《ひざまずけ、禮》第3章79話 導かれし聖域

その時、頭の中に何かが響いた。この覚は、し前にあった頭の中に映像が流れた時に似ている。その音は、段々と大きくなっていた。これは・・・鈴の音?

シャラン、シャランと規則的に鈴の音が頭の中に流れていた。・・・何故だろうか、そんなことは無いはずなのに、何処か懐かしいじがする。

聞いていて心地よい、とても落ち著く音。ずっと聞いていたいと思ってしまうほど、しい音だった。ただの鈴の音のはずが、そう思えた。

・・・そして、もう1つ。鈴の音に混じって、聲が聞こえていた。誰かが、何かを唱えるような聲。力強く、だけど優しい聲に包まれるような覚に陥った。

無意識に目を瞑っていたようで、気づいた時には目の前が真っ暗になっていた。ゆっくりと目を開けると・・・そこに赤というは存在しなかった。

純白で、無垢で、染まることを知らないで包まれていた。目の前には、誰かが背を向けて座っていた。何かを唱えているようだ。その聲から、先ほどまで頭に響いていた聲の正が、目の前の人だとわかった。

聲を出せずにいると、目の前の人が唱えるのをやめ、僕の方を向いた。目と目が合い、目の前の彼はにっこりと微笑んだ。僕は彼を、この笑顔を知っている。そんな気がした。

「君は式神として、十分に役目を果たした。これからは人間として、この世を生きなさい。生きて、たくさんの世界を見るのです。君ならきっと、良い魂をそのに宿せる。」

彼はそういうと、また優しく微笑んだ。式神という単語、そして特徴的な容姿。間違いない、彼は・・・師だ。そしてやはり、僕は彼を知っている。會ったことがない、彼を。

彼はまた背を向け、どこかへと歩いていく。待って、僕は貴方に聞かなければならない事があるんだ!師である、貴方に!

だが、その言葉がついに口から出ることは無かった。そして気がついた。聲に出せないのではなく、そもそも喋ることが出來ないのだと。

彼の口ぶりから察するに、今の僕は、きっと人間では無いのだろう。生きかどうかすら怪しいところだ。何か得られるかと思ったが・・・諦めるしかないのか?紅き街から、人類を救うことは出來ないのだろうか。

・・・と、その時だった。背を向けて進んでいた彼の足が、ピタリと止まった。再度こちらを向き、目を見開いてこちらを見ていた。

何かが伝わったのだろうか、彼は僕の元まで戻ってきて、じっと見つめてきた。・・・こいつ、結構イケメンだな。なんか腹立つ。

「ふむ・・・迷い人の魂か、式神の自我か・・・どちらにせよ珍しいことだ。こんなにも早く意志を持とうとは。・・・何やらお困りのようだ。」

凄いな師ってのは。いや、この人が凄いだけなのか?まぁいいや、気づいてくれたのは都合がいい。だが紅き街やイザレアのことをどうやって伝えるか・・・。

すると、彼は突然笑いだした。ひとしきり笑って、言った。

「なかなかどうして、波萬丈というか、奇想天外というか・・・君はどうやら、來るべくしてきた・・・いや、慿くべくして憑いた魂のようだ。」

微笑みながら、そう言った。

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