《【書籍化決定】ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~》蒼馬の我慢強さが1あがった

最近困っていることがある。

「ひよりん、どうしたの? 難しい顔しちゃってさ」

ルインのとあるメッセージを眺めていると、聲を掛けられる。顔を上げると、ザニマスで同じユニットを組んでいる聲優の遠藤玲奈──通稱れなちが心配そうな表で私を見守っていた。

「れなち。ううん、何でもないんだ」

私はルインを閉じ、スマホを鞄にしまった。

もうすぐ木曜20時。ザニマス生放送の時間だった。そろそろ準備をしなくちゃいけない。

「なになに、もしかして彼氏?」

同じくユニットメンバーの富士見あきな──通稱あーちゃんが後ろから私の顔を覗き込んでくる。LIVEではいつも力強く私達を引っ張ってくれるあーちゃんは、オフでもテンションが高い。太のような子だ。

「ちょっとあーちゃん、全然そういうのじゃないからね?」

確かに私が見ていたのは男の子からのメッセージではあったけれど、彼氏とかじゃないんだから。

「ほんとぉ? ねぇひよりん気付いてた? 最近スマホ見ながら微笑んでる時多いからね?」

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「あ、それは私も思ってた」

「え、噓でしょ……?」

「ほんとほんと。幸せそ〜な顔しちゃってさ、私はてっきり彼氏でも出來たのかと思ってたけど」

私、そんな笑ってたんだ……自分じゃ全然気が付かなかった。これから気をつけないと。

「本當に彼氏とかじゃないの。ただ、ちょっと悩みがあって…………」

「悩み?」

「どした? 話聞こか?」

私はちら、と鞄の中のスマホに視線を落とす。さっきまで見ていたメッセージが、まさに悩みのタネだった。寫真付きのメッセージにはこう書かれていた。

『今日のご飯はこんなじです。食べるなら取っておきますけどどうします?』

「あのね…………私、最近太った気がするの」

ザニマス生放送を終え帰ってきたひよりんにご飯を振る舞い、晩酌に付き合っていた時の出來事だった。

「ねえ、どうかな? やっぱり太ったかな?」

「いや、そんなこと言われても……」

俺の手は何故かひよりんの腰に添えられていた。薄いルームウェア越しのらかいが手の中に広がって、正直大変よろしくない。

「お願い、正直に教えて?」

ひよりんは切実な表で俺の手を自らの腰に押し付け続ける。頬が赤く染まっていて、酔っているのが見て取れた。流石にシラフでこんなことはしてこないよな。されたら俺の理が終わってしまう。

「正直に教えてと言われても……元々の細さも分かりませんし」

LIVEではへそ出しの裝が基本のひよりんだけど、腰の細さがどれくらいかと言われるとパッと出てこない。お恥ずかしながらLIVE中は顔や、腳を見てしまってるからな…………。

「うーん、でも太ってないと思いますよ。全然細いですって」

「絶対ウソ。蒼馬くん私に気を使ってるでしょ? ほら、ちゃんと見て!」

「っ!?」

ひよりんは我慢ならない、というようにルームウェアをの下まで捲くりあげる。俺は咄嗟に目を逸らすも、視界の端での殘像が目に焼き付いていた。いきなり何てことをし始めるんだ!?

「ねえ、やっぱり太ってるわよね……? 目を逸らさないでちゃんと見て?」

「ぐっ……!」

ぎゅっと両手を握られ、逃げ場を失った俺は恐る恐る眼球をひよりんの方に寄せた。ゆっくりと視界におけるの専有面積が大きくなり、生理現象でが一點に集まってくる。靜まれ鎮まれ俺。

俺は必死にセミの裏側を想像しながら、ひよりんのお腹に焦點を合わせた。これは酔ってくっついてくるひよりんにしない為に編み出した、俺の最終防衛方法だった。気持ち悪いものを想像することで心を落ち著けるという高等技なのだが、正直役に立った試しはあまりない。

「ゴクリ…………」

まるでの雪原とでも呼んだらいいのか、ひよりんのお腹はとても綺麗で、俺は吸い寄せられるように目を離せなくなる。セミの裏側は完全にどこかに飛んでいってしまっていた。僅かにくびれた腰には健康的な程度にが付いていて……真冬ちゃんのが極限まで無駄を絞った機械的なしさだとするなら、ひよりんのそれは極めて的なしさだった。

一言で言えば────めちゃくちゃエロかった。あくまで俺の想だが、男が一番好きな型なんじゃないだろうか。そりゃ寫真集も売れるわ。

「どうかな…………? こことか贅が付いちゃってると思うんだけど」

「いっ!?」

ひよりんは握っていた俺の手を、そっと腰に添えた。ふにゃ、とらかいが指に吸い付き、俺の頭の中では火山が勢いよく噴火した。中のから汗が吹き出す。誰でもいい、今すぐ俺を冷やしてくれ。

「うう……やっぱり太ってるよね……」

難しい顔で自らの衝に耐えていた俺の様子を勘違いしたのか、ひよりんはやっぱりという表で肩を落とした。パッと手を開放された俺は、衝的に二、三歩距離を取る。自分が何をしてしまうのか自分でも分からなかった。

「はぁ……はぁ……」

凄い速度で中を駆け巡っていた。正直頭がおかしくなりそうだった。こんなことをされては、そう遠くない未來に俺は何かをしでかしてしまう気がした。自分がどれだけ魅力的なのか、ひよりんは分かっていないんだ。

「自分でもヤバいかな〜とは思ってたんだけどね……蒼馬くんのご飯が味しすぎて……止まらないのよ……」

ひよりんは椅子に座ると、俺が作ったおつまみのポテトサラダに箸をばす。そしてグラスいっぱいのビールで流し込むと幸せそうな表を浮かべた。太っているのを気にしている人の行ではないが、今のひよりんの言葉がに響いてツッコむことが出來なかった。

俺のご飯が味しすぎて……か。

「…………ひよりんさん、気にせず食べて下さい。全然太ってませんから」

を支配していた熱はいつの間にかすっかり引いていた。何度言われても、ご飯が味しいと言われるのは嬉しいな。

ひよりんは俺の言葉を聞いて、安心したようにらす。

「良かったあ……LIVEもあるから、太ってたらどうしようと思っちゃった……」

「LIVE……?」

ザニマスの次のLIVE報はまだ出てないはず。他のコンテンツのLIVEがあるのか……?

────この疑問は、すぐに解けることになる。

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