《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》151話 2032年8月31日 その2

――様々な意匠の扉。

空中にぽっかり浮いているそれらが一斉に開いていく。

その中にむ闇の中から、ソレらは現れた。

「刺だ、やっぱ最高の食べ方は刺に限るってさ~」

「あら、ふふ。どうしたんですか、あなた。そんな東洋風の調理法を気にるなんて」

「アイデス、お前は間違っている。串焼きだ、塩と花で味付けして食う。それが至高だ」

「そうかな、僕はやっぱりから揚げが一番だと思うけど。ニホンの醤油で下味をつけてカラッとね」

見目しい男

目にした瞬間、目が潰れてしまいそうなまばゆさすらじるし、すぎる容姿の男

闇を纏った男と

を纏った男と

それらが扉から現れて。

「ああ、にしてもあのニホン人は味かった。ザクロと合わせて食うのが最高だったな」

「ええ、あなた、私もおもわず付け合わせのザクロを食べてしまいました。ふふ、これであなたの元にいないといけない期間がまたびちゃいましたね」

「嫌か?」

「ふふ、もう慣れました」

いちゃつき始める闇を纏った男

互いに互いをうっとりした顔で見つめる。

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そのまま、深くを、舌をわして。

「あーあ、また始まったよ。バルドル様、僕はそろそろ帰ってもいい? 正直、飽きたって言うか。ほら、ここまで人間の數がなくなると、もう面白そうな運命も見れないかなって」

「……いや、待て。ノルン、そうでもなさそうだぞ」

「えー? おや?」

を纏った男とが、それに気づいた。

彼らにとっての足元、そこに確かにいる存在を。

「えー、驚き! まだここにいてる人間がいるんだ。へへっ、なんかうれしいもんだねえ」

「……妙だな。戦士は先ほどの剣士と武で最後だったはずだが」

「ん……あん……あなた……、北歐の男と糸が人間がどうとか言ってるけど……ん……」

「気にするなよ、今は余の事だけ見ておけ、我がしきよ、ほら、舌をもっと出せ」

空に浮く男、地面を歩く味山。

赤いセーラー服型の探索裝備、折れた刀。

TIPS€ 貴崎凜の探索裝備。

死を覚悟した彼は最後の戦いに最も思いれのある裝備で挑んだ。

いつの日かこれを著た時の探索の続きを行うために。

あの日から止まった時間を進めるために。

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だが、もうすべては意味のない傷だ

味山が、それをそっと持ち上げる。

「貴崎は?」

誰にともなく聲を。

だが、その聲ははっきりと。

「……ほう」

「へえええ」

「……あなた」

「……ああ、わかってる。はは、レアモノだ。これまで出會った事のないほどの」

4人の男の関心を引いた。

を纏う男は、心したような表で味山を見下ろす。

闇を纏う男はむつみ合うのをやめて、味山を見下ろす。

4人は瞬時に、理解した。

足元、地を這う奇妙な定命の者の危険を。

「――貴崎は?」

言葉はなく。

その問いかけは十分に、男たちへと通じて。

「「「「味しかった」」」」

無表

なんの表かさないままに、男たちが答える。

「そうか」

TIPS€ 警告

「ふむ、ヤドリギの香り、驚いた、俺を殺しうる存在だ」

「うっわ、面白! この子、運命がない!!」

TIPS€ 警告、警告、警告

「あなた……気づいてる?」

「もちろんだ。余を恐れる必要のない、定命でありながら富める者、そのになんと多くの命を宿したことか」

TIPS€ 警告、警告、警告

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ぷちゅう。

脳が、暖かい。

手腳が冷たい。

この世にはムカつく事が多すぎる。

だから――。

TIPS€ 警告、複數の神種の権限を確認、すべてが神話においての中核クラスの神を保有

TISP€ 警告 神種・種別:擬神

TIPS€ 神はすでにバベル島の各異界に帰還した

TIPS€ バベルの大の呪いが神種の神を縛っている

「ぶっ殺す」

「!!」

「バルドル様、ここは僕が。冥界夫婦も手出しは無用だよ」

「運命の子せがれ、アレはそなたには荷が重いぞ」

「そうよ、見ただけでわかる、なんて濃い死の香りを纏う定命の者……冥界のコレクションにしいけど……ふふ、暴れ出しそうね」

「逆だよ。バルドル様も、冥界夫婦もコレと相が悪すぎる」

金髪の年。

手には細いあやとりの糸のようなものを巻いていて。

「わかるだろ? 一番僕らが恐れるべき存在。ただ強いだけの凡人だ「ぐだぐだうるせえ」「え」

き。

一瞬の事だった。

空中20メートルほどの場所に浮いている男

味山の迎撃のためにわずか、降りた年。

その首が90度逆にねじ曲がっている。

耳の大力を用いて跳んだ味山だ。

ラリアット、年の首を上腕と肩の間に挾みこんで、ごきり。

どちゃ。

華奢な年のは著地までの數秒の間に、首を無殘に捻じ曲げられて、そのまま味山にごみのように放り捨てられる。

「ひゅ~、やるな、段取りに狂いがない」

「まあ……」

「ふむ、戦士の館に招きれたいな」

けろっとした顔で拍手を始める男、いや神種。

味山は無表のまま、殺すべき相手をただ見つめて。

「次はそこのだ、一番弱そうだからな」

「あは。あなた、この子、私気にった、人にしてもいいかしら?」

「またか? この前も定命の若い男を一人閨で殺してしまってたろ?」

「貴方は定命の若い人10人以上使いつぶしたじゃない」

いちゃつく闇を纏った男。

味山が、獲を距離を測る食獣のような足取りで狙いを定める。

ただ、ただ、ただ一刻も早く。

目の前の存在を殺したい。

ただしでも、早く。

「ぐちゃぐちゃとやかましい口だな、二度と軽口叩けないようにしてやる」

「……どうでもいいが、定命の者よ、後ろはいいのか?」

「――っ!?」

輝く男の言葉に一瞬の停止を見せた味山。

本能的に、背後を振り向いて。

「あ、バカ、バルドル様、ばれたじゃん」

視界いっぱいに移ったのは、只の拳―ー

「――が」

衝撃、暗転、衝撃、衝撃。

がとんでもない速度で吹き飛ぶのがわかる。

地面に何度もバウンドし、がれきに何度もを削られ、建の土臺にぶつかってようやく止まれた。

「あ……?」

きーん。

耳鳴りが、する。

目が見えない、暗い。

毆られた。

「いてて、うそでしょ。人間のとはいえさ、見てよこれ、首、完全にねじ曲がってない?」

「ああ、見事だ。頸椎どころか首回り、肩関節まで影響があるな。怪力神とは東洋の言葉だが……まさにそれと言えよう」

「ニホンのサキモリ、使徒候補共の誰よりも強いんじゃあねえの~」

「さっきの刀を使うの子、あの子を思い出すわね、定命ので私たちに傷をつける事が出來るなんて」

ああ、暗くて痛くて、ぼーっとする。

その中でムカつく連中の聲だけが聞こえてくる。

味山は、ぐちゅぐちゅと響く音を聞く。

耳のが発した音だ。

年の拳の一撃は味山の顔面をつぶれたトマトに変えていたらしい。

「げっ、待って、待って、治ってるんだけど……えーっと待てよ、どれどれ。”耳の”……? 何これ!? でも権能でもない力じゃん! ちょっとちょっと人間、どれほどの種類がいるんだよ」

「どうした、ノルン」

「バルドル様ー! やっぱこの男、なんか変だよ。サキモリ、えっと指定探索者っていう人間の戦士たちとか、さっきの赤髪ちゃんとかとはまるで違う力を持ってる。てか、これはもう、どっちかって言うと、こっち側に近いね」

「運命は見えるか?」

「いや~それがもう面白いのなんの。決められた運命も宿命もないからなんも読めないの。手繰る糸がここまでない定命の者は初めてみるよ。ははっ、面白、でもたくさん、たくさんの可能を持ってる、凡人の怒り、斧取り扱い、……部位保持者? なんだ、これ」

「……バベル島に連れていくか。本なら何かわかるかもしれない」

「んー、確かに我らが吊られたお方ならそうかもだけど、いいのかなー、毒蟲を家に招く事になるきがするけど」

ぐだぐだと、奴らの聲がうるさい。

ぐちゃぐちゃ。顔にようやく痛みが戻ってきた。

再生している。治りはやけに遅いが。

視界が戻る。

「あたたたあ、よいしょっと。あー元通り。痛かったー」

90度に曲げていた首を元に戻す金髪年。

どうやらあの程度では殺せないようだ。

「次は、引きちぎってやるよ」

「え、もう立ち上がるの? てか顔治ってるし。怪以上の再生能力……ねえ、君もしかして、僕たちと同じ擬神だったりしないの?」

「……次は、首を引っこ抜いて、潰す。それでもダメなら心臓を引き抜いて殺す」

「……つくづく思うよ。ニホンを片付ける前にキミが出てこなくてよかったって。僕たち同盟にとって、君みたいに訳わかんないのが一番怖いからね」

「手を貸そうか? ノルン」

「いーや、バルドル様、この人多分、神殺しを何回か功させてる人間だ。バルドル様、本番は人間を終わらせた後の他神話との戦爭なんだから、ここで萬が一があったらダメでしょ」

年が首を鳴らし、味山の前に立つ。

顔の再生を終えた味山も、ゆらりと立ち上がる。

「なあ、北歐の。もしかして、こいつが”最強の人間”じゃないのか?」

「……いや、わからない。俺はてっきりあの赤い髪のがそうだと思っていたが……」

まだ、頭がじんわりと溫かい。

赤い空、いなくなった人達、全部が終わった世界。

「……貴崎は?」

「食べたよ、も皮も骨もも魂も記憶も。もう二度と廻る事はない。ごめんね、でも僕たちはそういう生きなんだ」

「そうか。強かったか?」

「とっても。そして、とってもおいしかった」

たらり。

金髪の年がその甘い時間を思い出し、よだれを垂らす。

「勇敢で優秀で冷徹な戦士だった。まず両腕を食べた。それでも剣をこう、口に咥えてね。痛かったよ、あれは」

「……」

「次に腳を食べた。それでも這って進んでくるんだ、ああ、だから次に胎を食べた。ここでようやく泣き始めてくれたよ、彼の運命が途切れだした。ああ、そうだ、そうだ。味しかった、おいしかった。……うん? ああ、今、ようやく君の名前が視えたよ」

金髪の年。

ある神話系の中で運命をつかさどる存在とされた彼が、神に限りなく近い存在、神が見る夢の住人が、微笑んで。

「君が、味山只人? なら納得。剣士の子は最期、ずっとずっと君の名前を呼んでいたよ。かわいそうだったから、口は最期まで殘してあげたんだ」

「そうかよ」

「あれ? 怒らないの? 彼は君をとても――」

「考えるの、めんどくせえ」

「「「っ」」」

味山の言葉に、神種たちが押し黙る。

「お前、不死か。どんだけ再生するんだ? 試してやるよ」

「心配しなくても、君の耳のほどじゃない。それは、定命の者どころか、神でさえ持ってはいけない力だ」

「あっそ」

後も先もなく、味山が己の持つ殺すための力を駆させる。

耳の力、そして、神の殘り滓たちの力、そのすべてを道として扱う探索者ゆえの力。

「ジャワ、火、借りるぞ」

ぼおう。

「……それは、プロメテウスの火……か?」

闇を纏った男が目を見開いて聲を。

「いや、ジャワの火だ」

「……え? ま、待って、君、その火、何を!? どうするつもり!?」

金髪の年は何を見たのだろうか。なくとも、ひどくろくでもないものを目にしたような顔でぶ。

味山は右手に燈った火、それをそのまま己のに著火させる。

もういい、何がなんだかわからないが、目の前のこいつらがのうのうと息をしてる事が気にらない。

「全部、全部壊してやる……」

「やっぱり、君が、最強の人間……”滅ぼすもの”か?」

耳男。すべてを壊す最強の探索道を味山が使おうとして。

がちゃん。

「え?」

「あ?」

「あら」

「ほう」

扉。

味山の背後に。

それが開いて。

「――悪いね、味山只人。君の命の張り所はここじゃないよ」

「お前――」

だらけの腕、だらけの

赤い髪にボロボロのスーツ。

染めの手袋が、味山を扉へ引きずり込んで。

「あ――」

「すまない、本當にすまない。だが、君だけはここで消費する訳にはいかないんだ」

呆気にとられる神種たちを後目に、味山はそのまま扉に飲み込まれて。

がちゃん。

扉が、閉まる。

「済まない、本當に、本當にすまない。完全に、完全に、西表がしくじった。ああ、君、本當に都合のいい事を言っている自覚はある、恥知らずの自覚ももちろんある、そのすべてを飲み込んで、まことに恐なのだが」

闇の中、聲が聞こえる。

ひどく上ずって。

ひどく狼狽して。

ああ、完全にやらかした人間の聲だ。

味山はこんな時なのに。

サラリーマン時代。

200枚以上の本日締の伝票の元データエクセルの數式が間違っていた事に気づいた時の同僚を思い出していた。

「世界を救ってはくれないだろうか」

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