《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫333.闇か

時空のからは、三人の人間が飛び出してきた。

一人はレッドワインの癖に白いの男。一人は背に翼をばした小柄の銀髪。最後の一人は赤っぽい茶髪の青年だった。三人は自分の役目をよく知っていると言わんばかり戦場に臨み、空中で速やかに散開した。

新たに謎の勢力が現れ、もうこれ以上は堪らないというように、ルルが抗議の聲を上げる。

「この後に及んで敵の増援って……いい加減、勘弁してよ!」

赤茶髪の青年は、赤いコートを著て、眉間に痣がある。彼は真っ白の源気(グラムグラカ)を纏い、ようやく地に足をつけた。その顔は、敵も味方も、誰も見ていない。しかし、余裕げに爽やかな笑みを浮かべると、握りしめた『契紋石(パトンピス)』を掲げた。る石に凝された源気が解放され、青年の聲が試合終了のゴングのように響き渡る。

「全ての源(グラム)を吹き散らせ!『源解離相(フェスセプレーション)』!!」

「何だこの!?」

「眩しい……!!」

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修二とラーマが共にんだ。

青年の居場所を中心に、床に描かれた章紋が直徑10ハルの円形にを放った。同時に、眩しいと凄まじい源気の気流が地面から噴き上げる。

敵味方を問わず、章紋の領域にある源から作られたもの全て――ケビンが著裝しているハネクモアーマーも、リディの仕掛けた隠しトラップも、カロラの創りだした七人のハワードも――強制的に粒子となって吹き散っていく。

さらに、領域にいた人々が外に纏っている源気も吹き飛ばされた。意識を集中させれば集まるはずの源気も、その気流に邪魔をされ霧のように散り、技を繰り出すには源の量が足りない。異常な狀態に、修二がぶ。

「俺様の源気が?!」

「こんな『章紋(ルーンクレスタ)』が実在するなんて……」とラーマも揺を隠せない。

「彼は一?」

ティムは謎の青年の取った手法を冷靜に読み取ろうとしていた。全員の源気を鎮圧するほどの強い技を使っていながら、彼からは殺気がまるでじられない。それどころか、領域には妙な爽快とでもいえる、すっきりとした空気が漂っていた。なくとも敵ではなさそうだと、ティムは目の前の青年を理解する。

のぞみのすぐそばには、『六紋手裏剣(ろくもんしゅりけん)』が源の刃を失った狀態でボトリと落下した。突然の『章紋』の効果に、全員がビクリとしてきを數秒間、止めた。

青年はその間にさらに素早くき出し、リディとカロラのツボを的確に手指で打った。二人は力したように腳から崩れ、無力化した。

青年とともにやってきた二人は領域外にいたため、源気もも纏ったままで、リディとカロラをそれぞれ一人ずつ支え、地面に寢かせる。

ケビンは三人を見るとほっとしたような笑みを浮かべ、戦闘態勢を解いた。

リディとカロラをる『章紋』のが消えた。青年はしばらくの間、失神したリディとカロラをケアするように、片足立ちで様子を見ている。

戦いが終わったことを察し、のぞみは刀を鞘に納めた。ティムも、三人がこちらに敵意がないことを判斷し、攻撃の構えを解き、それから武を下ろした。

青年のは、劣勢だった戦いに一瞬で幕を下ろし、敵の仕掛けた悪趣味な同士討ちと暗殺の遊戯にチェックメイトした。心苗(コディセミット)たちはそれぞれの思いを抱いていた。戦に終焉をもたらした青年に興味深そうに近付く者、し距離を取ったままでかず、狀況を観察する者、目の前で繰り広げられたできごとへの驚きのあまりを退き、そのまま固まっている者もいた。

もう出番がないケビンは気が抜けて、近付いてきたもう一人の男にわざと怒ったような顔で不満をらした

「レン、援軍を連れてくるのが遅い」

「すまん。最善のメンバーを揃えるのに時間がかかった」

「まぁ、この二人を連れてきてくれたなら、許す」

そう言ってケビンは笑みをこぼすと、今度は青年に話しかけた。

「先輩自らお越しになるとは、さすがに驚きました」

「許嫁(いいなずけ)を救うのは當然だ。そもそもお前らはのぞみの大蛇(オロチ)の禍のために過去へ行った。不要なはずの罠にまで嵌められて、見捨てられるわけがない」

長がびただけでなく、ずいぶん逞しくなった。

のぞみは長年に渡り見守り続けてきたその男――野遼介(みつのりょうすけ)が、自分の知っている彼よりもかなり大人び、印象が変わったことを知った。

遼介は仲間から許嫁の危機を聞きつけ、気になって過去まで來てくれたのだろう。仲間と話し合うその喋り方も、明るい聲も、好きだ。のぞみは彼に対し、これまで以上に親近を覚え、リディとカロラの容を見ている三人の元へ向かった。

遼介はリディとカロラの首や頬、肩にビキビキと殘る何かの侵痕を見て言う。

「やはり『ゴールドスカラベ』か。ラメルスのいつもの手だ」

「遼介兄ちゃん、この類いの斷の技は、何度見ても恐ろしいですね」

小柄なは天使(あまつか)汐(うしお)だった。のぞみが義毅(よしき)の家を訪れた時に中へと招きれてくれたあのは、三年後から來たというのに、長も顔立ちもあまり変わらないように見える。癒されるような可らしい言も変わらない。

「普通は寄生されてしまえば救う方法はないが、で彼たちのから取り除くことができる」

「分かりました。それなら予定通り、周りの人を解放していきますね」

「ああ」

汐は戦闘不能狀態に陥っている人のところへと向かった。背には長く細い二本の三つ編みが揺れている。

「ガブリエル様に授かったお力で、皆を解放します」

汐は一枚の羽を手に、まずはメリルの前までやってきた。

「大丈夫ですか?今から解放しますね」

汐が羽を振ると、金のような奇妙なで何かが綴られていく。それを、メリルを縛る鎖に振りかざすと、鎖の紋様が消え、鎖そのものも砕した。

「ありがとうヨン」

次にラトゥーニの元へ行き、同じ方法で解放する。

「あなたたちは誰?」

「未來から來た、皆さんのお友だちですよ」

汐は次々に羽を振って金の筆を綴る。鎖に縛られた者は解放され、泥沼に沈んだ者は見えない力で沼地から引っ張り上げられた。汐は助け出した一人一人と目を合わせ、微笑みを送る。人間に馴染んだ小のような可らしさに、癒されない者はなかった。人間との付き合いが苦手なデュクや、京彌(きょうや)でさえ、照れくさそうに顔を赤く染めている。柱の間は安全地帯となり、汐によって皆が助けられていった。

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