《【書籍化】宮廷魔導師、追放される ~無能だと追い出された最巧の魔導師は、部下を引き連れて冒険者クランを始めるようです~【コミカライズ】》第二の矢

とりあえずミンディの中に大量にあったデザント兵のうち、ざっくり三分の一程度は削ることができた。

『ゾンビあたっく!』は功と言っていいだろう。

ガルネリアによるスケルトン軍のと、それによる戦力の因。

き出した戦力をアルティメット・ゾンビを使いゾンビ化させ、彼我の戦力差をひっくり返す。

作戦の容を伝えられているため、皆は目の前に溢れるゾンビ軍団を見ても顔を変えてはいない。

……いや、よく見ると何人か青くなっているのがいるな。

多分以前の魔の軍勢(スタンピード)のことを思い出しているんだろう。

「大丈夫か?」

「は、はい、問題ありません!」

『辺境サンゴ』のクランメンバーであるアリサが、に手を當てながら背筋をばす。

背中を軽く叩いてやると、ビクッとかす。

赤い髪がはらりと揺れ、瞳の中の黒目がプルプルといている。

既にミンディに來るまでに、『辺境サンゴ』のクランメンバーはある程度合流を果たしていた。

その數は俺たちを抜いて二十五人ほど。

合わせて三十人にも満たないこの人數が、今回ミンディ落としをするために使えるメンバーということになる。

本當ならもうちょい合流できたんだが、あまり人が多すぎても良くない。

『ゾンビあたっく!』の次なる作戦は、人がいればいいという類のものじゃないからな。

『辺境サンゴ』は決して無敵ではない。総數六百の一騎當千の強者たちとはいえ、軍を相手にし、俺のサポートがない狀態であれば不測の事態は常に起こりうるのだ。

なので俺の手勢は最小限に。これが俺の今回の作戦の骨子にある。

「セリア、良くやった」

「は、はひぃ……ふぅ、ふぅ……」

今回のセリアの役目は大きい。

無道ノ零を使いアルティメット・ゾンビを召喚したことで、既に彼は明らかに限界だった。

を抜かれたことで顔は青白くなり、普段よりも何倍も不健康そうに見えている。

「アリサ、セリアを頼んだ」

「はい、任せて下さいっ!」

「アーたん、あとは任せましたぁ……」

疲れて周囲を気にする様子もなさそうなセリアをアリサに預け、俺は壊滅したデザント兵の軍団へと目を向ける。

味方をゾンビにされ、軍団長を打たれ、彼らは完全に浮き足だっている。

その中にはいざという時の捨て石として用意されていたらしい冒険者たちの姿があった。

俺たちの第二作戦は、彼らの存在なしではり立たない。

「よし、それなら……行くぞっ!」

俺たちはめまぐるしくく狀況の中で、冒険者たちの波に紛れ込む。

ここからが第二段階――潛作戦だ。

ミンディに潛し、とりあえず兵糧を奪いきる。

そうすれば多飯食らいの軍団がミンディに留まることは難しくなる。

そこでガンドレアの者達の協力を取り付け、閉ざされた城門を開放することが今の目標だ。 現在エルルたち別働隊には、ガンドレアのドワーフ達を取り纏めるゴズと連絡を取りにいってもらっている。

デザント兵たちの武裝解除をしガンドレア兵をれれば、この要塞はデザントへの砦へと変貌する。

デザントの奴らを削るか志気を下げないといけないだろうが……その方法は何かやりながら考えよう。

俺たち『辺境サンゴ』はしれっとした顔で、門へ殺到しごちゃごちゃになっている兵士と冒険者の集団に紛れ込むことに無事功するのだった。

さて、それじゃあ次はお堅い城門をなんとかしてこじ開けるとしますかね。

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