がわずかに息をらした。軍議の席からも、張していた空気がわずかに緩んだのをレーリアはじとった。

「ほぉ、魔王軍があの提案を呑みましたか」

「意外でしたな。向こうのは思った以上に厳しいのかもしれませんね」

ガンブ將軍が長い髭をで、ディモス將軍が目を細める。

両將軍は余裕の態度を見せていたが、心では安堵していることは明白だった。

連合軍はガンガルガ要塞を手中に収め、勝利を手にした。しかしその実は苦しく、どの國も多くの兵士を失い疲弊している。ディナビア半島制圧に、これ以上兵士を割きたくなかったのだ。

「この爭いが終わるのならば異議はない。早くこの戦爭を終わらせよう」

グーデリアが、この場にいる全員の心を代弁した。

今回の戦いは、連合軍の圧勝とは言い難かった。優劣の天秤は連合軍と魔王軍の間で何度も傾きを変え、どちらが勝ってもおかしくはなかった。それどころか今にも何かが起こり、勝利の天秤が魔王軍に傾くかもしれない。

「私も話し合いで決著がつくなら、問題はありません」

議長役として席に座るヒュースが靜かに頷く。

「それで、魔王軍からはそれだけですか?」

ヒュースがロメリアを見る。確かにその程度の容なら、別に軍議を開く必要はない。

渉のため、魔王軍は停戦期間の延長を求めてきました。そして渉中、裏切らぬ補償として人質を換し合おうという提案がございました」

ロメリアの言葉に、その場にいた全員が押し黙った。

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