《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》2日目 その9
お久しぶりです。
お知らせなのですが、長いこと放置気味だったTwitterアカウントの活を始めようと思います。
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「それにしても……」
淺川が出ていくのを見送り、扉が閉まるのを確認すると、部屋に戻って片山に話しかける。
彼の寢転ぶベッドまで歩き、端っこに腰を下ろした。
さっきよりは元気なようだが、依然として覇気のない顔をしているな。
「子って本當に難しいよな」
ベッドがギイと軋む音が、彼の代わりに返事をしてくれるようだ。
子……というのは俺が男だから主語にしただけで、実際は男子も同じように難しいのだろう。
はタイミングだと、たまに誰かが言っているが、それと同じように、意中の相手がどんなバックグランドを持つかは運と言うほかない。
100人中99人が一目惚れするような凄まじいイケメンだとしても、殘りの1人には嫌われるかもしれない。
その理由は、「自分が男嫌い」とか「最の彼氏がいる」とか、「そもそもイケメンが好きじゃない」という変わり種もある。
だが、その「イケメンが嫌い」という一見すると首を傾げてしまいそうな意見でも、詳しく聞いてみれば「過去にイケメンに遊ばれまくった」や、「かっこよくない=慣れしてない」という怪しい式に則ったものという、納得できそうな理由があるのだ。
とはいえ、世間一般で見れば容姿が優れているほうに魅力をじられるわけで……そこから外れるには「個人のバックグラウンド」が関係してくる。
敗北など知らなさそうな片山でさえ、人間固有の過去、その教訓には敵わないのだ。
「俺は、わかってると思ってたんだけどな、それなりに」
思考の海に沈んでいる間に、片山が上半を持ち上げる。
「でも、わかってる気になってただけだったのかもな」
力のない笑みを見て、が締め付けられる。
彼は一度の失敗で挫けるような男ではないが、それだけ本気で巖城さんのことを想っているのだ。
「こんなことなら、もっと靜かに、ひっそりと――」
「それは違うと思う」
弱り果てた自分の意見が正しいと思っていたからか、俺が言い切ったのが不思議だったのか、彼は「えっ」と小さく聲を発した。
「だってさ、巖城さんは、今の片山に惹かれてるんだぞ? 日頃から自分磨きを忘れないで、友達にも好かれてて、俺が困った時には自分のことのように怒ってくれた。そんな片山だから気になって、ここまで関係を深められたんじゃないか?」
「あ……相棒……」
彼の肩に手を置き、できるだけ優しく、けれど熱意が伝わるように言葉を続ける。
「きっと俺と同じだよ。前に進もうとすると、置いて行ったり失うものがあるんだ。でも、そうしないと伝わらないことだってある」
「俺の行は……間違ってなかったんだよな……?」
片山の目を見つめ、強く頷く。
「當たり前だ。結果はどうあれ、勇気を出して行したことに間違いはない。それでこそ、俺の尊敬する片山だよ」
「そうか……そうだよな。でも、巖城さんを泣かせちゃったのは申し訳ないと思うし、明日、挽回してみせる!」
元気を取り戻した片山と固い握手をわす。
「あ、もちろん巖城さんがもう関わりたくないって言うなら、俺は潔くを引く所存だぞ」
「そうはならないと思うから安心してくれ」
「本當かなあ……あと、さっき相棒が見つめてくれた時、割とキュンとしたわ。その技、今度俺も使わせてもらうな」
それについては勝手にしてくれ。
一年以上続いた1日がついに終わりました。
次回から3日目です…お待たせしました…
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