《骸骨魔師のプレイ日記》深淵大決戦 その九
「ギイィィィヤァァァァァァ!?」
魔を嫌いするアールルが作り出したとされる神剣。それは深淵に飲まれ、墮天するどころか神敵にまでり下がったエリステルには劇毒とでも言うべきモノだったらしい。エリステルは苦悶の絶を上げながら、手足をメチャクチャにかすばかりであった。
その際、無數の手が握り締めていた大剣を全て手放している。の翼にある眼球は痛みのせいかギョロギョロと忙しなくいていて、まともに武技などを使える狀態ではなくなっていた。
今こそ千載一遇の好機である。當然ながら全ての部隊の指揮がそれに気付いており、全員が同時に全く同じ指示を聲を張り上げて口にした。
「「「ありったけ、叩き込めぇ!」」」
指示されるまでもなく、既に全員が発に時間がかかる武技や魔、能力(スキル)を発させる準備を整えていた。そして指示した瞬間に全員が最高の攻撃を叩き込む。とりどりのを発する攻撃がエリステルへと殺到した。
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私もまた、切り札をお披目する。私とカル、そしてリンは可能な限り口を大きく口を開けると、そこから【龍息吹】を放ったのである。
三本の【龍息吹】はエリステルへと直撃する。龍(ドラゴン)の切り札ということもあって相當に強力なはずなのだが、エリステルの力が減するペースはほとんど変わっていない。【龍息吹】以外にも仲間達が渾の一撃を叩き込んでいるはずなのに、である。
その原因はエリステルが全力で自を回復させているからだ。武を手放し、なりふり構わず生き延びるために全てのリソースを割いている。最終形態となったエリステルが回復だけに心を注いだことで、神剣と私達の全力をけてなお生き延びているのだ。
「カハァ!あれは…いかん!絶対に抜かせるな!」
「手を狙うのよ!」
【龍息吹】を最後まで撃ちきった私だったが、エリステルが回復しながら何かをしていることに気が付いた。腕をワチャワチャとかしているのだが、その目的がわかったことで阻止するべく聲を張り上げる。奴は何とかして深々と突き刺さった神剣付きの飛翔を引き抜こうとしていたのだ。
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神剣というエリステルを蝕む猛毒があるからこそ、全力で回復しようとするエリステルの力を減らせている。エリステルが回復以外に手が回らなくなる最大の要因である神剣を失えば、私達の敗北は必至。あれだけは絶対に防がなければならなかった。
私と同じくエリステルの狙いに気付いていたママもまた、弓隊に命じて阻止すべく矢を放たせる。この際、ママは個別に腕を狙わせている。こればかりは一斉撃によるまとまったダメージよりも、正確に腕に當てる方が優先だからだ。
それは魔隊も同じこと。私達もまた抜かせないようにすることを優先し、飛翔にばされる手を破壊しようとしたり拘束系の魔が使える者はきを止めようとしたりしていた。
「何だか知らねェが、さっさとブッ殺せェ!」
「魔力が盡きても斬り続けよ!」
盾隊や遊撃隊には神剣の報を教える余裕などなかったので、彼らはいきなりエリステルが苦しみ始めた原因はわからないはず。それでも私達が今までとは異なってバラバラに攻撃しているのを見て何か原因があると察したのだろう。ジゴロウと源十郎は戦場全に響き渡る大音聲で一刻も早く倒すようにと急かしていた。
そのおで吹っ切れたのか、いざという時に備えていたであろう盾隊は防をかなぐり捨てて攻撃に専念し始めた。加えて機隊も小さな円を描くようにき、最小限の間隔で突撃を繰り返す。生き殘った全員が攻撃に全ての意識を向けていた。
「アグウゥゥ!」
「イイィアァ!」
それでも回復し続けてしぶとく生きているエリステルだったが、悲鳴を上げながらもついに腕の一本が飛翔にれた。神剣が使われているのは先端だけであり、飛翔の外に出ている部分は摑んでも問題はないのだ。
ヒヤリとしたのは一瞬のこと。エリステルは自分に突き刺さった飛翔を握り…そのまま握り潰してしまったからだ。指に刺さった小さな木の繊維を抜こうとして、先端だけ殘った時のことを思い出す。あれはより深く刺さることはあっても、抜くのは容易いことではないぞ?
「墓を掘ったらし…いぃっ!?」
これで心配はいらない。そう思った矢先、エリステルはとんでもないことを始めた。奴は鉤爪付きの腕によって自分のを抉り始めたのだ。
神剣がに埋まってしまったエリステルだったが、強引にでも抜き取るつもりらしい。私達は慌てて攻撃の優先目標を鉤爪付きの腕に切り替える。だが、自傷行為をもいとわないエリステルを止めることは葉わず、ついに奴は神剣付きの飛翔の先端部分を引き抜いた。
「ギャガァァァアアァァァ!?」
先端部分を摑んだ瞬間、神剣は目を焼くほど激しく発していた。すると神剣を摑んでいたエリステルの腕は灰になって崩れていく。摑んでいた腕が消失したことで、神剣は輝きを失いながら深淵の海へと沈んでしまった。
これでエリステルを蝕む最大の要因が消えてしまったことになる。倒すのならここから勢を立て直す前の今しかない。誰もがそれを理解していたからか、私達は誰に言われるともなく魔力が盡きるまで武技や魔を放ち始める。
「ぐあああっ!?」
「クッソォォォ!」
しかし、再起したエリステルは再び翼の大剣を生み出して振り回す。盾隊はこれをどうにか防いだものの、私達は何度目かになる絶に包まれてしまった。全ての部隊が限界であるのに、エリステルはまだ生きている。殘りの力はほんの僅かだというのに、そこに屆かないのだ。
これまでの準備が報われなかった悔しさ、不十分な準備で勝てると思っていた自分の淺はかさへの怒り。様々なが湧き上がってくるのをじる。私は用の杖を握り締めつつ、基地の放棄と撤退戦に移る決斷を下そうとした。
「ギヒィィィィィ!?」
その時、再びエリステルは絶しながら大剣を手放した。何事かと思えば、深淵の海の下から激しいが迸る。発した海面から外に飛び出して來たのは、飛翔の先端に腕を巻き付けたゴゥ殿であった。
ルビーが帰還した時、確かに彼は基地にいた。故に飛翔の先端に神剣を仕込むように指示するのを聞いていた可能が高い。つまり、前線に出ている者達の中で數ない神剣について知っている者なのだ。
エリステルが自力で神剣を引き抜いた後、落水したそれを彼は拾いに行ったらしい。そしてまだ殘っていた飛翔の部分に腕となった腕を巻き付けて保持し、エリステルに突き刺したようだ。
空中に投げ出されたゴゥ殿だったが、空中でを捻って勢を整えると神剣の切っ先を下にして落下していく。エリステルは迎撃するべく鉤爪付きの腕を振り回した。空中にいるせいでゴゥ殿にこれを回避することは不可能である。エリステルの鉤爪によって、彼は上半と下半で真っ二つにされてしまった。
「貴様ヲ討テルノナラ、命ナドイラヌ!」
真っ二つにされたゴゥ殿だったが、驚くべきことにまだ戦意を失っていなかった。エリステルを自らの手で討つ絶好の好機が巡ってきたのだ。それを逃すつもりはさらさらなかったらしい。
そんなゴゥ殿の息のを止めるべく鉤爪を振り回したエリステルだったが、その手をゴゥ殿は神剣によって斬り裂いていく。本來のステータス差であれば不可能なのだろうが、神剣という究極の武がその差を覆していた。
「仲間達ノ仇!滅ビヨ、悪神ノ手先メ!」
ゴゥ殿は落下のスピードを乗せて神剣をエリステルに突き立てる。それだけでも神剣の半ばまで突き刺さったのだが、ゴゥ殿は何を思ったか自分で刀を鷲摑みにすると、重を掛けてさらに深く突き刺した。
その瞬間、神剣は再び眩いを放つと真っ白な発を起こす。風によってゴゥ殿は吹き飛ばされ、エリステルのは大きく抉られてしまった。
「ゴゥ殿…!犠牲を無駄にするな!魔力が盡きるまで撃ちまくれ!」
の発のせいか、エリステルはきを完全に止めてしまう。ゴゥ殿の上半が吹き飛ばされながら灰になっていく姿を見てしまった私は、彼の命を燃やし盡くして生み出された最大の好機を逃す訳にはいかない。私達は魔力が本當に盡きるまでひたすら攻撃し続け…ついにエリステルの力ゲージは盡きるのだった。
次回は8月26日に投稿予定です。
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