《【書籍化決定】ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~》初夏の攻防戦
ひよりんに手を引かれデパートの中にると、心地よく冷やされた空気がの熱気をさっと流していく。初夏と言っていいのか梅雨の終わりと言っていいのか微妙なこの季節の太は既に殺人的な熱線を地表に照していて、ただでさえオーバーヒート寸前だった俺の頭は完全に機能を停止していた。
「あぁ……涼しいわねえ。生き返るわあ」
「そうですね…………」
電車に乗り數駅移したはずだが、道中の記憶が全くと言っていい程ない。推しと手を繋いで外を歩くと人は記憶が飛ぶんだな。本當に凄い験をしてしまった。
休日の晝ということもあってデパートは人が多く、そんな訳もないのにその全員が俺たちに注目しているという錯覚に陥ってしまう。この中の誰かがひよりんに気が付いているんじゃないか。そう思うと手を繋いでいることが急に怖くなった。
怖いし、全がむずいし、心臓は壊れそうだし。
ひよりんとこれ以上手を繋いでいると、どうやら俺のが保ちそうにない。『推し』とは用法用量を守って正しい付き合い方をしなければ人に影響を及ぼす劇薬だった。
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「お、俺……ちょっとお手洗い行ってきますね!」
俺はすっと手を解いて、逃げるようにお手洗いに駆け込んだ。鏡の前で自分の顔を確認すると、そこには明らかに疲労が溜まっている俺がいた。顔には疲れが見えているのに、口元だけが不自然なくらいつり上がっている。まるで不恰好なピエロだ。俺、こんなににやけ面してたのか?
「ふぅ〜…………」
ひよりんと…………デートか…………。
いや、デートじゃないのかもしれないけど。男が二人で出かけることは必ずしもデートじゃないのかもしれないけど。でも、手を繋いでたらそれは確実にデートだろう。流石に。
ひよりんとデート…………なんだよな…………。
「あー……張するな…………」
ひよりんとは々あったし、全然張しないんじゃないかと思ってた。
抱っこしたこともある。や太を押し付けられたこともある。寢顔を見たことだってある。
それなのに────一緒に出かけるだけでこんなに張するなんて。
思えば、酔ったひよりんとは毎日のように話すけど、素面のひよりんとはそこまで流がない。どんだけ飲んでるんだあの人、という話ではあるが、とにかく俺がここ數年追いかけていたキラキラしたひよりんとはまだ全然仲を深められてないと言って良かった。
「頭おかしくなって変なことだけは言わないようにしないとな…………」
大きく深呼吸をして、俺はひよりんの元へ戻った。
◆
「蒸し蒸ししすぎて蒸しパンになっちゃうよ〜!」
電車から降りると、絶的な熱波が私を襲った。暑さで頭がおかしくなって、つい変なことをんでしまう。
アホなことを言ったものの、実際はそこまで暑くはなかった。隣におわす氷の王がズバズバと言葉のナイフを私に突き刺してくるから、いつでも心はヒンヤリ氷點下なのだ。夏場は一家に一人水瀬真冬だね。
「靜の場合は蟲になるのではなくて?」
「ちょっと、どういう意味よそれ! どうして私が夏場の道路脇で暑さにやられてひっくり返ってなきゃいけないのよ!?」
「試しにそこでひっくり返ってみたら? お似合いだと思うけれど」
ほらほらこれよ。何かもう真冬の隣にいるだけで気溫が10℃は下がってるんじゃないかって気がしてくるよね。実際何か出てるんじゃないの、見た目氷タイプっぽいし。
「ぬぎぎ………いつかギャフンと言わせてやるからな……」
キッ、と真冬を睨むも真冬は全然私のことなんか見ていなくって、私の視線の刃はしゅーんと真冬を貫通して空に消えていく。お返しと言わんばかりに太が目にって視界がフラッシュした。
「んぎゃ!」
「何してるの靜、早く行かないとお兄ちゃん見失っちゃう」
「ちょ、ちょっと目が眩しくて……」
ゴシゴシと目をこすると、紫のぐにょーんとしたが暗闇の中でぼんやりとる。これは完全に目がやられましたなあ…………。
「もう……何してるのよ」
「ぬおっ」
突如、私の手が拐される。手のひらを包むひんやりとしたは、私を引っ張ってぐいぐいと前に進んでいく。目を開けると、真冬が私の手を取ってすいすいと人混みの間を抜けていた。私は目が回復したことを告げず、繋がれた真冬の細い指をじっと見つめていた。
「…………」
…………実は私って、真冬に嫌われてない気がするんだよね。何だかんだこういうのに付き合ってくれるしさ。今だって私が誰かとぶつからないようにルートを選んでくれてるし。言葉はキツイけど、本気でダメージけるようなことは言ってこないし。私にならこれくらい言っても大丈夫だろーって信頼されてる気がしなくもないような。
もしかして真冬って…………ツンデレ?
「まったくもう…………可い奴め」
「気でも狂った?」
「そうかもね〜?」
「ちょっと、治ったなら自分で歩いて」
視線を上げると、遠くに蒼馬くんとひよりんの背中が見えてきた。付かず離れずの完璧な距離関係。
…………あの二人、いつまで手繋いでるの?
人類最後の発明品は超知能AGIでした
「世界最初の超知能マシンが、人類最後の発明品になるだろう。ただしそのマシンは従順で、自らの制御方法を我々に教えてくれるものでなければならない」アーヴィング・J・グッド(1965年) 日本有數のとある大企業に、人工知能(AI)システムを開発する研究所があった。 ここの研究員たちには、ある重要な任務が課せられていた。 それは「人類を凌駕する汎用人工知能(AGI)を作る」こと。 進化したAIは人類にとって救世主となるのか、破壊神となるのか。 その答えは、まだ誰にもわからない。 ※本作品はアイザック・アシモフによる「ロボット工學ハンドブック」第56版『われはロボット(I, Robot )』內の、「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」を目的とする3つの原則「ロボット工學三原則」を引用しています。 ※『暗殺一家のギフテッド』スピンオフ作品です。単體でも読めますが、ラストが物足りないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。 本作品のあとの世界を描いたものが本編です。ローファンタジージャンルで、SFに加え、魔法世界が出てきます。 ※この作品は、ノベプラにもほとんど同じ內容で投稿しています。
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