《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫334.奇跡の出會い

その頃のぞみは、リディとカロラの容を確認している遼介の真剣な橫顔を眺めていた。遼介はきっと自分のことを分かっていない。そう思い、のぞみは町中でたまたま救命の現場に居合わせた人々のように聲をかける。

「あの、彼たちを救う方法はありますか?」

「ああ。それが、俺がここに來たもう一つの目的だ」

たちの來ているマントには、首の辺りにボタンがある。遼介がそれを押すと、マントがコントロールナノマシンのに変わり、全がボタンに吸収されていった。二人はその下に薄い生地のボディスーツを著ている。ボディスーツの上からでも、二人のの経脈の場所がよく見えた。

遼介は人差し指と中指を合わせ、全の元気をその二指の先端に集める。まずはリディののいくつかのツボを狙って押し、最後は元に指を當て、そこから自分の源気を注ぎ込む。源気はリディの経脈を通って全に巡り、彼の臓や細胞に寄生する蟲から生えたカビの菌糸のようなものを浄化していく。やがて源気は頸椎に達すると、蟲を破壊し、抹消した。

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その瞬間、リディのは無意識に反応し、や腹が弓のように反り、「あっ!!」と大きな聲を出し、息を吐き出した。

「首にあった、蟲の形の腫れが引いた……!」

のぞみは目をキラキラとらせ、遼介の不思議な施を見ている。

リディの様子を見ていた遼介は、今度は振り返ってカロラの手當てにあたる。施は順調なようだ。

「よし、次は彼だな。さっさと終わらせるぞ」

カロラも手當てをけ、二人は寄生蟲のコントロールから解放された。

その瞬間、別の場所で柱の間の狀況を見ていたアーリムが、指に嵌めていたリングの二つのゴールドスカラベの石が割れた。アーリムは々になった石を、邪気のある笑みを浮かべて見ていた。

寄生蟲の支配下を逃れる処置はできたものの、二人はまだ目覚めないらしい。

「二人は、助かるんでしょうか……?」

のぞみはそれが心配でならなかった。遼介は安心させるような表で応える。

「ああ、二人を源はもうない。だが、醫療センターでの治療が必要だろうな」

汐が全員の呪縛を解いて戻ってきた。

「安心してください。リディお姉ちゃんたちは未來で治療をければ、すぐに元気になりますよ」

「未來で……。二人はこちらの時間點で治療をけるわけにはいかないんでしょうか?」

しでも早く治療をけてほしいと思ったが、遼介の代わりにレンが首を橫に振った。

「すまないな。あなたのお気持ちには謝するが、任務達している以上、我々は速やかに戻らねばならない。この時間點に長く滯在すれば、また未來を変えるリスクが増えてしまう」

リディとカロラの立場を考えれば、二人はアーリムが暗殺者であることを知る証人だ。もし二人がこの時間點に殘り治療をけることがわかれば、アーリムは必ず二人を始末しようとするだろう。

そこまでは考えが至らず、のぞみは申し訳なさそうに俯いた。

「そうですね……。私のせいでお二人を巻き込んでしまって、さらに危ない目に遭わせるわけにはいきませんね」

「それはお前のせいじゃないだろ?」

遼介が呆れたような顔でのぞみに言った。

「ったく、お前は今も昔も、他人のトラブルの責任を負いたがるんだな」

のぞみをよく見てくれているからこその言葉だったが、本人は落ち込んでいる。

「……でも、私のせいで今の時間點に來たのは事実ですよね」

遼介はのぞみとまっすぐに目を合わせると、そっと手を彼の頭に乗せた。そして、優しくでながら続ける。

「のぞみ、大蛇の一件が起きたのは事実だが、お前一人の責任じゃない。それを今の時間點のお前に早く知らせたかった。あまり他人のことまで自分で抱きかかえるんじゃないぞ」

いきなり頭をでられ、のぞみは「えっ……?」とだけ言ったまま思考停止に陥る。まだ自己紹介もしてないのに、と混していた。

汐は可らしいキューピットのように、遼介にアドバイスする。

「遼介兄ちゃん。今の時間點のお姉ちゃんは、三年後を知らないんですよ。ビックリさせてしまったら、大事なことが伝わりません」

「はは、そうだな。俺たちはまだ出會っていないからな。とはいえ、のぞみは俺が小さい頃からずっと見てたんだろ?これくらい平気さ」

遼介は手を下ろした。

きっと、未來の遼介はもう、のぞみはかつて『天眼』のスキルを使って彼をストーキングしていたことを知っているのだ。のぞみは初めて彼に會い、彼の爽やかな喋り方や、親しみやすい佇まいを好ましくじていた。そしてこの奇跡的な出會いを嬉しく思った。

のぞみは伏し目がちだった目を上げ、遼介を見る。

「私を、知っているんですね?」

「ああ。お前は神崎のぞみ。俺の許嫁だ」

心臓が激しく脈打っている。同級生たちの前ではっきりと「許嫁」だと言われると、いくら好きな相手であっても認めがたかった。あまりに恥ずかしく、ドキドキしてどうすれば良いか分からなくて、「えっと、それは、ちょっと……」ともごもごしていると、

「何だ?會ってみたらやっぱり無理だったか?」

と、遼介がからかいの笑顔にわずかの寂しさを滲ませた表で見つめてくる。

「あ、いえ、そういうわけではなくて……」

「遼介兄ちゃん何をしているんですか?お姉ちゃんが混していますよ」

「ま、この時間點では俺たちは出會ってないはずだからな。気にしすぎるなよ」

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