《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》451 の子になっちゃうよぉ~!

アンナが自己紹介を終えると、生徒たちがざわめき始める。

無理もない。

男のミハイルが、急に遠くへ引っ越し……。

として、別人のアンナが編してきたのだから。

その場で立ち盡くす俺に、アンナが手を振る。

「タッくん~☆」

これには、周りの生徒たちも驚きを隠せない。

だって俺たち二人は、仮にとはいえ、彼氏彼の関係みたいなものだから。

何も言わなくても、友達以上の関係に見えるだろう……。

そこへ宗像先生が「靜かにせんかっ!」と一喝し、場をなだめる。

生徒たちが靜かになったところで、アンナに「新宮の隣りに座れ」と促す。

コツコツと音を立てて、優雅に歩いて見せるアンナ。

よく見れば足もとは上靴ではなく、ヒールが高いローファーだ。

大きなリボンがついた可らしいデザイン。

完全に、デートモード。

嬉しそうに、俺の隣の席へ座るアンナ。

「タッくん。今日からよろしくね☆」

「あ、ああ……」

この時、心の中で2つの強い気持ちがぶつかり合っていた。

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それは安心と寂しさ。

目の前に元となるミハイルがいるのに、として振舞うアンナ。

せっかく俺のために、學校へ編してくれた彼には悪いが……。

「そこは、ミハイルの場所だ」と思ってしまった……。

ホームルームが終わると、宗像先生が俺を呼びつける。

「新宮! ちょっと話がある。一人で事務所へ來いっ!」

「は、はい……」

話し方からして、きっとお説教だろう。

次の授業まであまり時間がないのだが、とりあえず、事務所へ向かう。

って、教科書を一冊も持って來なかった奴が、何を言ってんだか……。

事務所へると、宗像先生が不味そうなコーヒーを用意して、俺を待っていた。

またアレを飲まされるのか。

「なにを突っ立っておるか? 早くソファーに座れ」

「はい」

俺は二人掛けのソファーへ腰を下ろし、反対側のソファーにガニで座る宗像先生。

こういう時の先生は、絶対に怒っている。

のあまり、太ももを閉じないから、今日も紫のレースが丸見え。

しんどい。

「……新宮。一どうしてこうなったんだ? 私は古賀を呼び戻せ、と言ったはずだが。なぜ裝したブリブリのアンナが編したんだ?」

「えっと、それは俺にもわかりません……ずっと連絡が取れなくて……」

そう答えると、宗像先生は深いため息をつく。

「はぁ……どうせ、お前たちの歪んだ表現のせいだろ?」

「え、どういうことですか?」

「數日前のことだ。急に古賀から私に電話がかかってきてな。遠くへ引っ越すから、代わりにいとこを編させてくれと言われたんだ」

「ミハイルがですかっ!?」

「當たり前だ……。でもその本人は引っ越していないよな? 現に今も裝してクラスにいるのだから」

「うっ……」

何も言い返せなかった。

「去年の運會を覚えているか?」

「あ、はい……ミハイルがMVPを獲ったんですよね」

「うむ。その時に私が何でも願いを葉えてあげると、約束したろ? あれを使ったんだ古賀は」

「?」

俺が黙って首を傾げていると、宗像先生が代わりに答えてくれた。

「わからんか? ヒソヒソ聲だったからな。古賀はあの時『オレのいとこをいつか編させてください』と私に頼んだのだ」

「なっ!?」

「私もその時は、裝する趣味とか知らなかったから、了承したが。まさかこんな形で利用されるとはな……」

「じゃあ……アンナはの子として、編したんですか?」

「ま、そういうことだな」

と肩をすくめて見せる先生。

ていうか、あんたが願いを斷れば良かったじゃん……。

アンナが編してきたことは、全く予想できなかった。

まだ頭の中は混している。

しかし、しずつ。彼……ミハイルがんでいることが見えてきた気がする。

俺と絶する際、ミハイルは男の自分を選んだことに傷つき、怒っていた。

のアンナではなく、素の彼を抱きしめ、キッスまでしようとした俺に。

つまり逆ならば、ミハイルは傷つかなったのかもしれない。

裝した狀態……完璧なの子。アンナならば。

「先生……ミハイルを、いやアンナを子として、編させたんですよね?」

「そりゃそうだろ? だってお前らが作った設定だし……それに古賀を取り戻すには、噓を突き通さないとなぁ」

「でも、中はあくまでも、男のミハイルですよ? トイレとか、更室とか一どうする気ですか?」

「うむ……私もそれは悩んだが、大丈夫だろう。便所は3階の職員用を使えば良い。スクリーングは日曜日だから、他の教員は使用しない。私ぐらいだ。逆にどんな下著をつけているのか、覗いてやろうと思っている」

ふざけろ。見ていいのは、俺だけだ。

「そ、そんな……無理があるでしょ?」

「無理なもんか。私はお前ら生徒たちが、一番だと言っているだろ! 更室も時間をずらして使わせたら良い。その辺はちゃんと配慮してやるから大丈夫だ。それよりも……いつまで持つか? って話じゃないのか?」

宗像先生はそう言うと、鋭い目つきで俺の顔を睨みつける。

「え?」

「あのな。私はお前ら二人とも、心配なんだよ……。裝してごっこをするのも結構だ。しかし、新宮。そのやせ細ったはなんだ?」

薄くなった板を、人差し指で小突かれてしまう。

「こ、これは……最近、食がなくて。でも、さっきアンナが作ってくれたサンドイッチを食べられましたよっ!」

それを聞いた先生は、鼻で笑う。

「フンッ。アンナね……どっちでも良いが、この前古賀に振られたのが原因だろ?」

「はい……」

「新宮、お前。あれから何キロ瘦せた?」

「えっと……3キロぐらいですかね、ははは」

笑ってごまかそうとしたら、更に宗像先生を怒らせてしまう。

「なめるな! 10キロ近く痩せたんだろ!? 何年教師をやっていると思うんだ! 見ればわかるっ!」

「すみません……その通りです。今52キロぐらいです……」

「ほれみろ。言わんこっちゃない! ちなみに長はどれぐらいある?」

「え、170センチですけど?」

俺がそう答えると、宗像先生は自のスマホを取り出し、何かを検索し始めた。

「おい……お前は、シンデレラになりたいのか?」

「え? なんのことですか?」

長が170センチで、重が52キロだと“シンデレラ重”になるんだよっ! の私より細くなりやがって!」

「はぁ……」

なんだ、ただの嫉妬か。

しかし……ミハイルがいなくなっただけで、俺はここまで落ちてしまうのか。

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