《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》第三騎士団

騎士――それは民を守るために己を鍛え上げた、國の矛だ。

武力組織である彼らは、その力をみだりに使ってはならない。

騎士団が戦うのは、王のため、主のため、そして民のため。

國の秩序を守り民の矛となるべく、彼らは日夜厳しい鍛練に打ち込んでいる。

港町であり、シナモンから北に向かったところにあるアザゼルの街。

シナモンより數段大きく、大陸棚の広がっているこの場所でも、魔と人間の激しい戦いが行われていた。

既に大陸棚に魔が押し寄せる自となっており、アザゼルの領主は一計を案じた。

敢えて水際での防衛を放棄し、魔を陸地に引してから戦う作戦に切り替えたのだ。

その作戦は、目論見通りに上手くいっていた。

海という地の利がない狀態であれば、水の中で自由にき回ることができる相手のメリットを潰すことができる。

またアザゼルはかつて戦の多かった頃の名殘で、市街戦を想定し街自り組んだ作りになっている。

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故に二重三重と防衛ラインを設定することが可能であり、今のところその作戦は見事にハマっていた。

「ちいっ、ブラストがやられた!」

「ヒーラー、回復頼む!」

最前線で戦っているのは、冒険者達だ。

急依頼で徴集された彼らは、水棲の魔達を相手に闘を続けている。

やってくる魔は、四等級から三等級の魔が多い。

に水を纏い、水魔法を使いこなすウォータードール。

をし、同じく水魔法を使ってみせるブルースライム。

そこに近接戦闘が可能なリザードマンやマーマン達が合わさることで、相手方もパーティーを組んでいるかのように連攜した攻撃を行ってくる。

だがその連攜は、日夜命がけの戦いを続け、阿吽の呼吸を摑む冒険者達と比べれば一等劣る。

故に冒険者達は、負傷者や落者を出しながらも、比較的有利に戦うことができていた。

冒険者達がバテ始めた頃、ドオンッと腹に響くような銅鑼の音が聞こえてくる。

その意味を理解した彼らは、更に大きく後退していく。

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下がった彼らが線を作った先にいるのは、特に火力に優れた魔法使い達による特別編の部隊だ。

通った線をなぞるように、魔法使い達があらかじめ準備しておいた魔法を使う。

「「ギィヤアアアッッ!!」」

練りに練った一撃を放ち、疲弊した様子の魔法使い達は急ぎ後退していった。

本來なら追撃のチャンスだが、攻撃を食らいてんやわんやになっている魔達にそれをするだけの余裕はない。

ザッ、ザッ、ザッ。

冒険者達が下がるのと後退するように前に出てきたのは、恐ろしいほどに足並みの揃った軍隊だった。

まるで一匹の生きであるかのようにを響かせながらやってくる一団は、白銀の鎧をそのに纏う騎士達である。

「我が第三騎士団の力を、魔共に見せてやれ!」

「「「おおおおおおおおっっ!」」」

騎士達が鞘に収められていた直剣を抜き放つと、シャラリと金屬のれ合う音が聞こえてくる。

中から姿を現したのは、魔力含有金屬であるミスリルでできたミスリルソードだ。

その剣には、己の家名を示す紋章が彫り込まれている。

彼らは足を速めても一糸れぬことなく、統率の取れたまま、魔へと接敵する。

「「「おおおおおおっっ!!」」」

ある者は剣で、ある者は魔法で、またある者は武技を使い、魔達を言わぬ骸へと変えていく。

達も応戦しようとするが、彼らの攻撃は容易く避けられ、そして騎士達の一撃は的確に魔の命を奪っていく。

數は魔の方が圧倒的に多いはずなのだが、騎士達はまったく寄せ付けることなく魔達を圧倒している。

「――シッ!」

その剣技は容易く魔皮を裂き、脈に屆き致命傷となる。

「フレイムランス! フレイムランスッ! フレイムランスッ!」

騎士団員が放つフレイムランスは、大量の魔力を込めて放たれるシングルアクションの魔法だ。

魔力を込めて威力を高めてあるため、その炎の槍は一発の発で対象だけでなく周囲にまで衝撃と熱を伝える。

「武斷(ブレイク)ッ!」

騎士の放つ武技は、左右の敵と合わせ容易く三匹もの魔を仕留めてみせる。

その騎士はそのまま二度、三度と武技を重ねて使い、周囲にいる魔を一掃してみせた。

先ほどの冒険者達の戦闘がおままごとだったかと思えるほどに激しい攻勢によって、あっという間に死がうずたかく積み上がっていく。

騎士団員とは、戦闘のエキスパートである。

その門戸自が非常に狹く、また騎士に至るまでの道のりも生やさしいものではない。

十五歳を迎えて年になると同時に選抜試験に合格してからは、厳しい基礎訓練と軍事演習を行い続ける地獄の日々を送ることになる。

だけではなく、武技と魔法の技能を磨いた彼らは、騎士の名に恥じないだけの戦闘能力を持つに至る。

このアザゼルにやってきた第三騎士団は、その中でも更に生え抜きの人材で固められた騎士団である。

王國には、王に忠誠を誓う騎士団が合わせて十二存在しており、それぞれに騎士団ごとの強みと役割がある。

その中でも第三騎士団の特徴は、魔の討伐。

徹底した実力主義の気風は、元冒険者などの在野の人がスカウトされ団した人間が何人もいることから見ても明らか。

討伐に関するスペシャリスト集団だ。

彼らは王命をけ、數ある港町の中でも特に劣勢なアザゼルの街へやってきた。

日夜を問わない強行軍での進軍でありながら、誰一人道中で落することなく、全員がこの場に立っている。

第三騎士団の団員達は一定の距離は開けながらも、小隊規模での連攜を取りながら魔相手に戦い続けていた。

魔法を何発打っても、武技を何度放っても、彼らが止まることはない。

魔力が切れたのなら役割を代して前に出る、魔力が回復したのなら合図をしてから再び魔法を放つ。

白兵戦から魔法戦闘までこなす萬能の騎士団員達は、冒険者達のようにすぐに息切れをすることなく戦い続ける。

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