《モフモフの魔導師》478 鳥の巣にて

「急に來てすまない」

「いえ。嬉しいです」

朝から修練や畑仕事の日課を終えて、正午に差し掛かろうという時間に、ファルコさんが住み家を訪ねてきた。

鳥獣人のファルコさんは、魚も好のはずなので、先日釣った魚を分けてもらったお禮に、シルーロのをお裾分けして食べてもらう。

味すぎる…。なんだこれは…?」

「シルーロです。魔なんですけと、食べたことないですか?」

「ない。だが、かなり味い」

用に使って、味付けして揚げたを丸呑みしていく。いい食べっぷり。

「ふぅ…。ご馳走になった。味かった」

「それは良かったです。ところで、今日は何か用ですか?」

「急で悪いが、傷薬を作ってもらえないかと思って來た」

「それは構いませんが、怪我されたんですか?」

「俺じゃない。里の數人がな」

鳥の獣人の里は、高地にあると聞いた。薬師はいないのかもしれない。

「今から作ります。足りなければ、在庫も全て持っていって構いません」

「すまん。助かる」

森で共に素材を集め、調合しているとファルコさんが呟く。

「凄いな…。ウォルトは、どこでそんな技を?」

「薬學の師匠がいます。あとは文獻ですね。誰にでもできます」

「そんなことないと思うが…。それにしても、何故薬が必要なのか、理由すら聞かないんだな」

「友人が困っている。理由はそれで充分です」

言いたくないことかもしれない。でも、困っているから來たはずだ。そのくらいわかるし、恩に著せるつもりもない。

「そうか…。実は…鳥の獣人の里に、厄介な魔が出現して困っている」

「厄介な魔?」

「何度も里を襲撃されているが、撃退はできても中々討伐できない」

「何という魔ですか?」

「知らない。俺は過去に見たこともない魔だ」

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鳥の獣人達が束になっても討伐できない魔…か。

「正直、俺達では討伐が難しい。ギルドに頼んで、冒険者を派遣してもらうか悩んでいる」

「それがよさそうですね」

「だが、住人は里の場所を知られるのを嫌がっていてな。そんなこと言ってられない狀況だが」

「何故、嫌がるんですか?」

「わからん…が、俺も良いことだと思えない。巣の場所を知られたくない鳥のように、おそらく本能的なものだろう」

確かにあり得そうな理由だ。

「ボクで良ければ、里に治療に行こうと思ったんですが、そうなると難しいですね」

必要があれば、現地で調合できると思ったけれど。

「ウォルトなら構わない。お前の薬のおかげで、俺達が飛べるようになったことを皆知ってる。何人もの恩人だ」

「大袈裟です。でも、可能なら連れて行って下さい」

里の現狀と、討伐できない魔のことが気になる。しでも力になれるなら。

「傷薬ができました」

話しながらも手は止めなかった。どうにか、必要な數も準備できたし、他にも必要だと思うを準備して里に向かおう。

「凄い景です…」

「そうか?普通だろう」

「絶対違います」

里までの移は、直線的で早く著くということで、ファルコさんがボクを抱えて飛ぶことになった。後ろから抱えられて、空を飛んでいる。

もちろん、初めての験。

これは、凄すぎる。風も気持ちいい。

「まだ遠いんですか?」

「そうでもない」

人を抱えていると思えないスピードで飛行するファルコさん。これでも安全に運んでくれてるんだろう。

「魔はどのくらいの周期で?」

「早いときは、三日と間隔を空けずに來る。もう五回だ」

相當粘著質な魔だと予想できる。

「ソイツはどんな姿を?」

「それがなんとも奇妙でな……むぅっ!?」

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「どうしました?」

「里で何か起こっている!急ぐぞ!」

里で?何処だ?

見渡すと、まだ遙か先の高臺に小さく集落のような建が見えた。

人が駆け回っているように見えるけど、ボクの視力では花の種くらいにしか見えない。ファルコさんは凄い視力だ。

ぐんぐん近づく。

やがて、里の様子がボクにも視認できた。

複數の鳥の獣人が、何かと戦っている。

一目で魔とわかる生は、背に蝙蝠のような大きな羽を広げ、逞しい獣の如き四つ足の軀に、蠍のように鋭い尾。

獅子のようなタテガミを備え、顔はまるで狂気を帯びた人間。歪んだ表を浮かべている。

文獻に覚えがある姿。

「あの魔は、おそらくマンティコアです」

「マンティコア!?なんだそれは?!」

「遙か昔から存在し、古代種と呼ばれる魔です」

古代種に出會うのは、剣歯虎(サーベルタイガー)以來。

「古代種だか何だか知らないが……里で好き勝手はさせん!」

ファルコさんの言う通りだ。

だが、マンティコアは通稱『人喰い』と呼ばれる古代種の魔。世界各地の人族が、古くから畏怖する存在。如何にマンティコアの力が脅威であるかを語っている。

「がはぁっ…!ぐぅっ…」

「がぁっ…!」

勇敢に立ち向かうも、吹き飛ばされる鳥の獣人達。

「あ……ぁ…ぁ…」

マンティコアの眼前に、逃げ遅れた子供が殘されている。

「グルルフ…!」

涎を垂らすマンティコアに睨まれ、腰が抜けたのか餅をついたままかない。

このままでは危険だ。

「…ちぃっ!!」

「ファルコさんっ!全速力で飛んで、アイツに向かってボクを投げてください!!」

「何故だ!?」

「あの子を助け出します!ボクを信じて下さい!」

「…俺もそのつもりだ!!いくぞっ!」

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更に加速するファルコさんに抱えられながら、集中を高める。

「わぁぁぁ~!」

「…ジュルッ」

にじり寄る魔は、いやらしい笑みを浮かべ、子供を一口で飲み込めるほど大きく口を開けた。

「ウォルト!いけっ!」

失敗は許されない…。

目が乾くほどのスピードで飛行しながら、空中で詠唱する。

『氷槍(ステイリア)』

ウォルトを放り投げたファルコが、空中で軌道を変え魔に向き直ると、三本の巨大な氷柱が子供とマンティコアの間を隔てるように突き刺さっていた。

なんだ…あの巨大な氷柱は…?どこから現れた…?

突然の出來事に、何が起こったのか理解できない。目を離した今の一瞬で、何が起こったというんだ…?

は、後退りながら唸りを上げている。

そして、腰を抜かして座り込んでいた子供を優しく腕に抱いているのは……見たこともない人間。

ソイツは俺を見上げた。

「ファルコさん!皆に薬を!持ってきた布袋に、『治癒』の魔石もっています!怪我の酷い人から治療して下さい!傷に翳すだけで大丈夫です!」

この聲は…。

信じられないが……アイツはウォルトだ。

どういうことだ…?何故、人間の姿に…?いつの間に…?

「後で説明します!今は、皆を安全なところへ避難させるのが先です!コイツは、ボクに任せてください!」

…そうだな。とりあえず話はあとだ。

怪我人に駆け寄って、言われたとおり魔石を翳してみる。すると、淡いとともに傷が癒えていく。

「ファルコ…。助かったぜ…。魔が…いきなり襲ってきやがって…」

「喋るな。今は回復に集中しろ」

傷が比較的軽度な者にも、魔石と傷薬を渡して治療を手伝ってもらうか。

と子供は、今のに遠くへ避難しろ!ける男は、俺を手伝え!」

「わかったわ!」

「おう!」

協力もあって、徐々に回復していく男衆。

「くっ……いってぇ…!」

「けど…これは…よく効くぜ…」

幾度もの戦闘で疲労が蓄積しているところに、突然の襲撃では如何に力自慢の獣人でもたまったものじゃない。幸い、命を落とした者はいないようだが。

そんな中、人間の姿をしたウォルトに目をやると、マンティコアと対峙している。

気味の悪い顔で見つてる魔と、平然と視線をけ止め、靜かに佇むウォルトはどちらもかない。

「おい、ファルコ!あの人間は誰だ?!さっきのでかい氷は、魔法だろ!?」

「……俺の友人だ。この薬と魔石をくれた…な」

子供をしかと抱いたまま魔を観察する。助けるのが間に合ってよかった。

初めて遭遇したけれど、凄まじい威圧を放っている。同じ古代種でも、剣歯虎など比べものにならない。

文獻には、マンティコアが過去カネルラに出現したという記述は無かった。飛行能力を備える魔故に、他國から流れてきたのか。若しくは…出會った者を全て屠っているか。

いずれにせよ、倒す必要があることに変わりない。何より、眼前で子供を殺されるのは免だ。

「お兄ちゃん…。誰…?」

助けた男の子は、まだ飛べないであろう小さな羽を震わせている。

「ファルコさんの友達だよ。危ないから、大人達のところへ行ってて」

「うん」

ゆっくり地面に下ろしてあげると、元気に駆けていく。怪我もないようで良かった。

「グガァァァ!!」

隙ありと言わんばかりに、マンティコアが振り下ろした鋭い鉤爪を、『強化盾』で跳ね返す。

すかさず魔法を放つつもりだったけれど、先に魔が歪んだ笑みを浮かべ、あり得ないほど縦に口を開いた。

キィィ…と口に魔力が集まり、高まっていく。直後、ゴゥッ!と吐き出された熱線を、即座に『反』する。

「ギイィィッ!」

我がを焦がした魔は、激しく悶えた。魔の後ろに生える立派な木々が、一直線に燃え上がる。まともに食らえば、タダでは済まない威力の魔法。

『水撃』

消火するために、すかさず水魔法を放つ。

大量の水の中に、圧した水の刃を隠蔽し、マンティコアを切り裂いたけれど、傷ついても倒れる素振りはない。

「……グルルルァァァァアア!!!」

五月蠅くて、耳障りな咆哮。

魔法は効いているようだが、この程度の威力では無理か。

それにしても、表が気にらないな。

なのに表かで、蔑むような顔が苛つかせる。捕食者として、人を貪り喰ってきた故の驕りに見えてしまう。

『餌が生意気に抵抗するな』と言われているようで、不愉快極まりない。

もしかすると、コイツが何度も里を襲撃していた理由は、鳥の獣人達を嬲っていたんじゃないのか?

満足いくまで遊んで…皆が弱りきったところを味しく頂くために。

『大地の憤怒』

鋭い土の槍を數本隆起させると、素早くを躱された。連続で放つも、俊敏なきで全て躱される。

魔力反応を知している風ではないから、危機察知能力が高い、若しくは単純に反応が速いか。

「ギイィィィ!!」

遠距離で素早く移しながら、連発で熱線を繰り出してくる。

ボクの背後には、集落の家が並んでいるので、こちらもきながら全てを『魔法障壁』でけ止める。

『反』してもいいけれど、これ以上森を燃やすのは忍びない。考え無しに魔法を放つのは、魔ならではの兇行。

が放つ魔法は興味深いけれど、じっくり観察する必要は無い。炎魔力を螺線狀に固め、球のように圧して、魔特有の発法で放っているだけだ。

「グオォォ!」

が突っ込んでくる。

魔法を使えるのが、お前だけだと思うな。

障壁を解除した一瞬で手を翳し、同様の魔法を発して浴びせると、が燃え上がった。

「ギイィ!グァァァァ!!」

自分の放つ魔法に耐がないのは、し意外。ちゃんと効いている。

「ギイィャア!」

漆黒の翼を広げ、上空へと逃れるマンティコア。

「逃げるのか?」

人語は通じないとわかっているが、つい話しかけてしまう。空中で靜止して、見下ろしながら腹立たしそうな表。まるで、言葉の意味を理解しているかのように。

悔しいのなら、逃げるような真似をしなければいい。ただ、この距離では魔法は躱される。チャンスを伺いつつ、逃亡できる態勢…というのが奴の狙いに思えた。

古代種と呼ばれるだけあって賢い。ここで逃がせば、再び現れるだろう。若しくは、他の集落が襲われる。コイツは、ここで倒さなければならない。

ボクにリオンさんやマードックのような投擲技があれば……と悔やんだところで、ないものねだり。

どうしたものか………そうだ。

「ファルコさん!お願いがあります!」

「どうした!?」

名を呼ぶと、低空飛行で直ぐに來てくれる。

「アイツに接近して、魔法を浴びせます。ボクを摑んで、飛んでもらえませんか?」

「いいぞ」

ファルコさんは後ろからボクを抱えて飛び立ち、上空で魔と対峙する。

「驚くほど軽い…。何故だ?」

「ファルコさんが飛びやすいように、重を魔法でほぼ無くしてます」

「そうか…。……ウォルト」

「なんでしょう?」

「この闘いが済んだなら、後で話を聞かせてくれ」

「はい」

視線を切らずに見つめていると、徐々にマンティコアの傷が回復している。

特有の再生能力。過去に遭遇した魔にも稀にいた。多の傷では、致命傷にならないということ。

は突然口を大きく開け、下を向いた。

里を焼き盡くすつもりか。

「里に向かって魔法を放とうとしてます。跳ね返します」

「わかった」

ファルコさんの機力で素早く魔法の軌道上に到達し、放たれた數本の熱線を『反』で弾き返すも、躱されてしまった。

そうくるのは予測済み。

これならどうだ。

「グルルァ…?!」

弾き返すと同時に、箱型に魔力を展開して魔を中に閉じ込める。

「羽ばたく鳥のしさを知れ」

『雷鳥の筺』

「ギイィァァ!!」

フレイさんから學んだエルフ魔法。雷魔力で形された無數の鳥が、所狹しと箱の中でしてマンティコアを攻撃する。

だが、流石の耐久で凌ぎきられた。それでも、痺れできが鈍った今が好機。

『飛燕(ファンローグ)』

『気』と風魔力で形した大型の燕を発現させる。上空から急降しながら広げた翼でマンティコアの首を切斷すると、漆黒の翼は羽ばたくのを止め、と切り離された頭部が共に落下を始めた。

「倒せたと思いますが、確認に行きましょう」

「あぁ…」

ゆっくり地上に降り立つと、どす黒く変したマンティコアの頭部は、苦悶の表を浮かべていた。ピクリともかない。どうやら息絶えている。

「倒せたようです」

「本當に助かった。何と禮を言っていいのか…」

「里の皆さんが弱らせていたから、とどめを刺せただけです。それに、ファルコさんがいたから、空で仕留めることができました。ありがとうございました」

「…そうか」

貴重な経験ができた。世界にはこんな魔もいるのだと、を以て新たな知識を得たことは何にも代え難い。

「あんた、すげぇな!」

「凄い魔法だった!おかげで里が助かったぜ!」

「ありがとうございます」

駆け寄ってきた數人に謝を告げられ、なんとも照れくさい。

やれることをやっただけで、倒せたのはたまたま。高尚な理由があるわけでもない。眼前で、友人の大切な人や、い子供が死ぬのが嫌だっただけ。

「ウォルト。し離れた場所で話そう」

「怪我人と、焼けた森を治療してからでいいですか?」

「すまないが、頼む」

住人全員の治療と焼けた森の回復を終えたあと、ファルコさんに真実を話して、何故変裝しているのかを説明した。

信頼できると思える人以外に、魔法が使えることを知られたくない。獣人の魔法使いということで、好奇の目で見られたくないのが一番の理由で、目立たずにひっそり生きたいから…と正直に話した。

サバトの一件で、人の噂は信じられないほど速く、そして広域に伝播することを知ってる。

「なるほど。よくわかった」

「里の皆さんを信用しないわけではないんですが、抵抗があります。ファルコさんには、いつか伝えようと思っていました」

「教えてくれて有り難い。上手く誤魔化しておくから、心配しなくていい。俺も決して口外することはない」

「そうしてもらえると助かります」

「驚いたのは事実だが、ウォルトはウォルト。何も変わらないさ」

ふっ…と笑う表が渋い。

う~む……。大人の余裕が相変わらず格好いいな。

「マンティコアの死から、幾つかの素材が獲れると思います。家を壊されたようなので、復興の足しになればいいんですが」

「いいのか?討伐したのはお前だぞ」

「ボクには必要ないです」

「何か禮をしなければ、俺の気が済まないんだが」

話していると、さっき助けた子供が駆け寄ってくる。

「人間のお兄ちゃん!さっきはありがと!」

「どういたしまして。大丈夫かい?」

「うん!」

頭をでながら思いつく。

「どうしてもお禮が必要なら、し子供と遊ばせてくれませんか?」

「なんだそれは?禮じゃないだろう」

「お禮に選ぶなら、相手が好きなものがいいですよね?ボクは、子供と遊ぶのが好きなので」

「…ふっ。それでは仕方ないな」

子供達と魔法を使って遊ぶと、楽しんでくれてるようで良かった。何故か大人も集まってきて、クローセと同じ狀況になったけれど。

里に住んでいると、中々魔法を目にする機會がないから、珍しいんだろうな。

変裝していれば、堂々と披することができるし、恥ずかしさも薄れる。テムズさんに謝だ。

ウォルトが子供達に魔法を披するのを、里の男衆と肩を並べて遠目に眺める。

「おい、ファルコ。アイツは何者なんだよ?絶対、普通じゃないだろ。俺の知ってる魔法じゃない」

「ただの俺の友人だ。そして、里にとっては恩人だな」

あまり、深く訊かないでくれると助かるが。

「違いねぇ。連れてきてくれて助かったぜ。魔法ってのはすげぇもんだ。闘う他に、治療もできるんだからな。魔法を馬鹿にしてたけど、心をれ替える」

「化けの首をぶった切ったのはシビれたな。燕の魔法は、最高にイカしてた。まるで、獣人がるような魔法だ」

「ふっ…。そうだな。お前らの言う通りだ」

俺の友人は、凄い奴だ。

「まほうは、おもしろい~!」

「はじめてみるけど、たのしい!」

「そう?ありがとう」

今、ウォルトがっているものが、ほんのし前に兇悪な魔を屠ったのと同じく魔法であると思えん。鮮やかで、暖かさすらじる魔法は、皆の心を惹きつけて放さない。

鳥の獣人には、魔法など必要ない。

頼らなくとも、なに不自由なく生きていける。

そう考えていたし、それが俺達の共通認識。だが、『便利だ』『格好いい』『怖い』と表現されている魔法が、人を楽しませることを初めて知った。

心を高揚させる魔法を目にして、魔法も悪くないと思える。子供も大人も、目を輝かせて笑みを浮かべている。

闘いで傷ついただけでなく、心まで癒やし、焼けた森すら復活させるような魔法使いが存在するとは。

「お兄ちゃん!もっとまほう見せて!」

「いいよ。次は、魔法の鳥を見てもらおうかな」

「「「わあぁぁぁ!!すご~い!!」」」

「こりゃあ…見事なもんだ…」

「本當ね…」

の翼を持つ鳥が出現し、優雅に空を飛ぶ。まるで生きているかのよう。

「こんな魔法もあるよ」

「かっこいい~!もえてる!」

「こっちの鳥は、キラキラしてきれいだよ~!」

炎や氷で形された鳥も現れ、自在に飛び回る。子供達は大喜び。

獣人ゆえに、俺達の先祖である鳥に対する心を理解し、模した魔法で楽しませているに違いない。なんと優しく、粋な魔法か。

今日の恩は、決して忘れることはない。

大袈裟ではなく里の危機を救い、直後に皆を笑顔にした男のことは、これからも里で語り継ぐ。

たとえ本人の意思がどうであれ…だ。

「ありがとうございました」

「こちらこそだ。またな」

「はい。また」

ウォルトを住み家に送り屆けたあと、その足でフクーベのギルドに向かい、鑑定人を里に連れ帰って、マンティコアとやらの死骸を見せたところ、目が飛び出そうなほど驚いていた。

「Aランクパーティー複數での討伐も困難なんだぞ!とても信じられん!」と力説されたが、意味がわからん。ただ、『お前達では無理だ』と言われているのは理解できた。

だが、「俺達が力を合わせて倒した。疑うのなら、お前達には譲らない。道屋に素材を売るだけだ」と押し通す。

実際、巖山の高臺にある里には、空を飛べなければ來ることなどできない。どの冒険者に訊いても、頷く者などいまい。

素材の他に魔の研究にも使うらしく、死骸は高額で買い取られた。集落の修繕をしても、余りある金額で。

さてと…。まずは、魚を釣って友人に持って行くとしよう。

そして、里の子供達が「魔法を使えるようになりたい!」と騒いでいることを伝えたら、どんな反応をするだろうか。

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