《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》

宗像先生はああ言ってたけど……。

ミハイルが、教室の扉を開くことはなかった。

朝のホームルームが始まり、今日が期末試験だと先生が説明を始める。

しかし俺はそんなこと、どうでも良かった。

彼が今どこでなにをやっているか……そればかり考えていた。

上の空で、試験をける。

天才の俺からすれば、こんな園のテストなど、お茶の子さいさい……。

と思って數時間、試験をけていると。宗像先生に呼び出されてしまう。

「おい。新宮! ちょっと來い」

休み時間にったところで、廊下へ連れ出された。

「なんですか……」

かすれた聲で答える。

「何って……お前、真面目に試験をけているのか?」

けてますけど。何か問題でも?」

俺がそう言うと、宗像先生は頭を抱えて、ため息をつく。

「お前なぁ……他の先生からも、苦が相次いでいるんだよ。この答案用紙、ふざけているのか?」

「え……?」

「前期に満點を取った新宮とは、思えん回答だよ」

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宗像先生が俺の顔面に突き付けたのは、先ほどまで書いていた答案用紙たち。

英語、國語、現代社會。

しかし、俺の書いた答えは、教科関係なく、同じことばかりを書いていた。

『ミハイル。ミハイル。ミハイル……』

自分の名前まで、古賀 ミハイルと書くほど、重癥だった。

「これを、俺が書いたんですか?」

「當たり前だろ! 新宮、調が悪いなら、別日に試験をけるか? 今日のお前はおかしいぞ! 期待のルーキーなのに!」

「すみません……」

いつもなら言い返すところだが、そんな元気も出ない。

結局、そんな調子で試験をけていたから、全ての答案用紙に、ミハイルという名前を書きまくったらしい。

俺としては、無意識のうちにやっていたことだから、悪気はない。

気がつけば、晝休みにった。

午前の試験が終わったことにより、みんなホッとしたようで、顔が明るくなっていた。

あとは育を2時間ければ、単位が貰えるから。

近くにいたリキと、腐子のほのかが談笑していた。

「去年のクリスマス。マジで楽しかったよね。ほのかちゃん」

「うん。また來年も一緒に過ごそうよ~ リキくんって、ノンケぽいのに。男レイヤーにモテるからさ~ 私的にもラッキーみたいな♪」

「そんな褒められると、恥ずかしいよぉ」

褒めてないだろ……。

でも、なんか良いじになっていて、安心したよ。

理由がどうあれ、このまま行けば。二人は付き合えるかもしれん。

みんな教室の中で、弁當を広げて、晝食を楽しむ。

去年より、生徒たちが仲良さげにじた。

學して1年も経つのだから、コミュニティが出來上がって、當然か。

突然、教室の扉が勢いよく開いた。

僅かな希に、って來る人間を待っていると……。

「おっはにょ~♪」

アホそうな聲が、教室中に響き渡る。すぐに誰か判明した。

ミハイルの馴染でもあり、ギャルのここあ。

「もうお晝ですよ。ぶひっ、ここあさん」

と金魚のフンみたいにくっつくのは豚……じゃなかった。

俺の専屬絵師、トマトさんだ。

こいつらも見ない間に、偉く距離まっているな。

「てかさ。冬休みに行った溫泉、超楽しかったしょ♪」

え……ウソでしょ?

ここあがトマトさんと溫泉旅行に。

「た、楽しかったでしゅ! 家族風呂でしたから、水著で一緒にれましたもんねぇ」

「ねぇ~♪ 夜もバイキングをたくさん食べて、リフレッシュできたし~ ベッドもふかふかでぇ」

まさかの一泊旅行かよ。

こいつら、もうヤッちゃったのかな?

たった一か月で、こんなにも仲良くなるもんなのか。

俺だけが置いてかれたような、気がする……。

両カップルが、お互いのイチャ自慢をし始めた。俺は蚊帳の外。

というか、たぶんだけど。視界にっていない。

ミハイルという存在が、隣りにいないせいだろう。

空気のような扱いだ。

耐えきれなくなった俺は、教室を出て廊下を歩くことにした。

別に意味はない。

ただ、ひとりになりたかった。

あいつらがカップルとして、仲良くなったことに対して。

嫉妬なんて気持ちは、抱いていない。

むしろ、喜ばしいことだとじている。

一応、ダチだから。

それよりもミハイルが、この場にいないことが何よりも辛い。

まさかと思うが、あの報道により、自殺なんてしないよな?

廊下の床は寒さにより、上靴を履いていても、足もとが冷えきってしまう。

ふと窓を開けて、外の景を眺める。

目の前の駐車場を、一人の年が歩いていた。

こんな中途半端な時間に、誰だろう?

全日制コースの連中は、制服を著ているから、一発で分かる。

しかし、この年は違う。私服だ。

ショートダウンを羽織って、デニムのショートパンツを履いている。

フードで頭を隠しているため、顔は確認できない。

気がつけば、一ツ橋高校の口へと向かっていく。

なるほど……俺たちと同じ通信制コースのヤンキーか。

試験だってのに、やる気がないやつだ。

全くヤンキーという生きは、理解できないな。

単位がしいんじゃないのか?

階段を上る音が聞こえてきた。

きっと、先ほどのヤンキーだろう。

二階に上がって、教室へ向かってくるだろう……そう思っていたら、違った。

宗像先生がいる事務所の方から、バタンという音がした。

ひょっとして、今の時期だから新年度の學希者かな?

一人で妄想を膨らませていると。

事務所から、び聲が聞こえてきた。

宗像先生の聲だ。

「おい、待て! 話は終わってないぞ! 戻ってこい!」

普段からテキトーな先生にしては、えらく必死な聲だとじた。

それだけ、相手を引き留めたいのだろう。

気になった俺は、事務所の方へと足を進める。

すると、一人の年が、階段を駆け下りていく。

先ほどとは違い、フードを外している。

だから橫顔を、確認することが出來た。

寶石のようなしい瞳。エメラルドグリーンには、涙を浮かべている。

小さなをグッとかみしめ、何かを我慢しているように見えた。

の髪は、首元でバッサリ切られたハンサムショート。

前髪は左右に分けている。

ずっと一緒にいたから、その違いが分からなかった。

あいつは、いつもポニーテールを揺らせて、元気な笑顔を見せてくれる……。

そんな……かけがえのない存在。

「み、ミハイル!?」

やっと正が分かったところで、俺はその名をんでいた。

彼は一瞬だけ、きを止めたが、振り返ることもなく。

その場から、走り去ってしまう。

「そんな……」

小さくなっていく彼の後ろ姿を、俺はただ見つめることしか、出來なかった。

俺のせいだと、思ったから……。

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