《ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~》第三百四十六話 イザークの苦悩③

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第三百四十六話

白いのロメリアと青い鎧のレイヴァンに先導され、杖を突くギャミが続く。その後をイザークとアザレアが付き従う。

ライオネル王國の陣中は整理が行き屆き、整然としていた。食料や資が詰め込まれた天幕が、等間隔にいくつも並んでいる。

整列する天幕には、兵士が歩哨に立っていた。兵士は談笑などせず、じっと前を向き、不の姿勢を崩さない。

警備の兵士とれ替わるのか、四十人ほどの兵士が向こうから二列に並んで進んでくる。その歩調はれもなく、練度が高いことがわかる。

ロメリアに案されるままに歩むと、広場に出た。広場では大鍋が火にかけられ、前掛けをした兵士が大きなヘラで鍋をかき混ぜている。鍋の中では野菜が煮られており、料理が作られていた。

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鍋の前には皿を持った兵士が列を作り、料理が振る舞われている。兵士が鍋の前で皿を差し出すと、皿には山盛りの料理が盛られていく。

さらにロメリアが進むと、別の広場へと出た。広場では兵士達が木剣を振るい訓練に明け暮れている。木剣を振るう兵士のきは鋭く聲にも力がある。ライオネル王國の士気は高い。

これは侮れぬとイザークが唾を呑んだ時、空から耳を貫く音が鳴り響いた。

不快な不協和音にイザーク達が空を仰ぎ見ると、頭上を巨大な影が覆った。

空には薄い皮の様な翼に、巨大なを持つ生がいた。

「竜か!」

イザークは空を見てんだ。

翼竜。魔族の故郷であるゴルディア大陸原産の空を飛ぶ竜である。

魔族が繁させ、騎乗できるように配と調教を施しただ。だが空を飛ぶ翼竜の首元にはライオネル王國の國旗が巻き付けられている。

空を飛ぶ竜を見て、護衛としてロメリアの隣を歩いていたレイヴァンが、人差し指と中指をに當てて口笛を鳴らす。甲高い音が空に響き渡ると、飛んでいた翼竜が急旋回ののち、イザーク達に向けて降下してくる。

急降下してきた翼竜は、地面に激突する直前で反転し翼を広げる。薄い皮の翼は、空気をけて膨らみ減速する。

翼竜は大きく、翼を広げれば家一軒ほどもある。イザークの視界は竜で埋まり、帆船の帆のような翼が羽ばたくと突風となって吹き荒れる。

イザークの橫でか細い悲鳴が聞こえた。風をけて、アザレアが態勢を崩し倒れそうになっている。イザークは咄嗟に左手をばしてアザレアの腰を支えた。

アザレアの腰がイザークの腕に抱かれる。の腰に手を回したことで、イザークの鼓は跳ね上がった。

イザークに経験はなく、若いれたことすらなかった。アザレアのあまりの腰の細さに、イザークは戸うばかり。

「イザーク様、ありがとうございます」

禮を述べるアザレアにイザークははたと気づき、腰に回した手を退けた。助けるためとはいえ、の腰に手を回すなど不作法だった。

アザレアに謝罪してイザークは數歩距離を取る。しかしその左手には、アザレアの腰のが殘っていた。

とはあれほどまでに脆い存在なのかとイザークは驚きつつも、の鼓を止めることができなかった。

に鼻息が荒くなるイザークを、翼竜の鳴き聲が正気に引き戻す。降下してきた翼竜は大きなを青い鎧のレイヴァンに向けた。レイヴァンは右手をばしてでると、翼竜は気持ち良さそうにを鳴らした。

よく懐いている翼竜の姿を見て、イザークは唾を呑みギャミを見た。

竜は魔族にも慣れず、攻撃的な種類が多い。その竜を品種改良して騎乗可能にしたのが、他でもないギャミである。

自らが手塩にかけて育てた翼竜を、敵に手懐けられている姿を見た心境はいかばかりか。

ギャミが激怒するのではないかとイザークは気をんだが、意外にもギャミは平然としていた。

「ふむ、なかなか懐いておるな。付きもいい」

レイヴァンに甘える翼竜を見て、ギャミは頷く。

「何を食わせているのだ?」

「魚が多いですね。時々ウサギやネズミも與えています」

「雌もいたはずだが、卵は産んだか?」

「ええ、このあいだ産みましたよ。竜があんなに卵を産むとは思いませんでした」

「孵化させる時には溫度が重要だぞ、高めにするといい」

「ご教授ありがとうございます」

ギャミの忠告に、ロメリアは笑みを持って答えた。

その後もロメリアは、陣中を隈無く案してみせた。

ライオネル王國軍の士気は高く、兵士達は規律正しく訓練に勵んでいる。休みともなれば剣を研ぎ、鎧を磨いて整備にも余念がない。

練度の高さにイザークが心していると、ギャミも頷く。

「いや、いいを見せていただきました」

ギャミが満足した様な聲に、ロメリアも微笑みを返す。

「では皆様の天幕までお送りいたします」

ロメリアに先導され、イザーク達は用意された天幕へと戻った。

ちょっと短いけどキリがいいのでこの辺で

ではまた來週

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