《【書籍化決定】ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~》靜「喧嘩売ってんのか」

推し推し1巻の発売を記念して、サイン本プレゼントキャンペーンが始まりました!

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俺たちは三階にあるフィットネス・スポーツ専用フロアにやってきていた。まず俺が驚いたのはその雰囲気で、広いフロアは何の変哲もない大學生の俺程度では聞いた事もないようなお灑落ブランドがひしめき合い、店先にとりどりのウェアや靴などを広げていた。流石はファッションビル、スポーツ用品ですらお灑落の心を忘れていない。

「えーっと、何を買えばいいのかしら。ランニング用の靴と、服と…………部屋の中で運するなら屋用のも必要よね」

ひよりんがフロアマップを眺めながら呟く。その奧では…………恐らくゴルフかテニス用だろうか。丈の短い用のスカートが並んでいて────俺の脳に住まう小悪魔が、目の前の『推し』にそれを著せてしまう。

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「そ、そうですね。々見て回りましょう」

白いスカートからすらっとびるひよりんの健康的な腳は俺の理を破壊するには充分過ぎて、俺は頭を振って脳から小悪魔を追い出しにかかった。こんなことをしていたらフロアを回りきる前に俺は魂盡き果ててしまう。

俺は気分をリフレッシュすべく、適當に近場の店に突撃した。ひよりんも大人しく俺に付いてくる。

「いッ────!?」

俺達を待ちけていたのは────スポーティな用下著の數々。脳に帰還していた小悪魔はいつの間にか立派な悪魔に長していて、勿論それをひよりんに…………いやいやさせるか。

俺達は慌てて店からまろびでた。どうしてスポーツ用品フロアにランジェリーショップがあるんだよ!?

「すっ、すいません! よく見てませんでした!」

「あ、あははは…………だいじょうぶ、間違いは誰にでもあるものね!? き、ききき気を取り直して別のお店に行きましょう!?」

俺の顔も赤いだろうが、ひよりんも顔を真っ赤に染めていた。俺たちは油の足らないロボットのようにぎこちないきで別の店に足を向けた。

「これとかどうかしら? 夏らしくて可いと思うんだけど」

ひよりんは手にしているレモンイエローのジップパーカーをに重ね、俺の方に向き直った。

「そうですね…………ちょっと失禮します」

まずはって材質を確かめてみる。表面はさらさらとしていて、パーカーと言っても普段靜が著ているようなものとは違い完全に運用のようだ。くっついているタグによると汗をめちゃくちゃよく吸うらしい。

うん、なかなかいいんじゃないか。洗濯方法も変わったところはないし。

「いいと思います。機能も問題なさそうですし」

そう言ってパーカーから手を離す俺に、ひよりんは不満げな視線を向けてきた。丁度今日の天気のようなじっとりとした視線を向けてくる。

「蒼馬くん…………ダメよ? に服の意見を求められた時は可いか否かで答えてくれなくちゃ」

もう一度パーカーを自分のにあてがうひよりん。今度は期待するような視線を向けてくる。

「そ、そうですね…………」

俺だって分かってたんだ、そういうことを言ったほうがいいんだろうなってことくらい。でも、今のひよりんを直視することはとてもハードルが高かった。

何故なら…………にパーカーが乗っているから。パーカーを見ようとするとどうしてもを凝視することになってしまうんだよ。頼むからそのことに気が付いてくれ。

ひよりん、あなたは年頃の男子にとってとっても危険な存在なんです。

「どうかしら…………もしかして似合ってない……?」

「う…………」

悲しそうなひよりんの聲に耐えられず、俺はパーカーに視線を向けてしまう。靜でも真冬ちゃんでもそうはならない、不自然に飛び出したパーカーが目に飛び込んでくる。脳で悪魔が小躍りを始める。止めろ、勝手にひよりんのを想像するな!

「に、似合ってると思います…………」

「そう? 良かったあ。じゃあこれにしようかしらね」

笑顔でパーカーを籠にれるひよりんにバレないよう気をつけながら、深呼吸する。

「…………ふぅ」

頭に浮かぶのは「焼け石に水」という言葉。理ではどうしようも出來ない部分がひたすら頭に熱を送り込んでくる。いつから俺はこんなにが貧弱になってしまったんだろうか。自分が自分じゃないみたいな気がしてくるが、ここにいるのは間違いなく慣れ親しんだ天蒼馬だった。

「よし、じゃあ次は下を見に行きましょう?」

「…………そうですね、そうしましょう」

何だかもう全がむずい。きっと凄い速さで循環しているんだろう。

靜でも真冬ちゃんでもいい、誰か助けてくれ。

いるはずもない二人を探してしまうくらいには俺は困窮していた。まさか『推し』とのデートがこんなに疲れるものだとは。いや、勿論楽しいし嬉しいんだけど、同じくらい神的疲労もあった。

靜と家電を買いに行った時はこんなことなかったんだけどな…………その理由は明白だったが、言葉にするのはあいつに悪い気がした。栄養がどこにいくかは人間にはコントロール出來ないものだから。

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