《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》147話 イズ王國・全員生存エンド ”凡人と神”
「マジで!? どうして!?」
《……しら、ない》
ドストレートな味山の言葉に小さなこけし人形がぷいっとそっぽを向く。
微妙な怪奇現象、突っ込みどころの多い狀況ではあるが――。
《よ、よーし、やるぞ……さあ、やるぞー……あー、怖……じゃない。よーし、やるぞ、っすっぞー》
セラフが綺麗な顔にびっしゃり汗を流しつつ、なにやらもごもご呟いて。
《異界創生・■◆■■》
神種と、それに近い存在、理を超えた者のみが扱える力。
"異界"
己だけの世界を無理やり現実に反映させり付ける傲慢な力。
TIPS€ セラフが異界を形し始めた、數秒後に逆さ富士を異界に閉じ込め、そのまま異界ごと消滅するつもりだ
《っしゃ~やるぞ~、あ~消えたくないけど、やりますよ~》
「やべえ! なんか嫌なテンションで覚悟決めてる奴がいる!! ああ、もう、考えるのはあとだ! アサマ!!」
《びくっ。あ。あんまり、おおきな聲、やめてください、おとこのひとの聲、こわい……》
「やかましい!! お前俺の事何回殺したと思ってんだよ! 怖いのはこっちじゃ!」
《きゃっ》
がしり。落下していく味山がこけし人形を摑んで。
「お前、ほんとに俺の味方してくれんのか?」
《……だめ?》
「――もう二度と、俺の目の前で弱い奴とか良い奴にめちゃくちゃな事しないか?」
《しない》
「よし!! 詳細は余裕が出來た後に要審議!! でも、今はとりあえず、アサマ、俺の探索に力貸せ」
《一緒にあそんでくれるん?》
こけし――いや、アサマの口調が変わる。
にいいっと味山が笑って。
「ああ、そんなとこだ。逆さ富士を止めたい。お前何ができる?」
《逆さ富士……できると思う、うん、うん、神様ならできるよ、捧げものあれば止められる。とてもとても強いものを捧げれば、おやまが怒ってるの止められる》
TIPS€ 逆さ富士・攻略ルート追加 神種アサマの協力により、”お返し申す”ルートが発生
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TIPS€ アサマに"強いもの”を捧げろ
「クソ耳、的には?」
TIPS€ アサマと共に逆さ富士の元へ向かえ
「了解、富士山へのお土産は決まったな」
かちり。
味山只人の意識が切り替わる。
未來も、將來も、今はもうすべてどうでもいい。
《いいの? 消えちゃうよ》
「よくはねえよ、普通に、でも、それ以上に」
この男をかすのはその時のテンション。
あの日、プランCを選び、人知の竜との戦爭に赴いた時も。
あの日、すべてを捨て、52番目の星を取り戻した時も。
ただ1つの理由。
「気分が悪い」
墮ちていく、落ちていく。
夜空、明ける空。
流れる風、全をシェイクする浮遊、
味山をかすのは1つだけの理由。
「このままセラフを見殺しにすんのも、富士山のメテオアタック許すのも、非常に気分が悪い」
《……そう。いいよ、あじやまのしたいようにしてあげるって、かみさまがゆってる》
「ぎゃはははは。アサマ、お前結局なんなんだ? あー習合がどうのこうの言ってたな。まあ、いいや。よし、あ、でも、やべえ、俺空飛べない」
どんどん逆さ富士から離れていく味山。
良いじにかっこつけていても、空は――。
《いいよ、行こう》
「お?」
どろり。
こけし人形の目から黒い涙が。
それはみるみる間に広がり、形を作り。あの姿へ。
闇の襤褸は羽のように揺う。
長く大きなを襤褸で隠した習合神。
零落習合神・アサマ、再顕現。
そして。
《連れていってあげる。でも、早くしないと……》
見上げた向こう。
セラフの翼がどんどん大きくなっていく。
それが逆さ富士自を包み始めて。
「やべ。おい! セラフ、セラフちゃんや! それ中止、中止! はいはい! やめやめ!!」
《――聖なるかな、聖なるかな。國はここにあり。主よ、どうかご照覧あれ》
「いかん! どう見ても話し聞くモードじゃなくなってる! まずはセラフを止める! アサマ!」
《うん》
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イズ王國で何度も殺し合ったその恐怖の背に乗り、味山が再び上昇。
目指すは、たった1人でニホン最高の山を支え続けた異國の神話の住人。
《聖なるかな》
よく見れば、その白い輝きに満ちたは、亀裂やヒビが目立つ。
引き抜かれた翼の本は抉れたまま、嵐が吹き飛ばした多腕も、ねじれたまま。
「ありがとな、セラフ。助かったよ、お前が來てくれなきゃとっくに負けてた」
教えろ、クソ耳。
味山の言葉に、その道は答える。
TIPS€ 異界を止める方法は同じ異界で上書きするか、異界の主にダメージを與える事だ。セラフの翼を落とせ。異界の創生が止まる、代わりに逆さ富士はイズ半島に落下する
「問題ねえ。やるか」
天使を、墮とす。
「出番だ、先生。天使の翼を落とすのはさすがに初めてだろ?」
耳男が、そのに宿る鬼にの権利を明け渡す。
――いつもと違う妙な覚の後。
TIPS”鬼” 良い。承ろうぞ
アサマの背に乗ったまま、味山がむき出しの骨の左腕を構える。
『呪式・骨喰い藤史郎』
左腕、かつて最恐の鬼狩りが振るった獲の再現。
神の殘り滓が、味山に探索の力を與える。
辛うじて人の腕を象っていた骨はみるみる間に形を変え、骨の刃へと。
「頼むぜ、先生!!」
一閃。
腑分けされた部位・耳の大力により振るわれる鬼の剣の一振り。
ずるり。
《え》
それはついに只の一振りで、神の翼を落とすほどに。
セラフのバランスか崩れる、逆さ富士を包み、それと共に消えようとしていた彼の狙いは潰える。
《な、んで》
「選手代だ、休んでろ、熾天使」
《お――やま、あじやま。落ちてくるよ》
逆さ富士を支えていたセラフが落ちていく。
落下する逆さ富士はもう止まらない。
頭上、権能”逆さ富士”。
止める事のできるのは、もう味山とアサマのみ。
「アサマ、あれ止めれるか?」
《――うん、神様が出來るって、でも、とても強いものを捧げる必要があるって。神さま、それを食べて、おやまを止めるって》
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TIPS€ 神種は人間からのを喰らってその存在強度を高める事が出來る
TIPS€ 神種の力の源は、"世界からの認知"である
TIPS€ 神種を人類が倒した場合、世界の認知がしづつ歪んでいく
ヒントが響く。
本來、人類の中に現れる天才が數十年をかけて得ていく報がなんの意味もなく凡人へと渡る。
TIPS€ 決して人類には倒せぬものを倒すという矛盾が世界のルールを変えていく
TIPS€ お前は、神ならざるにて神の如き星を墮とした
TIPS€ お前は神ならざるにて◆◆◆◆蜿ウ閻輔→蜈ア縺ォ謨ー螟壹?逾槭??r谿コ縺憐ース縺上@縺
TIPS€ お前は神ならざるにて零落した神と渡り合った
TIPS€ 故に――
「とても強い……ゴホン!! 俺は、あのアレタ・アシュフィールドをぶん毆った男だぜ」
TIPS€ ――お前はすでに神にすら牙を剝く異常存在(パラノーマル)である。ーー最上の生贄になるだろう
「アサマ、俺を使え、力を貸してやる」
《……神様、神様、かしこみかしこみ、奉る》
「う、お……」
どろり。
生贄の同意に、神がその食を向けた。
TIPS€ 報酬・”異常存在への道”が適用、耳男に新たに”生贄”の概念が追加された
TIPS€ 生贄の概念を持つ者を神種が取り込む事で、存在強度を大幅に強化する事が出來る
TIPS€ 生贄の概念を持つ者は神種に取り込まれると同時に、神種の力に干渉する機會を得る
アサマの纏う闇が、耳男を取り込んでいく。
TIPS€ 逆さ富士 攻略ルート”お返し申す” 目標設定
TIPS€ 自らをアサマに捧げ、原初の神格を取り戻させろ
TIPS€ 失敗條件”自我の消失、もしくは”耳の化”の発
暖かい闇。
味山は、それにをゆだねる。
「ぐ、あ」
溶ける。
皮が、が、存在が。
命が喰らわれていく。
忘れてしまいそうだ、自分が人間であった事を。
味山只人は、神にはなれない。
才能も資格も運命も、味山を構するすべてその道に至るには足りない。
どくん。
生きとしての當たり前の生存本能が警鐘を鳴らしまくる。
《すごい、神様、驚いてる、八俁遠呂智と同じだって……》
凡人と神の関係はシンプル、祈るか捧げるか、そのどちらか。
「あ、ぎゃ、あああああああ……溶ける、なくなる……アサマ、ちょ、お前、これ本當に俺大丈夫なのか? ああああああああ、……あれ、思ったよりもいけるかも?」
神と人の語、そんなものがあれば味山は間違いなく脇役。
序盤で語の被害者として散っていくモブでしかない。
だが、もしも――。
《神様、かみさま、起きてください、起きて、お願いします、お願いします、かしこみかしこみ申し立てます》
「あぎゃああああああああああああああ!! 腕、ちょ、腕溶けたアァアア!! 耳の!! よし、生えた!」
もしも、生贄に、語の犠牲になってなお、滅(・)ば(・)な(・)い(・)脇役がいたら?
もしも、犠牲という役割の凡人が決して死なない存在だったら?
矛盾。
生き延びるはずもない存在がなんの意味もなく、生き続けたら?
《――かけまくも あやに かしこき ふじのあさまのおおかみ の おおまえに》
味山只人はその、”もしも”だ。
なんの意味もなく、なんの役に立たず、なんの役割もなく。
ただ生きて、ただ戦って、ただ殺して死んで生きて。
故に、この男は最強の生贄となるだろう。
なにせ、なんど捧げようとどれだけ捧げようと決して滅ばず壊れず。
神にとってこれだけ良質な贄はない。
どろり。
アサマのを構する闇がどんどん巨大になっていく。
《かしこみ かしこみ も もうさく きよきこころの まことをさきとし かみよののりをあがめ まさにすなおのもともとに かえりよりし》
味山只人という不滅の生贄と、生贄を取り込む事により力を増す神種。
互いが合意の上のルール破りの神種の運用。
「あああああああああああ……だんだん慣れてくると風呂ってるじに似てくるな」
本來アサマが10年以上かけて取り戻そうとしていた力が戻っていく。
零落した神格が、耳男という最強最悪の生贄を材料にして。
《いまも ゆくさきも おおかみ の ひろき あつき みたまのふゆ を かがふらしめ》
巨大。
いつしか、朝焼けの空にそれが姿を取り戻す。
セラフと同等のサイズ、同等の神格。
襤褸のはまるで咲き誇る桜の花を編んだかのようなへと。
朝日に照らされるのはしい型の神の像。
彼の頭上には咲き誇る花々で編まれた櫛、そして。
「あ~しんどかった……きっつ……」
溶かされ、吸い取られ、なお滅びていない耳男が生えている。
《よのまもり ひのまもり に まもり さきわえたまへ と かしこみ かしこみ も まをす》
ついに。味山只人はたった1人でそれを為した。
天邪鬼がやろうとしていた1國を生贄にしての、神種アサマの完、神格の回復。
TIPS€ 神種・淺間大明神・完全顕現
イズの空に神が生まれた。
耳男を材料にし、ついに零落した古い神がその力を取り戻した。
《……》
それは権能”逆さ富士”の本來の者。
天邪鬼によってゆがめられた権能を取り戻す事が出來る唯一の存在。
TIPS€ 警告 淺間大明神の権能の使用にさらなる贄が必要
TIPS€ 警告 死にすぎた、腑分けされた部位、”耳”を神の殘り滓が抑えられなくなる。耳の化が発するぞ
「いや、でもやるしかないだろ。ここまで來たら」
巨大な神の頭上に生えたまま、味山がぼそり覚悟を決める。
すっと、大神が両手を掲げる。
逆さ富士への干渉。
が生まれ、桜の花びらが舞い散る。
どろり。
自ら志願した生贄が、さらに神と同化、いや喰われていく。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。
逆さ富士のが変わっていく。
TIPS€ 警告・天邪鬼の権能""が発
TIPS€ 淺間大神への侵食を狙っている
TIPS€ お前ならば対抗出來るぞ
《かいじゃく……》
その存在は十重二十重に策を張り巡らせていた。
もしも、自らの手からアサマが離れた時の仕込み。
逆さ富士という権能に仕込んでいた策が今発する。
「うっわ。ダッル、もっと痛めつけておけば良かったな。次アイツに出會ったらボコボコにしたろ」
闇に包まれた逆さ富士、それは太のを遮る。
イズ王國に決してアサがやって來ないように。
神種にも、格が存在する。
"天邪鬼"。
古いその神の格は、零落したアサマにとって完全なる格上の存在。
ーー自分以外の誰かの幸せをぶっ壊すのが生き甲斐なので〜
そんな聲が聞こえてきそうだ。
闇が、ニホンの象徴を飲み込む。
そこから垂れる闇が凡人と神を飲み込もうとーー。
『アサマ様……』
聲が、聞こえた。
それは味山にだけ聞こえるヒントではない。
『空が……どうして……』
『富士山、みてー、お母さん、お山が浮いてる!』
『大丈夫、大丈夫よ。アサマ様がいるからね、なんとかしてくれるからね』
『頭が痛い……アサマ様は俺たちをってたのか?』
『あの、化けがアサマから俺たちを守ってた?』
『いや、でも、班長がアサマ様を……?』
『もう、何がなんだか……でも、アレ、山、落ちてくるよな?』
『アサマ様のお姿……綺麗だ』
『さっきはね、大きな天使様がお山を支えてたんだよ』
イズ王國の民の聲。
アサマの生贄として接続されてある味山にも同じものが流れ込んでくる。
大人達の聲、子どもたちの聲。様々な人の聲。
『味山さん……熊野さん……頼む、どうか、無事で』
『おとうさん、大丈夫だよー。2人とも生きてる。それに、ふふ、アサマ様と仲直りしたみたい』
『……波?』
『あの化けがアサマと戦い初めてからだよな? 俺たち、なにしてたんだ? こんなお面被って……』
『なんなんだ、あの汚い笑い聲の化け。……なんか、耳みたいなのついてなかった?』
『アサマ様……』
『アサマ様、大丈夫かな……また泣いてないかな……』
『山……もうダメだろ……これ』
『信じなきゃ……! アサマ様を! 私たちの神さまなんだから!』
『いや、でも、俺たちこれ、なんで、アサマ……様を?』
戸い。憂い、怒り、気づき。
イズ王國の國民の心は今までアサマの影響下に。
様々な思いがあるだろう、茫然とする者、怒る者、悲しむ者、懐かしむ者、未だアサマを信じる者。
全員が空を見上げていた。
『これ、死ぬな……』
『あれ、落ちてくるの!? 逃げなきゃ!』
『どこに!? 今から走って逃げれるわけないじゃん!!』
『ここで死ぬ……噓だろ?』
理解する、その絶の狀況を。
理解する、己の裂けれられない死を。
慄く人々。
このVer2.0の世界では、人はあまりにも無力で――。
『アサマ様……』
一人。
が、手を合わせた。
震える手、小さな。
祈り。
本能か、それとも打算か。
逆さ富士を止めるように空に浮かぶその神へ、が手を合わせた。
『……アサマ様』
『お守りください……』
『どうか、どうか、ご無事で……貴だけが悪いのではないのです、貴たちを見ようとしなかった私をお許しください』
『お、おい、なんであんなのに祈ってんだよ……お、俺たちられてたのに!』
『……でもよ、もう、これあれじゃね? 神頼みしかなくね?』
『……そうだな』
1人、また1人、イズ王國の人々がアサマに、アサマのために手を合わせる。
その存在を認知し、その存在の為に、そして何より自らのために、祈る。
神と人の距離、近いようで遠く、遠いようで近い。
はるか昔からニホン人はこうして、神と接してきた。
ヒトの祈りが、淺間大神の存在をさらに強く、強く。
TIPS€ 淺間大神の存在強度が上昇、逆さ富士への対抗可能
「あー……よし、やるか」
さらに深く、もっと深く。
味山が、戻れないかもしれない道に覚悟を決めてーー。
《ーーだめ》
「あ?」
夜の闇が終わっていく。
世界にそしてアサが來る。
神の頭上、味山はソレに出會う。
《ダメだよ、あじやまはここまで。神さまも、もうお腹いっぱいだって》
がいた。
末な、著……? のような古めかしい姿。
枝の目立つ黒い髪はばされ、痩せぎすのは弱々しく。
し垂れ気味でクマの目立つその顔立ちはく、そして儚く。
味山は、この子を知っている。
あのホラーホテルで、蹴鞠を突いていたーー。
「アサ……マ?」
《あじやま、あそんでくれてありがとな。あじやま、殺し合いごっこ、たのしかった》
のをのがけていく。
ありふれた悲劇。
それに沈んだ彼が凡人を見て笑う。
アサマが、耳男の耳たぶを摑んで。
《かみさま……おねがい、この人を、あじやまを……》
すぽん(ピクミン)!!
引っこ抜いた。
「あ?」
《――お返しもうす、ばいばい、あじやま》
何度目の落下。
味山の視界、逆さ富士を持ち上げる淺間大神のその威容。
《かけまくしもかしこき淺間の神よ。高く不盡ならむ山の神よ》
歌うような祝詞。
が味山の代わりに大神の髪に沈んでいく。
同時に、逆さ富士からびる人の影が、花びらに塗れて消えていく。
《畏れ多くも拝領つかまつったご神》
問題ないはずだ。
上々の終わりだろう。
イズ王國で好き放題にしていた神種が自分で自分の後始末をしてくれるのだ。
《かしこみかしこみ謹んで》
ハッピーエンド。ムカつく奴らは全て滅ぶ。
ハッピーエンド。アサマと引き換えに逆さ富士はきっと止まる。
全ての敵を滅ぼし、イズ王國を出よう。
そして、仲間のアレフチームの元へ戻ろう。
それが目的だ、目的だったはずだ。
なのに。
――お前は神にはなれない。
「……ちくしょう」
味山は落ちてーー。
TIPS€ 技能、発
TIPS€ "汝、只の人なりて"
《ここで簡単に退場しないのが、熾天使クオリティなんですよね》
「あっ」
ずおっ!!
落ちていく味山とすれ違うように、翼の欠けた熾天使が空へ。
己のを神へので燃やす天使が、空を昇る。
《只の人よ、貴方がそこまでやったのです。熾天使も、最後の最後、意地を見せてあげましょう》
汝、只の人なりて。
只の人が行うちっぽけな行を、その神はずっと見ていた。
天使の翼が黒く染まっていく。
熾天使が、今、はっきりと報酬の枠を超え、味山の為に、味山の願いだけを葉えるために。
《一流のリアルな終わりよりも、三流のハッピーエンド。貴方のせいですよ、私は貴方を見てたからおかしくなったのです》
「セラーー」
《報酬を、期待していなさい。凡人探索者》
があった。
セラフが淺間大神に寄り添う。
2つの神が、逆さ富士へと手を掲げ。
《小さき子、そして異國のしく古い神よ。熾天使が貴達の道を祝福します。貴達はその過程で多くのヒトを傷つけました》
異なる起源、異なる語。
されどこの2つの神は、只の人の行によってーー。
《でも、今の貴達の行を熾天使は肯定します、故に貴達に力を貸します》
があった。
逆さ富士が輝く、水平線の向こうから朝日が昇る。
朝の日差しと、2つの神の輝き、視界が真っ白にーー。
《さあ、彼の好むくだらないハッピーエンドのために》
《お返しします》
あれ。
ただ塗りつぶされるような白が世界に広がり、そして。
「あっ」
空に浮かぶ逆さ富士。
それを止めようとした2つの神。
消失。
まるで、夢の景だったかのように。
が消えたと同時にすべてが消えていた。
落ちていく味山の視界にはただ、ただ、広く、朝焼けの空だけが。
TIPS€ 逆さ富士・登頂
TIPS€ 特殊イベントの全てを攻略、逆さ富士の脅威を取り除いた
TIPS€ 神種・淺間大神、神種・セラフ――ロスト(消失)
「あいつら……」
神は去り、逆さ富士の脅威も消えた。
手にれた道、そのすべてを使い切り、敵を殺した。
――あじやま
――人の子
ほんのしだ、ほんのし、味山のに痛みを殘して。
「……ありがとよ」
墮ちていく、落ちていく。
イズの空を、神ならざるの耳男が落ちていく。
明けていく空、イズ王國、いやイズ半島に朝が來る。
火山活にとって生まれた特徴的なさまざまな地形を朝日が照らす。
「富士山……いいな」
遠くに見える富士の山、イズ半島からものぞく霊山は、あるべき場所へと返された。
気のせいか、富士の山の山頂が一瞬、輝いたような。
TIPS€ ――深淵はお前にひとつ贈りを用意した、しばらく待て
「あ?」
「あ、じやまあああああああああああああ!」
『ぴよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
「おお! 熊野! 熊野おおおおおおおおおおおおお! やべえ!! 落ちる!! 助けてええええええええええええええ!!」
八咫烏と熊野ミサキ。
今回の味山の探索、その仲間たちが空し、味山の元へ。
「まて、待て、待て、今や八咫烏!」
『ピョー―』
もう何回目になるかもわからない空中キャッチ。
熊野の號令で八咫烏が味山を掬い上――
『ピ』
「え」
「うそ」
八咫烏が、固まった。
味山を掬おうとした瞬間、味山と目があった瞬間、全の羽を逆立たせ、一気にその場を逃げるように離れて。
「なんで!? 八咫、どうしたん!?」
『ぴよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
八咫烏に、今味山はどのように見えたのだろうか。
天邪鬼にもアサマにも果敢に立ち向かったその意志あるは今、はっきりと。
「え、おい、待て、なんで逃げる……なんで、なんでにげるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? 落ちるううううううううううううううううううううううううううううううううううう」
味山只人を、恐れていた。
「いかん! 味山!! くそ、なんで、なんでなん! 八咫烏!!」
『ぴよ、ぴよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
八咫烏がとして生まれて初めて熊野の命令を聞かない。
みるみる間に上昇、とにかく味山から離れるように。
「え、え、え。うそ、これ、うそ、マジ? え~落下死……!? え、これで死ぬの!? 死なないよな? 俺死なないよな!?」
TIPS€ 警告、耳のの使用制限を超過。壽命ストックはまだ殘っているが力がない、死亡するぞ
「マジで!? この流れで俺、落下死すんの!? きゅ、九千坊! 鬼裂! ジャワ!! な、なんとか……」
TIPS€ お前の現在のビルドでは空を飛ぶことはできない。あーあ、これだからバカ耐久再生前提突撃ビルドは潰しが効かないよね~
「殺すぞクソヒント!!」
TIPS€ 死ぬのはお前だ
ヒントと愉快な罵り合いをしている間にもどんどん地面が近くなる。
恐怖を殺し、神を滅ぼし、逆さ富士を攻略しても、人は空を飛ぶことはできない。
頼みの綱の熊野と八咫烏もなんか、ダメそうだ。
「おや、死ぬのかな」
凡人が、非常に當たり前の事実に気づく。
人は高い所から落ちたら死ぬ。
夜通し、警察に撃ち殺されたり、ジャパニーズホラーに祟り殺されたり、深海魚みたいな化けに食い殺されたり、神に殺されたり。
とにもかくにも死に慣れすぎた男が、今更、
「ぎゃあああああああアアアアアアアアアアアアアア!!? 嫌アアアアアアア!! 助け、ヘルプ!! ヘエエエルプ!! グレン!! クラーク!! アシュフィールーー」
無意識に、仲間の名前をぶ。
ああ、雲を突き抜け、風に巻かれて、もう地面がーー。
「居、たああああああああああああああ!! 見つけたあああああああああああ」
「え? ヘブッ!?」
脇腹、衝撃、橫から!
かっ攫われた、落下終了。
「よ、いしょ! あーよかったぁ、間に合った……逆さ富士が消えたと思ったら味山さん、なんかずっと落ちてるんですもん、ほんとに焦りましたぁ~」
ぽいっと、米俵のように抱えられていた味山が、荷臺のような場所に放り投げられる。
「バイク……?」
落下中の味山をキャッチしたのはバイクだった。
ただ車がなく、黒いボディにりのラインがキラキラしてるだけの。
空飛ぶバイクだ。
「空飛んで――」
「試作型個人空中走行車”エア・ゼファー”、サキモリの研究班の自信作です。慣れるまではし縦難しいんですけど、走らせると気持ちいいんですよ?」
が、いる。
バイクを縦する、黒いライダースーツに黒いバイザー付きのヘルメット。
ボディラインのわかるスーツが似合いすぎていて。
「……その聲、お前、え?」
味山は、その聲を知っていた。
朝焼けの空の上、が黒いヘルメットを外す。
先がわずかに赤みがかった黒髪のポニテが、こぼれるように揺れた。
「んしょ、髪、崩れてませんよね?」
ヘルメットを外し、振り返る。
そっとライダースーツの元から取り出したのは”趣味の悪いお面”。
それを顔に當てたが振り返る。
「さて、味山さん、私は誰でしょうか?」
耳の面を被ったスタイルがはちゃめちゃに良いポニテの。
朝日に照らされたせいか、彼の耳は赤く染まっていて。
2人が被るは、耳の面。
あの日、あの夜。耳祭りの參加者達。
そのは鬼のを従え、指定探索者(國家戦力)と切り結び、アレフチームを最前へと見送った者。
TIPS€ 耳男、活限界
どろり。
味山の最強の道の使用期限が終わる。
耳の面が、溶け落ちて。
「よお、元気だったか? ――貴崎凜」
ぱさり。
が、その顔にあてがった耳の面を空に、高々と放り投げ。
「――今、元気になりました」
昔はなかったを伴う貌、ポニテの、いや、へと長したが朝焼けを見つめたような目で笑って。
「味山只人さん」
いつも覧いただきありがとうございます。
更新ペースが週一で申し訳ありません、たぶんそろそろ進化できるので長したらもっとたくさん更新できるようになると思います。
今、気づいたら凡人探索者、二部終わって1年は止まってたけどそろそろ4年目に突します。
商業書籍の刊行がどれくらい続くかにもよりますが、必ず完結させるのでどうか語の最後までお付き合いいただければ幸いです。
あとがき、もうし続きます、ぜひご覧ください。
◇◇◇◇
~富士山、最高峰3776メートル地點、剣ヶ峰にて~
《いや~”汝、只の人なりて”ある意味、味山さんの最も厄介なのは”耳男”よりもこっちの技能の方かもですね》
《あ、お疲れ様です、オイラ、バベルの大です、いや~驚きました。味山さんのアレ、アレタさんとかみたいな英雄屬の人間だけじゃなくて、まさか神種にも影響するなんて驚きました》
《あ、やだな、そんなに睨まないでくださいよ~オイラに別はありませんので貴がすっぽんぽんの全でいてもどうでもいいことです、いちいち意識されるほうがめんどくさいです。いやそれにしてもうまくいきましたね、セラフさんは異界の使い方が非常にうまい方ですけど、まさかこんな使い方があるとは思いませんでした、まああの人の出典はそういう奇跡を取り扱うものも多かったから當然といえば當然か、まあ、いいや》
《あれ? もしかして狀況がつかめていませんか? うーん、貴は頭の良い方だと思うんで簡単に説明しますね。イズ王國に掬った零落神としての貴は確かに消えました。淺間大神に力を返納し、逆さ富士を天邪鬼さんの仕掛けごと無理やりに消すという大偉業、それのエネルギーとなってね》
《ですが、”余ったんですよ”。味山さんの命をなんども吸収していたおかげで淺間大神はほぼ完していました。貴全部を使わなくても、淺間大神は逆さ富士と共にもとある場所に戻る事が出來たわけです、そして、あの熾天使セラフの協力で――あれ、セラフさん、マジすか、貴も殘ってるんですか? あ~なるほどなるほど、本當にあなた、”汝、只の人なりて”にアてられましたね》
《今の貴はどちらなんでしょうね? いやでもその髪の、黒と金の髪的にまざってるんじゃないですか? ああ、オイラは特に大きな事はしてないですよ、たまたま素材があったんで、ここに浮いてた貴たちの魂をれてあげただけです、でも謝したいというんならしてもいいです、ありがとうございますバベル君って言ってください》
《あ、言ってくれないんですね、まあ、いいや。で、貴、これからどうす――ああ、そうすよね、責任取ってもらわないとですね、えっと、多分ここからだと東の方角に行けば居ると思います》
《名前? そうですね、それはまあとりあえずあの人につけてもらえばいいんじゃないすか。貴たちを墮とした人に責任取ってもらってください、おいらは知らないです》
《あ、もうそろそろ行くんすね、はい、じゃあ、頑張ってください、ええ、期待しておきますよ。あの人の探索に貴が參加するのも、面白そうで――あ、飛んでいっちゃった、大丈夫かな、翼真っ黒じゃないですかwww》
《……今回はたくさん味方が出來ていいっすね、味山さん。――でも理解してますか?》
《貴方が一番強いのは獨りの時ですよ。このままだと、最強の狀態の最強の敵と、お荷をたくさん抱えた狀態で殺し合う羽目になりそうですけど》
《枷を外した神、き始めた腑分けされた部位保持者、それにあの最強の民族。いやあ、やる事がたくさんあって大変すね》
《教えたほうがいいっすかね、――まあ、いいか》
貞操観念が逆転した宇宙人の軍隊でエースパイロットの俺だけが唯一男な話【書籍化決定!】
『戦場は女のものだ。男は引っ込んでいろ』そんな言説がまかり通ってしまう地球外知的生命體、ヴルド人が銀河を支配する時代。地球人のエースパイロットである北斗輝星は、その類稀なる操縦技能をもって人型機動兵器"ストライカー"を駆り傭兵として活動していた。 戦場では無雙の活躍を見せる彼だったが、機體を降りればただの貧弱な地球人男性に過ぎない。性欲も身體能力も高いヴルド人たちに(性的に)狙われる輝星に、安息の日は訪れるのだろうか? カクヨム様でも連載しています。 皆様の応援のおかげで書籍化決定しました。ありがとうございます!!
8 77【書籍化・コミカライズ】三食晝寢付き生活を約束してください、公爵様
【書籍発売中】2022年7月8日 2巻発予定! 書下ろしも収録。 (本編完結) 伯爵家の娘である、リーシャは常に目の下に隈がある。 しかも、肌も髪もボロボロ身體もやせ細り、纏うドレスはそこそこでも姿と全くあっていない。 それに比べ、後妻に入った女性の娘は片親が平民出身ながらも、愛らしく美しい顔だちをしていて、これではどちらが正當な貴族の血を引いているかわからないなとリーシャは社交界で嘲笑されていた。 そんなある日、リーシャに結婚の話がもたらされる。 相手は、イケメン堅物仕事人間のリンドベルド公爵。 かの公爵は結婚したくはないが、周囲からの結婚の打診がうるさく、そして令嬢に付きまとわれるのが面倒で、仕事に口をはさまず、お互いの私生活にも口を出さない、仮面夫婦になってくれるような令嬢を探していた。 そして、リンドベルド公爵に興味を示さないリーシャが選ばれた。 リーシャは結婚に際して一つの條件を提示する。 それは、三食晝寢付きなおかつ最低限の生活を提供してくれるのならば、結婚しますと。 実はリーシャは仕事を放棄して遊びまわる父親の仕事と義理の母親の仕事を兼任した結果、常に忙しく寢不足続きだったのだ。 この忙しさから解放される! なんて素晴らしい! 涙しながら結婚する。 ※設定はゆるめです。 ※7/9、11:ジャンル別異世界戀愛日間1位、日間総合1位、7/12:週間総合1位、7/26:月間総合1位。ブックマーク、評価ありがとうございます。 ※コミカライズ企畫進行中です。
8 56傭兵少女と壊れた世界
人の文明はゆるやかに衰退した。 夜風に混じって結晶が飛ぶようになった世界。街が消え、國が飲み込まれ、生き殘った人々は失われた技術にしがみつき、わずかな資源をめぐって爭い合う。 そんな世界を巡回する移動都市で少女は暮らす。銃の腕を磨きながら、身よりのない子供たちとギリギリの生活を送る。大きな不満はないが充足感もない。しいて言うならば用意される飯が不味いこと。 少女は大人になりたいと願った。過酷な世界で少しでも自分らしく生きるために、ひたすら銃を練習した。必要なのは力と知識。生き殘りたければ強くなれ。いつか大人になった時、街を出て、自由に生きる傭兵を目指すのだ。 しかし、街を守るはずの大人に裏切られた少女は船から落とされてしまう。さぁこれからどうしよう。唐突に放り出された外の世界。されど少女はしたたかであった。たとえ亡者のような人間に追われても、巨大なミミズに捕まっても、大國の兵士に襲われても……。 世の中はくそったれだ、と愚癡をこぼしながら傭兵少女は銃を握る。 ○ 物語の進行にあわせつつ、週二話を目安に更新します。基本的に週末です。更新が遅れたら叱ってください。
8 111異世界はガチャで最強に!〜気づいたらハーレムできてました〜
ある日、青年は少女を助けて代わりに死んでしまった。 だが、彼は女神によって異世界へと年はそのままで容姿を変えて転生した。 転生の際に前世の善良ポイントで決めた初期ステータスと女神からもらった 《ガチャ》と言う運任せのスキルで異世界最強を目指す。 処女作ですので長〜い目で見てくれると光栄です。 アルファポリス様で好評でしたのでこちらでも投稿してみようかと思い投稿しました。 アルファポリス様で先行更新しているので先の話が気になればそちらをご覧ください。 他作品も不定期ですが更新してるので良かったら読んでみてください これからもよろしくお願いします。
8 184異世界転生~神に気に入られた彼はミリタリーで異世界に日の丸を掲げる~
右翼思想の持ち主鹿島良太はある日天照大御神によってクラスごと神界に召喚される。有無を言わせず適當な特典を與えられて異世界に送られる中八百萬の神の一體稲荷輝夜に気に入られ一人好きな能力を特典に選べることが出來た。彼はその特典に選んだミリタリーを使い異世界に日本を作ろうとついてきた輝夜と奮闘する。
8 92転生して3分でボスバトル!〜ボスを倒したら邪神になったので異世界の學校に通う〜
2025年人類は完全なVR空間を作ることに成功し、50年には日常的に使われるようになっていった。 VRを使った娯楽といえばVRゲームと言われ、中でも"VRMMORPGジェネシス"は世界中で人気のゲームとして有名だった。 ジェネシス最強プレイヤーのシンがある日正體不明の何かにクラスまるごと異世界に転移してもらうなどと言われ、文句を心の中で言った その何かは心が読めシンのことを不快に思い殺した… 殺されたと思ったら何故か目の前にはドラゴンがいて!? ジェネシスゲーム內の力が使えたシンはドラゴンを殺した。 そしたら何故か邪神になって!?銀髪の幼女が懐いて!? 當分の目標を決めたシンは異世界の學校に通うことになり…
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