《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫》319.最兇の復活 ②
のぞみたちの戸いをよそに、ミラドンキスは息を吸った。貝の呼吸は黒いにあるらしく、無數のが強力な清浄機のように強い吸引力で空気を吸い取る。
「こいつ、俺様たちを吸い込むつもりか?」と修二が言った。
「何だか、から湧き出る源気が弱まってきてしまいました……」
藍はそう言ったが、ラーマは聖霊の手口に気付いた。
「違います!私たちの源気が吸い取られているんです!」
ミラドンキスは、數十秒かけて源気を吸い取ると、殻を閉じた。そしてまた、貝の表面からが出現し、新たな首が生える。のぞみたちが決死の覚悟で倒した37の首が、一気に再生した。
クラークが青ざめた顔で再生の一部始終を見た。
「こいつ……再生しやがったのか……」
戦闘で消耗し、さらに源気まで吸い取られ、藍はもう気力で負けそうになっている。
「あんなに懸命に戦ったのに……」
さすがの修二は恐れることもなく、むしろ笑みを深くして、剣を強く握った。
「おーし、二回戦突だな!」
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日頃、よほどのことでないと冷靜さを失わないラーマも、額に冷や汗を浮かべ、難しい顔をしている。
「フェラー、まずいですね」
「ミンスコーナさん、諦めず、もう一度先ほどのように連攜して戦えば、また倒せるはずです」
だがそれは、確実な勝利をもたらすことはできないということにルルは気付いた。
「でも……いくら倒しても、私たちの源気を餌に、何度でも再生するんだよね?そんなのまるで、自分で自分を斬ってるみたい」
「ギャオオオオオ!!!!」とミラドンキスの吼える聲が響いた。
「攻撃が來ましたヨン!」と、メリルがいち早く伝えた。
纏っていた源気を吸い取られ、のぞみたちはさらに源気を引き出して、戦闘態勢に切り替える。
弾を跳び避けたのぞみは、逃げ遅れた藍を見て大聲で呼びかけた。
「可児ちゃん、危ない!!!」
藍は、ミラドンキスが巻き起こした予想外の復活に、地獄絵図でも見たような恐怖に支配されていた。が上手くかず、真正面から大きく口を開けて來る魔獣の首に呑み込まれそうになっている。かろうじてその手には翠たんが握られ、左手で刃を支える急防の構えを取っていたが、
「誰か、助けて!?」
藍は、終わりの見えない聖霊との爭いを諦める気持ちになっていた。しかしその時、しい太刀筋が、藍の目に殘像として見えた。その太刀は、數秒で18連撃を加え、首が藍を呑むよりも前に微塵切りになり、砕けるように散った。
「えっ?消えた……?」
「さすがに看過できないね」
目を丸くした藍の前に、真人(さなと)が現れた。
「島谷さん?どうしてここにいるんですか?」
真人は背を向けたまま、殘心の構えを取っている。
「戦う気力がないなら退いた方がいい、ここは俺に任せろ」
それだけ言うと、真人は次の攻撃に転じるように刀を構えた。
「……はい、助けてくださってありがとうございます……」
藍は言われたとおりにを引いた。
のぞみは藍が危機を逃れたことにホッとしたが、今度は自分の目の前にミラドンキスが迫っていた。だが、『ルビススフェーアゾーン』が緩衝材となり、聖霊の口はのぞみに辿り著くことができない。のぞみがその場を跳び離れると、すぐに別の首がのぞみを狙い、呑み込もうとした。
間一髪。
誰かに引っ張られるようにして、のぞみは危機をした。
その瞬間のぞみは、どこかで知っている源気(グラムグラカ)の気配の覚を覚えた。ふっと振り返ると、黃い武服が見えた。サイドテールにした髪と、短く鋭い耳。ミーラティス人ハーフの、あの心苗だった。
「エクティットさん!?」
「カンザキさん、危ないところでしたね。まだまだ油斷です」
「エクティットさん、どうしてここに?あなたも順路サインにミスリードされてここまで來てしまったんですか?」
「いえ。私はティフニーにわれたんです。あなたたちの命を守る作戦に、賛同しました」
周辺にはさらに、6人のミーラティス系心苗(コディセミット)が現れた。彼たちはティフニーの下、統率の取れたきを見せる。6人のうち4人は後方で補給陣地を展開し、殘る2人はエクティットのように戦闘に加勢した。
とうとう、ティフニーも姿を現した。
彼は勝利の神のように降臨し、山吹の源気を輝かせ、その場にいる全員を勵ました。
「皆さん、諦めるのは早いですよ。戦いは、ここからが本番です!」
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