《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》443 大きな

宗像先生に連れられて、駅近くの中華屋さんへとる。

赤いのれんを嬉しそうにくぐる先生に対し、俺は油っこい匂いでやけを起こしそうだ。

別に、この中華屋が悪いんじゃない。

俺の心理狀態が、良くないためだ。

今は、なにも口にしたくない……。

ミハイルが開けてしまった巨大な

心臓も一緒に持って行かれた気がする。

彼がんだ『絶だ!』という、強い言葉によって。

そんな傷心中の生徒を無視して、擔任教師の宗像先生は、店の大將を呼びつける。

「おっちゃん! とりあえず、ハイボールと餃子2つね」

「おお。蘭ちゃんじゃないか! あいよ」

とハゲの大將が慣れた手つきで注文を取る。

「あとさ。悪いんだけど、おっちゃん。個室にしてくれないかな? ちょっと、こいつ落ち込んでいてさ。靜かに話したいんだよ」

「ひょっとして、蘭ちゃんの生徒かい? いいよ、好きに使って」

いつも生徒の意見は無視するのに、今日の宗像先生は優しくじた。

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やっぱり、ミハイルに振られたことを、配慮してくれているのだろうか?

店の一番奧にあるお座敷へと通された。

襖で部屋を覆っているから、人目を気にせず、話せるらしい。

「それで、古賀が退學を申し出たり。長い髪を短く切ったことは、新宮。お前に原因があるんだろ?」

既に1杯目のハイボールは飲み干し、ラー油をたっぷりかけた餃子を頬張る宗像先生。

「あの……々と積み重ねた結果だと思うんですけど。去年、俺がミハイルの誕生日に、抱きしめたから……それが一番の理由だと思います」

先生に話したことで、肩の荷が下りた気がした。

ひとりで抱え込むより、事を知っている人と共有した方が良い……。

「新宮……お前、その話。本當か!?」

先生は驚きの余り、割りばしを座卓に落としてしまう。

「はい。キッスもしようとしました……」

「そ、そりゃ、ダメだろ!?」

即座に、否定されたことに傷つく。

「やっぱりダメだったんでしょうか? ミハイルは嫌じゃない……って、その場では言ってくれたんですが……」

「だって、お前。あの古賀の可らしい小を無理やり、お前がぶち込んだのだろ? そりゃ長い髪も切りたくなるし、退學もしたくなるよな」

この人、一なにを言っているんだ?

なんで俺がミハイルを襲っていることに……。

「先生? 俺はミハイルを抱きしめただけですよ?」

「へ? 抱いたんだろ? 嫌がる古賀を無理やり、潤剤も無しに。そりゃ痛いだろ~」

もう酔っぱらっているのか、この教師は。

「……抱いたんじゃなくて、抱きしめたんですよっ!」

「ああ~ そっちか。なんだ、つまんねーの」

他人事だと思って……クソがっ!

話がちゃんと伝わってないようだったので。

俺は再度、宗像先生へ今での経緯を説明する。

去年の春、ミハイルが俺に告白し、振ったことから始まり。

その際、俺は「お前がだったら付き合える」と言ってしまった。

真にけたミハイルは、俺の理想通りのカノジョ。アンナを生みだし、完璧に演じることになる。

だが、デートという取材を重ねる度に、俺はアンナにも好意を寄せるが。

素のミハイルを抱きしめてしまった。ついでに、キッスまでしようと。

そこに追い打ちをかけるように、マリアとのラブホ記事……。

宗像先生はミニのチャイナドレスを著ているというのに、あぐらをかき、黙って俺の話を聞く。

その間に、店の大將が次々と中華料理を持ってくる。ハイボールのおかわりと一緒に。

顔を赤くしてはいたが、先生はまだ完全に酔っぱらってはいないようだ。

俺は一切、料理に手をつけなかった。

が苦しかったから……。

「なるほどな……。つまり、新宮のために自分を押し殺してまで、演じていたブリブリだが。結局、彼氏役であるお前が、男のミハイルを選んでしまった……てことか?」

「ま、まあ……そうだと思います」

「私はノンケだから、古賀の気持ちがよく分からんが。たぶん、目線で考えると。化粧で綺麗な格好をした時は興してくれず、すっぴんでどブスな狀態なのに、彼氏が『好きだっ!』ってハグしたもんかな?」

「それは、俺にはわかりかねます……」

例えが酷い。

「しっかし、めんどくさい奴らだなぁ~ 好きならさっさと付き合えよ。いちいち裝して、『タッくん。アンナよ~☆』とかバッカじゃねーの」

いや、アンナはそんな言葉遣い悪くないし、もっと可い。

「……でも、俺。ミハイルが頑張って、裝までしてくれて。それなのに、ちゃんと決められなくて。どうしたらいいのか」

気がつくと、涙が目に溢れていた。

そんなけない俺を見て、先生は鼻で笑う。

「新宮。前にも言ったと思うが、今の生活が當たり前だと思うなよ。古賀がずっとお前の隣りにいるなんて、ありえない。もうすぐお前も二年生だ。ちゃんと相手の想いに、答えるべきなんじゃないのか?」

「分かってます……でも、急に選択を迫られて、俺には無理でした」

「そうか。しかし古賀の中で、心境の変化があったのも事実だろう。もうごっこは、終わりなんじゃないのか?」

「……でもミハイルは、俺を捨てることを選びました。二度と會ってくれないと思います」

言い終える頃には、うなだれていた。

自分の口から、終わりを告げたようなものだと。

「バッカモン!」

泣き崩れる俺を見て、宗像先生は怒鳴り聲を上げる。

「え?」

「お前がそんなんで、どうする!? まだ諦めるな! 私だって、古賀の教師だ。ちゃんと連れ戻す気だ!」

「ほ、本當ですか!?」

「うむ。知っての通り、我が校の良いところは、サラッと學して、卒業だ。仮に古賀が退學しても、すぐに編できる。まあ、今の古賀はかなり興しているようだから、説得は無理だろう」

「俺のせいですよね……」

「そうだろな。今回の件は、どう考えても新宮が悪い」

に開いた巨大なを更に、広げるような発言だった。

「うっ……」

「とりあえず、退學屆けは預かっておく。保留ってことにしとくから安心しろ。新宮、お前はちゃんと次回の試験にも來いよ!」

「でも、ミハイルが來ないなら……」

「バカ野郎! お前が學校へちゃんと來たら、古賀が戻って來る可能が、上がるってもんだ!」

「どういうことですか?」

「お前が一ツ橋高校で、楽しそうにしていたら、きっと古賀も悔しがって、また高校へ來るってことさ♪」

そう言うと、宗像先生は親指を立てて、ニカッと笑う。

俺が楽しそうにしていたら、ミハイルが戻ってくるだと……?

信じられないな。

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