《【書籍化決定】ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~》何でもしてくれるの?

「ごめんね。本當はもっと早く教えてあげたかったんだけど、そういう訳にもいかなくて」

「いえいえ、それが普通だと思いますから。それより、またステージでひよりさんが見られるなんて本當に楽しみです!」

俺は生放送を終え帰ってきたひよりんと一緒に食卓を囲んでいた。まださっきの発表の余韻が冷めやらぬ俺は、ついテンションが上がってしまう。ライブというのはそれだけ楽しくて、最高なものなんだ。

「ふふ、蒼馬くんの期待に応えられるようにレッスン頑張るわね」

そう言って俺に微笑んでくれるひよりんは、控えめに言って天使そのものだった。俺はひよりんを推す為に生まれてきたのかもしれない、ついそんなことを考えてしまうくらいひよりんはり輝いていた。

「お、俺も料理とか頑張ります! 何かやってしいこととかあったら、是非言ってください!」

以前の俺はただライブに參加することしか出來なくて、やれることと言ったらグッズを買ってしでも売上に貢獻することくらいだった。

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でも、今は違う。

今の俺はひよりんの生活の一部を支えている。直接ザニマスというコンテンツを、そして推しであるひよりんを支えることが出來る。

俺に出來る事なら何でもしたい。そういう気持ちだった。

「何でも…………してくれるの?」

ひよりんはビールのったグラスを両手で持って、口元を隠すようにしながら聞いてくる。俺の答えは勿論一つだった。

「勿論です! 何でも言って下さい!」

「うふふ…………ありがとう。それじゃあ、早速お願いしちゃおっかな…………?」

そう言って、ひよりんは怪しく微笑んだ。何故だか凄く嫌な予がした。

「蒼馬くん、もうし強く押しても大丈夫よ?」

「は、はい…………!」

俺の目に映っているのは、白く輝くひよりんのうなじ。どうしてロングヘアーのひよりんのうなじが見えているのかといえば、それはひよりんが長い髪をゴムで纏めてポニーテールにしているからで、『推し』のポニーテールといえば萬病に効く薬だと萬葉集だか新古今和歌集にも書いてある。

とりあえず何が言いたいかというと、俺は今、全ての病気が完治したくらいのと興を覚えていた。

「蒼馬くん? もうちょっと強くお願い出來るかしら?」

「こ、ここ、こうですか…………?」

只でさえ平靜を保つのが難しいそんな狀態で、俺はさらなる困難にを投じていた。食事を終えたひよりんは俺を自宅に招待すると、おもむろにリビングにヨガマットを敷き始めたのだ。そしてその上に座ると、ひよりんは俺にストレッチを手伝ってと頼んできた。そうして、今に至る。

「そうそう、いいじよ。私、結構らかいでしょう? こうやってだって床につくんだから」

「むっ、!? そ、そうですね、らかいと思います!」

らかいに決まっている。ましてはひよりんなら猶更だ。俺が何度酔っぱらったひよりんからその雙丘を押し付けられたと思っている。 忘れたくても忘れられないんだ、あのは。

「そのまま押さえててね」

「わ、分かりました」

気が付けば、ひよりんは両足を広げ、ぺたっととお腹をマットにつけていた。凄い、めちゃくちゃらかいなあ、ひよりん。は男よりらかいっていうけど、これは相當なものだろう。きっと靜なんか俺よりいと思うし。

「…………ゴクリ」

俺はひよりんに言われるがままひよりんの背中を両手で押していて、薄いスポーツウェアの下にじるブラのや、その更に下から響く心臓の鼓がダイレクトに伝わってきた。そのどれもが俺の心をそうとして、さっきから頭がおかしくなりそうだった。俺は何故「何でも言って下さい」なんて言ってしまったんだろうか。

「ありがとう、もう大丈夫よ」

ひよりんのそんな一言にも、ビクッとが反応してしまう。五を始めとする全が限りなく鋭敏になっていた。そしてその全てが、凄い濃度でひよりんをじとっている。

手を離すと、バネのようにひよりんの上が起き上がってくる。あと數分でもこうしていたら俺はひよりんを好きになっていただろう。いや、今も好きなんだけどさ。

「次は…………太もものストレッチをお願い出來るかしら。私の足を押さえててしいの」

「足、ですか?」

「あ、もしかして……嫌、かな…………?」

しゅん、と悲しい表を浮かべるひよりん。

「そうよね…………こんなおばさんの足なんて嫌よね…………りたくないわよね……」

「いやいやいやいや! ひよりさん待ってください! 俺は一言もそんなこと言ってないですって、ライブの時だってめっちゃ足見てましたもん俺! 」

足えっろ、って思ってましたもん俺!

「えっ、あっ…………そ、そうなの…………?」

かぁっと顔を真っ赤に染めるひよりんの姿に、俺は自らの失言を悟った。

「それはそれで恥ずかしいな…………あはは…………」

「あ、あはは…………」

どうする事も出來ず、俺は乾いた笑いを零した。誰か殺してくれ。があったら埋めてくれ。

「ええ…………えっと…………どうしよぉ…………?」

ひよりんは育座りの狀態で、守るように両足を抱き抱えた。そして視線だけを俺に送ってくる。

「えっと…………蒼馬くんは…………りたい、ってことでいいの…………? …………私の、足」

「…………う」

蛇に睨まれた蛙のように────いや、これは魔のサキュバスだ、そうに違いない。サキュバスの視線に貫かれ、俺のは完全に固まってしまった。そして頭だけがオーバーヒート気味に回答を計算し始める。

…………勿論、否定するべきだ。足をりたいだなんて、それを認めたら俺は『推し』をそういう目で見る変態だと思われてしまうし、それは俺の意思とも反している。

俺はひよりんの足なんてりたくないんだよ。本當はりたいけど、ったらどうにかなってしまいそうなんだ。俺は健全な大學生だから。

「……えっと」

だけど……否定したらどうなるか、予想できない俺ではない。

ひよりんは常日頃から蒼馬會で自分だけ年齢が離れていることを気にしているようで、今だって自分の事をおばさんだと卑下していた。俺からすれば魅力的なお姉さんでしかないんだが、とにかくひよりんは異様に自己評価が低く、自分に自信がないみたいだった。

もし俺がやっぱりりたくないです、なんて言った日には、ひよりんは地の底まで落ち込んでしまうかもしれない 。

──『推し』を悲しませるなんてことは、絶対にあってはならない。

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