《ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~》第二百三十七話 レーリアの妄想
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第二百三十七話
魔王軍と人質の換をする。ロメリアの言葉に、軍議に參加する一堂が押し黙った。
あの蠻族の如き魔王軍に人質として赴く。下手をすれば生きては帰れぬかもしれなかった。誰もが手を上げたくはないだろう。だが分や位が低すぎる者では、魔王軍も信用しない。人質として出すからにはそれなりの人。この軍議に參加しているほどの者でなければいけなかった。
レーリアは軍議に出席する面々の顔を見た。誰もが眉間に皺を寄せて目を伏せている。
誰も言葉を発せぬほど悩んでいた。しかしレーリアからしてみれば、誰が行くかなど初めから決まっているような者だった。
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消去法で考えれば、ヒュースはあり得ない。ヒューリオン王國は先王が崩したばかりであり、政権は不安定だ。それにヒューリオン王國はこの連合の盟主でもある。ヒュースがこの場にいなければ、連合軍はまとまれない。
次にフルグスク帝國の皇、グーデリアもあり得ない。大國の皇であること以上に、彼は強力な魔法の使い手だ。グーデリアが月騎士団と共にガンガルガ要塞の守りにつけば、その守りは鉄壁となる。防衛の要であるグーデリアもかせない。
當然だがライオネル王國のロメリアもあり得ない。彼はこの戦爭における勝利の立役者、魔王軍にとっては最優先で殺したい相手だ。それにロメリアは魔王ゼルギスを討った英雄の一人でもある。
魔王軍を渉相手として信じるとしても、末端の兵士が暴走して仇討ちに走る可能はある。
あとはガンブ將軍やディモス將軍だが、両將軍がいなければ両國の兵士達をかせないため、これも人質としては送れない。こうなると、人質として送れる人間は限られてくる。
レーリアはハメイル王國のゼファーを見た。
軍議に參列しているゼファーは、顔を歪めて苦悩の表を見せていた。彼は亡き父ゼブル將軍に代わり、ハメイル王國の代表となっている。
將軍の跡を継いだばかりのゼファーも、人質としてこの場を離れるわけにはいかない。となると……。
レーリアはガンブ將軍の隣に座る、ヘイレント王國の王ヘレンに目を向けた。
ヘレンのらしい顔は、張に引き締まり、大きな瞳は伏せられている。しかし彼は迷っているのではない。今まさに覚悟を決めようとしているのだ。
あどけなさが殘る小さなが、キュッと固く結ばれたかと思うとヘレンは目を見開いた。
「私――」
「私が行きます」
ヘレンの聲に被せる形で、レーリアは発言した。
「レーリア様。貴方が?」
「はい。ヒュース様。立派に人質の役目を果たしてみせます」
目を見開くヒュースに対し、レーリアはゆっくりと顎を引いた。
「ちょ、ちょっと待ってレーリア。人質なら私が行きます」
ヘレンが席を立ちながら、右手を自分のに當てる。やはりヘレンは、自分が行く決意を固めていたのだ。しかしそうはいかない。
「貴方が行ったら、殘された怪我人はどうなるの?」
レーリアが指摘すると、ヘレンはわずかにを引いて口を閉ざした。
自ら人質となるヘレンは気高いが、彼には彼の役割がある。ヘレンが殘れば助かる命もあるのだ。人質になっている場合ではない。
レーリアが思うに、人質なんてものは分だけは高く、しかし何の取り柄もない人間がいくべきなのだ。つまり、自分のような人間だ。
「人質として、私以上の適任はいないでしょう」
「しかし、レーリア様」
レーリアが名乗りを上げると、ロメリアが苦しげな眼差しを向ける。人質の役目を押し付けることに、罪悪があるのだろう。
「やらせてください、ロメリア様。我がホヴォス連邦は失點があります。しでも汚名を返上したい」
レーリアは笑って答えた。
ホヴォス連邦にはスート大橋を破し、連合軍を危険に曬した汚點がある。連合軍に貢獻しなければ立場がない。
「しかしレーリア様。危険であるぞ」
「覚悟の上です。グーデリア様」
グーデリアの質の聲に対して、レーリアは決意を込めて頷いた。グーデリアはレーリアの目を覗き込むように見た後、視線をヒュースに向けて頷く。
異議がないのであればとヒュースが頷きかけたその時、これまで聲を発さなかったゼファーが口を開いた。
「お待ちください。私は反対です」
「ちょ、何を言い出すのよ! ゼファー!」
思わぬところからの反対に、レーリアは目を剝いた。しかしゼファーはまるで怯まず、聲を上げる。
「人質として一人を差し出すなど、連合軍の名折れです」
ゼファーの言葉に、レーリアは二の句を告げなかった。軍議に列席する男陣もこれに唸る。
この後に及んで何をと、レーリアは目を逆立てた。しかし仕方がないことだと怒りを呑み込んだ。
戦爭は男達の舞臺だ。レーリアから見れば実にくだらないが、面や意地が時には生死や効率よりも優先される。それに魔王軍に連合軍が弱いと侮られれば、かえって敵を調子付かせるかもしれない。
「じゃぁ、どうするっていうのよ!」
レーリアは柳眉を逆立ててゼファーを睨んだ。
「私も一緒に行きます」
「え?」
「私もレーリア様と共に、人質となりましょう」
ゼファーの思わぬ答えに、その場にいた全員が目を丸くする。
「私だけでは人質としての格が足りぬでしょう。ですが二人いれば魔王軍も納得するはず」
「それは……確かにそうかもな」
ヒュースが顎を引く。一方レーリアは、一緒に行くと言うゼファーの言葉で思考の全てが埋まり、まともに考えることが出來なくなった。だがすぐに邪念を振り払いゼファーを見る。
「待って。貴方が人質になったら、誰がハメイル王國を率いるのよ!」
「それはご安心を。軍の指揮は、ここにいるライセルがいれば十分です」
ゼファーは背後に控える、隻眼の騎士に目を向ける。確かにゼブル將軍の懐刀として仕えていたライセルがいれば、ハメイル王國の統率が取れるかもしれない。
レーリアは、ゼファーの案を否定する材料を探した。しかしどれだけ考えても、何も思いつかなかった。他の出席者も誰も反対しない。このままだと二人で人質になってしまう。
そこまで考えた時、レーリアは二人で人質となった時のことを想像した。
人質となるのだから、使用人や護衛はごく數に限られる。敵地にいるのだから仕事はなく、気ままに出歩くことも出來ない。必然、ゼファーと一緒にいる時間が長くなる。つまり……。
レーリアの思考は、人質となって過ごす妄想に囚われた。
「では、人質はレーリア様とゼファー様が二人でいくと言うことでよろしいですかな?」
ヒュースの言葉に、グーデリアやディモス將軍にガンブ將軍、ロメリアも頷く。レーリアが妄想から卻して正気を取り戻した頃には、全てが決定されていた。
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