《ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~》第三百四十五話 イザークの苦悩②

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第三百四十五話

換のため連合軍のもとに赴いているイザークは、サーゴを歩哨に立たせて天幕の中に戻った。中ではゴノーが運び込んだ荷を開けて取り出している。

「その箱には食っているから丁寧に扱って。調理はそっちに。それはアザレア様の裝だから寢臺の辺りにお運びして」

の小さなミモザが、荷を運ぶゴノーに指示を出す。

あれやこれやと命じられ、ゴノーは口を尖らせていた。イザークも手伝おうとしたが、その時ギャミに聲をかけられる。

「イザーク様。ライオネル王國のロメリアと會談の予定があるのですが、お付き合い願えますか?」

敵と會いに行くと言われれば、嫌も応もない。ギャミを守るためにイザークは付いてきたのだ。

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もちろんですと頷くと、控えめにアザレアが聲を出す。

「あの、ギャミ様。私もご一緒してよろしいでしょうか?」

「……ええ、もちろんです」

一拍の間の後、ギャミは頷く。

「ゴノー。ここを頼んだぞ」

イザークは荷を運ぶゴノーに後を任せる。するとミモザに顎で使われているゴノーは、ムスっとした顔で頷いた。

「お戻りまでに、ご夕食を用意しておきます」

ミモザはゴノーの不機嫌に気づかず、ギャミ達を送り出す。

イザーク達が天幕の外に出ると、歩哨に立たせたサーゴがいた。サーゴは中のユカリが気になるのか、天幕の中を覗き見している。その顔はにのぼせて緩んでいた。

しっかりしてくれとイザークは思いながら、天幕の外で警備に立つライオネル王國の兵士に聲をかける。そしてギャミとロメリアの會談の話をすると、ちゃんと話が伝わっているらしく、こちらですと兵士に案される。

兵士の先導に従って護衛のイザークが先に歩き、中心でギャミが進み、その三歩後ろをアザレアが付き従う。

敵陣を歩くとやはり視線が刺さる。だが襲われることはなかった。

された先には天幕があり、二人の兵士が警備についていた。先導する兵士がギャミ達の訪問を告げると、兵士が頷いて通してくれる。

イザークが先に天幕にると、中には椅子とテーブルが置かれていた。上座の椅子には亜麻の髪のが座り、その背後には青い鎧を著た騎士と赤い服に眼鏡をかけたが立っている。

椅子に座るこそ、ライオネル王國の聖ロメリアだ。右に立つ騎士はイザークも剣をえた蒼騎士レイヴァンだ。赤い服のは初めて見るが、おそらくだろう。

「お待ちしておりました、ギャミ様」

ロメリアは立ち上がり出迎える。

「本日はお時間をいただきありがとうございます。ロメリア様」

「いえ、こちらこそ。何か不自由はございませんか? 必要ながあったらなんでもおっしゃってください。すぐに用意しましょう。我が軍の資は潤沢ですので」

「ほぉ、それは素晴らしい。しかし兵士には行き渡っていないのでは? 來る時に見ましたが、空に昇っている炊煙の數はないように見えましたが」

「見間違いでございましょう」

ギャミが笑い、ロメリアも笑う。

不敵に笑う両者だが、ギャミが突然笑うのをやめて真顔となる。

「やめるか。腹の探り合いは嫌いではないが、探っているとわかっている相手にやるのは馬鹿らしい」

「ですね」

ギャミがため息と共に言葉を吐き、ロメリアも頷いて席に著く。

「そう言えば今回の戦で、空を飛ぶ船。飛行船とでも言うべきものが出てきましたが。あれは見事でした。今度作らせてみようと思います」

ロメリアが、椅子に座るギャミに言葉をかける。確かに今回の戦爭では水責めをけたガンガルガ要塞を救うため、飛空船が投されて戦果を上げた。

「あれを作ったのは私だ。真似できるものならやってみろと言いたいところだが、原理はそれほど複雑ではない。再現ぐらいはすぐにできるであろうな」

椅子に座ったギャミは、あっさりと敵に報を與えてしまう。恐らく知られても困らない報なのだろう。

「真似したいと言えば、そちらが使っていた土をらかくしたりくしたりする魔道は便利そうだな。あれがあれば坑道を掘り土塁を築くのが楽そうだ」

「ああ、土の魔道は數を揃えるのが大変だったんです。あんなものを作るぐらいなら、炎や発を起こせる魔道を作るべきだろうと何度も言われて」

「分かる。上の連中はやれでかい発が起こせるとか、わかりやすい破壊力ばかり求めるからな」

ギャミがうんと頷いて続ける。

「敵兵を十人ばかし一度に吹き飛ばしてくれるのなら考えるが、現狀では費用対効果が合っていないのだ。高価な割に戦果が出ていない。風魔法で矢を防いだりする方が、ずっと効果がある」

「ああ、その魔道は私も提案したんですよ。そしたら、矢など盾で防げばいいだろうと言われて」

「だったらお前が防いでみろと言う話だ」

ロメリアの話に、ギャミも機を叩いて同意する。

會話が弾むギャミとロメリアを見て、イザークはただただ驚いた。両者は戦場を挾んで、戦や戦略を競い合った。言わば仇敵とも言える間柄のはずだ。しかし機を挾んで話す姿は、まるで舊知の友の如く通じ合っている。

「さて。談笑はこれぐらいにして、し歩きませんか?」

「歩く?」

「はい。我が陣中を散歩しませんか?」

このロメリアの提案には、さすがのギャミも驚いていた。

ギャミが自分から柄を換する質の役を買って出たのは、敵狀視察が目的である。そのことはロメリアも承知しているはずだった。にもかかわらず、自ら陣中を案するという。

「……では、し歩くか」

ギャミは一拍の間の後、頷いて椅子から降りた。

イザーク「なんかこの二人、めっちゃ馬があってません?」

アザレア「ちょっと悔しい」

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