《見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~》三十三話

拓斗がスキルを発していないこのタイミングを狙い、俺達が一気に勝負を決めようとした瞬間。

「はぁ、うぜぇ」

面倒臭そうな聲音だが、確かにハッキリとそう呟いたのが俺の耳まで屆いてきた。

するとどうだ。拓斗の呟きと共に、俺が放つ串マシンガンが拓斗のをすり抜け、一発も當たらなくなったではないか。

その瞬間、俺は悟る。

話に聞いた「相手の攻撃が全て効かない」「突然攻撃をくらう」という、拓斗の謎のスキルが発したのだと。

「コレが話に聞いた「影魔法」か。確かにこっちの攻撃は効いてないみたいだな」

スキルが発してからもずっと攻撃を與え続けているのだが、一向に攻撃が効いている様子は無い。

炎!」

「アイスアロー!」

フーリの炎も、マリーのアイスアローも、どちらも拓斗に屆いている筈なのに、それらが効いている様子がない。

まるで、蜃気樓にでも攻撃しているのではないかと思えるぐらいの手応えの無さだ。

炎熱剣ではなく炎を選んでいるのは、多分拓斗が人間という、魔よりも小さな相手だからだろう。

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今は切れ味よりも攻撃範囲の方が重要だろうし、そういう意味では破で周囲にも影響が及ぶ分、攻撃範囲が広い炎の方が有効だ。

「姉さん下がって! カイトさんはそのまま攻撃を続けて下さい!」

「っ! ああ!」

「了解!」

マリーが何か思いついたのか、俺とフーリに短く指示を飛ばしてきた。

恐らく魔法による範囲攻撃を仕掛けるつもりだろう。その証拠に、いつの間にか武を弓から杖に持ち替えている。

その意図を察した俺達は、マリーの指示通りの行に移る。

俺は引き続き全方位からの串マシンガン、フーリは一度拓斗から距離を取る。この間僅か一秒。

  フーリが拓斗から充分距離を取った所で、マリーが両目を瞑り、意識を集中しだす。

「すぅ……酸の嵐!」

「ファッ!?」

「アイスウォール!」

まさかの魔法に、つい素っ頓狂な聲を出して驚いてしまった。いやあのマリーさん? それは流石にやり過ぎじゃありませんかね?

いや、確かに拓斗のスキルが未知なのは分かるよ? 観客に被害が及ばない様に氷の壁は作ったのも分かるよ?

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でもさ? 問題はそこじゃないと思うんだ。

ていうかマリーって何気に「酸魔法」よく使うよね。すっげえ使いこなしてるし。

「なあマリー?」

「やるからには全力です」

俺が何か言う前に先手を打つマリー。いや、拓斗が相手なんだし別にこのぐらいしても良いとは思うんだけどね?

でもさ? さっき俺の戦い方をジト目で見てたよね?

だが、今ここでそれをツッコむのも微妙な空気になりそうなので、何も言わずにいる事にした。

というより、ツッコミをれる余裕が無さそうというのが正しいか。

何故なら、拓斗を閉じ込めている氷の壁。その一部に突然「ピキッ」っという音を立て、一筋のヒビがったからだ。

「なっ!?」

まさかこんなに短時間でヒビをれられると思っていなかったのか、マリーが驚きの聲をあげる。

「へぇ、なかなかいじゃねえか。この氷の壁。やるなぁ。流石はカイトの仲間って所か?」

その後に聞こえてくる拓斗の聲には、一見マリーの事を稱賛している様で、その実この攻撃を仕掛けたマリーを嘲笑うかのようなが含まれていた。

ピキピキピキピキッ

最初は一筋だったヒビも、二本、三本と次第にその數は増えていく。

「いけない! せめて酸だけでも!」

その様子を見て、マリーが慌てて杖を掲げるのと。

バキィィィィンッ!

はそんな音を立てて、氷の壁が々に砕け散ってしまうのはほぼ同時だった。

「お、おい、こっちに來るぞ!」

観客の一人が、悲鳴にも似た聲でそうぶ。

氷の壁が砕け散った衝撃で、會場の至る所に飛び散る氷の破片。それらが一斉に観客席に向かって飛び散って行き。

「サンダーボルト・散!」

「神聖壁!」

「セイクリッド・シャワー!」

観客席と武舞臺の間に、突如三つの影が割り込んだ。達だ。

そのまま氷の破片が観客席を襲う直前、達三人の勇者が飛び散る氷の破片を全て叩き落としてくれた。

それを見て、俺はとりあえずホッとで下ろす。

良かった。もしあのまま氷の破片が観客席を襲っていたらと考えるとゾッとする。

フーリとマリーも同じ事を考えたのか、顔を青ざめさせながらも安堵の息をらしている様だった。

酸の嵐に関しては、氷が砕け散る直前にマリーが解除したのか、酸による被害が會場に出るという事はなかった。

「へぇ、勇者共もなかなかやるじゃねえか」

そしてただ一人、まるでこの狀況を楽しんでいるかのような聲音で話す者がいる。

「てっきりもっと被害が出るだと思ってたんだがな」

拓斗だ。

あともうしでも反応が遅れていたら、とんでもない被害を出していたという狀況なのにも関わらず、そんな事微塵も気にしていないかの様な反応。

いや、実際に気にもしていないのかもしれない。

もし僅かでもそういう事を気にしているのなら、もうし聲や表に出ている筈だ。

それなのに、拓斗の興味は氷の破片を全て叩き落した勇者の方に向いている。まるで観客など視界にすらっていないのではないかと思える程に。

「本當はそこに座ってるギルガオン陛下さんの実力を拝めるかもと思ってたんだが、まあ思いの外面白いものが見れたから良しとするか」

拓斗はギルガオン陛下の方に視線を向けながら愉快そうに言った。

「ふむ、今は勇者杯の最中故、貴様の無禮な言いも聞き流してやろう。挑発に乗ってやれなくて殘念だ」

売り言葉に買い言葉ではないが、ニヤリと笑いながら拓斗の事を挑発するかの様な言いに、すぐ傍に控えているセバスチャンさんが小さく溜息を吐いている。

一國の王の対応としてはどうなのかと思わなくもないが、一人の人間としては非常に気分が良い反応に、俺は思わず頷いていた。

「……ちっ、言いやがる」

ギルガオン陛下の反応が面白くなかったのか、小さく舌打ちをしながらぼやく拓斗。

「まあいいさ。さあ、続きといこうぜカイト! こっからは手加減なしだ!」

不敵な笑みを浮かべ、心底楽しそうにそう言う拓斗を見て、俺は素直に気持ち悪いとじた。

目の前にいる拓斗は、本的な部分が俺達とは違うのではないか?

実は人間のフリをした、全く別の生きなのではないか?

そういう思考が脳に駆け巡る。

そうじゃなければ、自分が危険に曬した観客席の人達の反応にが痛まない訳がない。

今の観客席の狀況を一言で表すとすれば「恐怖」が一番しっくりくるだろう。

普通に勇者杯を観戦していただけなのに、突然自分の命が危険に曬されたのだ。いくら間一髪助かったとはいえ、その時の音や景、そしてが頭から消えてなくなる訳じゃない。

むしろ、自分の命が助かったという自覚が湧くと、次に襲ってくるのが「あのままだったらどうなっていたか」という恐怖心だ。

眼前に迫りくる、確かな死。避けようのない未來。それらを想像して、中には泣き出す者もいる程だ。

今は會場の衛兵や勇者杯の関係者の人達が忙しなくき回って、観客のアフターケアをしているから、観客席が落ち著きを取り戻すのも時間の問題ではあるだろう。

「……」

だが、だからと言って拓斗の態度が許容出來るかどうかはまた別問題だ。

相変わらず不敵な笑みを浮かべたままの拓斗には応えず、俺は無言でストレージからもう一本魔鉄バットを取り出した。

最初の一本と合わせ、それらを両方の手で構え、拓斗と相対する。

「おお? やっと本気になったか? いいねぇ、そうじゃないとなぁ。なあ「創世の使徒」さん」

「……は? お前、一何言ってんだ?」

突然意味の分からない事を言い出す拓斗に、俺の頭は理解が追い付かなかった。

そうせいのしと? なんだそれは?

「カイト君、何だそのソウセイノシトというのは?」

「初めて聞きましたよ?」

拓斗に視線を向けたまま、一切の油斷を見せずに二人が尋ねてきた。

いや、聞きたいのはこっちなんだけど……。

「さあ、おっぱじめようぜ! 創世の使徒――近衛海斗!」

その言葉を合図に、拓斗が一気に俺との距離を詰めてきた。

「なっ!?」

あまりにも突然の事過ぎて、反応が僅かに遅れてしまう。

拓斗が頭上から振り下ろしてきた手刀を、俺はギリギリの所で回避する。だが、無理矢理避けた事で勢を完全に崩してしまった俺は、続く回し蹴りによる二発目の攻撃を躱せそうになかった。

だが。

「させません!」

マリーの聲と共に飛來した氷の矢が、俺と拓斗の間を一直線に通過し、拓斗の攻撃をわずかにだが逸らしてくれた。

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