《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》ボクと一緒に寢るの、嫌?
早百合さんたちが帰った二時間後。
俺は久しぶりにゆっくりと眠れると、安心してベッドに座った。
何せ、この半月は毎晩桐葉が押しかけてきて、セクシーなナイトウェア姿でして、俺の我慢が限界に達すると睡眠毒で眠らせるの繰り返しだった。
それは確かにドッキドキのワックワクではあったものの、心臓に悪い。
「今日は久しぶりに何も考えず、ゆっくり眠るぞ」
意気込むように口にしてから、俺はベッドの中に潛り込んだ。
そして、を枕に倒そうとしたところで部屋のドアが開いた。
「ハニー、まだ起きてる?」
「うぉう!?」
変な聲を上げながら、俺は全腹筋力を総員して跳ね起きてしまった。
「どど、どうしたんだ桐葉? 今日は一緒に學校に行ったんだからもう添い寢は無しだろ?」
まくしたてる俺の顔を、桐葉は上目遣いに見つめながら、枕を抱きしめた。
「ひとりで寢るの寂しくて」
「いやいやいや、寂しいっ、て……」
そこで、俺は気づいた。
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今の桐葉はいつものように明るくもなければ、妖艶なじでもないことに。
なんだか借りてきた貓のようにおとなしくて、うつむきがちな表は、どこか寂し気にすら見えた。
「あのね、ボクも今日はひとりで眠るつもりだったんだよ。一緒に寢るのは、稲に獨占されている間だけって、ハニーとの約束だもん」
狹い歩幅で、一歩一歩を確認するようにベッドへ歩み寄る桐葉は、最近のセクシーナイトウェアではなく、白くて清楚なじのネグリジェだった。
なのに、今日の桐葉は一段と大人っぽくじる。
「でもね、一度ハニーと一緒に寢る安心を覚えちゃったからかな、獨りでベッドにると、凄く寂しいの。変だよね、今までは、いつも獨りでベッドの上に寢転んで、こうして音楽を聴きながら眠っていたのに」
ころんと転がって実演してみせたのは、いわゆる胎児ポーズだった。
背中を丸めて、手足を折りたたむ彼に、羊水に浮かぶ胎児が重なった。
その景は無機質で、が漂白されるような空虛さがあった。
「これが、ボクのわがままなのはわかっている」
を起こして、桐葉は四つん這いになって俺の腳に覆いかぶさった。
そうして、ベッドに手を著き上半をばして、ハチミツの瞳で俺の瞳を覗き込んできた。
寶石のような瞳に、俺は心を奪われるように魅った。
「だから、約束とかは関係ないの。お願いハニー、もうえっちなことしないから、今日から一緒に寢て。それとも、ボクと一緒に寢るの、嫌?」
不安げに顔を傾けながららした言葉を聞いて、俺は自分の中で何かが溶けていくのをじた。
どれほど寒い吹雪に耐えられる人も、一度溫かいお湯に浸かると、もう出ることはできない。
する人と眠る心地よさを覚えた桐葉に、獨りで寢ろなんてのは、酷だろう。
俺も同じだ。
桐葉たちとこんなに楽しい毎日を過ごしてから、前の生活に戻されたら、きっと耐えられない。
「嫌じゃないよ。桐葉」
一瞬笑みを見せてから、桐葉は申し訳なさそうにまつを伏せた。
「護衛役なのに甘えん坊でごめんね。ボク、前より弱くなっちゃったかな?」
「ああ、桐葉に會って、俺も弱くなったよ。でも、それでいいんだ。人は家族が増えるほど弱點が増えて弱くなる。だけど、家族と一緒にいる時は、前の自分よりずっと強い。だから、家族みんなで協力して、家族を守るんだ」
俺の言葉にハッとして、桐葉は目を濡らした。
「ハニー……」
甘い吐息が鼻腔をくすぐる。
亜麻の髪に縁どられた貌に迫られて、空気越しにも彼の溫が伝わってくるようだった。
いつもの俺なら、この狀況に興しておどおどして、どうやって逃げようか考えていたと思う。
でも、今は自然と彼をしたかった。
桜のくちびるにキスをして、彼を抱き寄せた。
腕の中で桐葉は驚いたようにをくして、だけどすぐにやわらかく弛緩して俺にを預けてくれた。
熱くった彼の口を、舌でひとめぐりしてから、俺は彼をベッドの中に招きれた。
好きなの子と一緒なのに、いつもの的衝は起きなかった。
ただ俺は、桐葉を安心させたくて、守りたくて、彼の救いでありたかった。
「おやすみ、桐葉」
「うん、おやすみ、ハニー」
俺に依存してしくなくて、俺以外の人とも付き合えるよう、俺が休んでいる間も桐葉だけ學校に通わせた。
だけど今は、この子に一瞬たりとも寂しいとは思わせたくなかった。
まず持って生まれたハチの能力が原因で無視され、イジメられ続けた彼を包む布でありたいと願い、俺は彼と抱き合った。
すると、せっかくここまではムードがあったのに、とある現実に直面した。
「なぁ、これ絶対に腕がしびれるぞ?」
「うん、そうだね」
今までは仰向けの俺に、桐葉が覆いかぶさったり、腕に抱き著いて寢ていた。
けれど、互いに橫を向き合っている狀態で抱き合うと、互いの腕が相手のの下敷きになる。
アニメなんかだと無視されているけど、このままで寢るのは無理な気がした。
「じゃあハニー、気持ちよく抱き合える勢を考えよ」
甘えるようにじゃれる桐葉を可く重いながら、俺らは互いに制や手足の位置を変えていく。
お互いのを探り合うように、楽しみながらじゃれ合った。
「とりあえず上側の腕は背中に回して抱き寄せていいよね」
「そうだな」
「腳は、ハニーが上側の腳をボクの腳の間にれて挾むと、うん、重さの負擔はないかな」
「あと下側の腕だけど、これはどうしよっか?」
「桐葉のウエスト細いから、俺はお腹に回せば潰されないけどな」
「ボクの腕をハニーのの下敷きにしたらしびれちゃうよ」
「でも片腕だけ遊ばせておくのも、あ」
俺は手を下にばして、桐葉の手と人繋ぎをした。
「これなら、片手で背中の、もう片手で手の平の溫をじられるぞ」
「あ、この勢好きかも」
「じゃ、今日から毎日こうやって寢ようか?」
「ううん、もっといい勢あるかもしれないし、毎晩一緒にいろんな勢考えよ。目標は四十八種の寢方を考える事だよ」
「相撲かよ」
失笑をらしながら、俺は桐葉を抱き寄せる腕に力を込めた。
やわらかくて、あたたかくて、いい香りの桐葉と互いの存在を共有し合いながら、俺は深い眠りに落ちて行った。
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