《ひざまずけ、禮》第3章85話 抜け落ちたもの

それから數日後のこと。

これから語るのは、いわゆるエピローグというやつだ。

あれほど大規模に繰り広げられた紅き街の災害は、本當にキレイさっぱり無くなっていた。それは、人々の記憶も例外では無い。

し前まではテレビでも中継されていたはずだし、何よりほとんどが紅き街に埋め盡くされたはずだから、知らないはずがないのだが・・・以前イザレアがやったように、紅き街の記憶がごっそりと無くなっていた。

そしてそれは、學校の人たちも。

比影「ねぇ、紅き街って知ってる?」

佐賀「あ?なんだそれ知らねぇよ。あれか?お得意のアニメとかラノベとかの話か?」

比影「・・・いや、知らないならいいんだ。それなら、それで。」

佐賀「???」

この通り、クラスのほとんどや、前に紅き街について説明を求めていた人達まで、何もかもを忘れていた。目の前で見てるはずなのにも関わらず、だ。天界で記憶処理でもしたのだろうか。

紅き街に関する記憶を持っているのは、僕とナーテアさん、そして箕浦くん。この3人だけだった。まぁ、あんな地獄は知らない方がいいだろう。掘り返すことでもない、信じないだろうし。

そして・・・それはナーテアさんについても同様だった。

比影「・・・クラスの一覧に、ナーテアさんがいない。」

佐和「先生に見せてもらったけど、出席簿にもなかったわ。先生自もそんな生徒知らないって。」

箕浦「それだけじゃない。誰も、アス・・・ナーテアさんのことを知らない。あれだけ好きだっていってた佐賀さえ、誰そいつ?って反応だった。」

記憶、記録、存在そのものがないことになっていた。在籍していたことを証明するものが、全て消え去っていた。

ただ、不思議なこともあった。確かに記憶も記録も無いのだが、彼の席だけが殘っていた。誰かの席という訳でもなく、空いている席として、そこにあった。先生に聞いてもよく分からないようだった。天界が修正し忘れたのか?

その空いた席が、僕らのぽっかりと空いた心のを表しているようで、し辛かった。彼との思い出が、昨日の事のように思い出せる。

それは家でも同じで。彼のいた部屋は空き部屋として鎮座していた。中を見ても誰かがいた形跡はない。いないことがこんなにも寂しいとは思わなかった。

と過ごした日々は、無かったことにされた。彼との思い出は、妄想となった。れられるかよ、こんなの。

比影「ナーテア、さん・・・」

部屋の中で1人、無意識にぽつりと呟いた。その日は枕を涙で濡らすことになった。

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