一度だけ地震の震度験で味わった震度五強の揺れ。それが唐突に起こる。

それなのに全に巡る衝撃は勢いよく壁にぶつかった時の様な強さ。それを前面、左右、頭上、背後という並びで強さをじる。

その衝撃のせいなのか熱中癥でダウンした時の様に気分も悪くなる。おまけに浮遊まである。

気持ちが悪いっ。意識が、飛びそうだ……

荒ぶる『天眼』には何かがく姿は観えるが、何かまでは分からない。

それが何か不明でいると視界に何かが映ったかと思えばさらにに衝撃をける。

「ヴォアッ　︎」

その衝撃により口から何かが出た。

なんだ……何が、起きた……んだ……

口からは鉄の味とイガイガとした覚、それと苦みがする。

するとから何かを抜けたようにが目の前に引かれる。

バランスが……マズい……勢を、整えな、いと……

しかし上手くに力がらず、それ所か腳すらかせない。

必然、は勢いと重力に従って地面へと持って行かれる。

馬車の床にぶつかるはずが、何故か地面とキスをすることになる。

の前面に地面に打ちつけた衝撃が走る。

「ぶぅっ　︎」

けない聲をらす。

痛みは……鈍いな。軽傷かな……？

いや、全が痛すぎて全く痛みをじていないだけか。

「（あー、このじしだけ憶えがある。あの子を助けた……異世界（こっち）に來る要因になった時と同じだ……）」

年を助け、ダンプカーに轢かれた時の衝撃と痛み。地面に打ちつけられ、立ち上がろうにもには力がらない全の力。

そして意識が薄れていく覚。

全てに憶えがあった。

「（死ぬ……の、か？）」

に寒さをじ始める。

「（また……死ぬのか？）」

見えていた世界のが消え、視界が黒に覆われて行く。

それと同時に夢のように流れる地球（あっち）での日々。

「（また、蘇れるかな？）」

決して裕福とは呼べない家庭で、早くに父を亡くし母や家計のためにバイトの毎日。

そして母を亡くし親戚に預けられたがやや余裕はあれど変わらずのバイトの毎日。

友人と遊ぶ時間を取る事は出來ず、學校で話す程度。

そんな自他共に幸せとは呼べない人生を見せられる。

強い睡魔に意識が吸い込まれていく。

「（置いて……逝く…………皆を……）」

しかし辛うじて殘った意識が現実を見せてくる。

否、脳が、が、本能が、魂が見せてくる。

異世界（こっち）に來てから歩み始めた新たな人生を。

東に親切にしてくれたエネリアの街の住人たち。ダンジョンでの戦闘。

王様が神様と知って帰るとグラルドルフとの戦闘。

彼からの依頼をけアルタイルへ行き、髪飾りを見つけて、ステンチスライムの激臭に悩まされて、水浴びをしていた所を覗いてしまい毆られたこと。

王様から家をもらったこと。

頼まれてアンタレス王國へ行ったら男に追われていて、追いかけていたら拐されて、貴族の家に一人で乗り込んだら腕が発したこと。

今度はギルドマスターから頼まれて巨獣のエルダースノウマンとの戦闘。

アルタイルで行われた大會に出場して負けたこと。

発期を知らなくて大変な目に遭ったこと。

何故か金髪のに命を狙われ殺されかけて、指名手配されて、サキュバスと戦闘になって、アンタレス王國へ行ってデタラメな魔に大変な目に遭った。

毒矢で倒れて、治らない魔の攻撃をけて、ダンジョンへ向かうはずが変な連中が來て──

「…………」

そこにはおらず、聴こえないはずの聲が聞こえる。

「東」

優しく。

「アズ、マ」

弱く。

「アズマ！」

力強く。

「アズマさん」

靜かに。

「アズマ」

はっきりと。

彼の名を呼ぶ大切な者たちかのじょらの聲。

「（──ダメに）」

重たい瞼を上げ、力がらなかったに無理矢理にでも力をれる。

「ダメに決ずぁうぇにぎまってうぁっでるぶだぶぁろ(ぼぉ）！」

重く、痛むを起こす。