《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》457 ラブコメでも、修行は必要です。
ピッ、ピッ、ピッという電子音が一定のリズムで、どこからか聞こえてくる。
ここはどこだ?
頭が酷く痛む……それに何かが、俺のに覆いかぶさっているようだ。
手で外そうと試みたが、力がらない。
瞼を開こうとしても、接著剤でもつけたかのように重たくじる。
とりあえず起きなきゃいけないと思って、上半を起こそうとした瞬間。
先ほどまで流れていた電子音のリズムが激しくなる。
「あぁ……」
何かを話そうとしてみたが、これも上手く出來ない。
口をマスクで塞がれているからだ。
マスクの先端には管が繋がれており、強い風が流れてくる。
薄っすらとだが、辺りが見えるようになってきた。
ここは全てが白い。
壁も天井も、だだっ広い部屋を忙しそうに走り回る看護婦たち。
頭の中に靄がかかったようで、スッキリしない。
一、俺は何をしでかした。
そう思っていると、一人のナースと目が合う。
「あっ!? 起きちゃダメだって!」
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「……?」
その聲に気がついた他の看護婦も、慌てて俺の元へ駆けつける。
「寢てなさい! 薬が効いているから!」
「そうよ! 君は通事故で搬送されたの! 絶対安靜なの! 分かる?」
叩きつけるような勢いで、俺をベッドに寢かせるナースたち。
左上にかけられた點滴の袋を確認しながら、看護婦が説明してくれた。
「あなたは、數日前にこの真島総合病院……の近くで通事故にあったのよ。詳しいことは後で先生が話してくれるから。まだじっとしてなさい!」
厳しく注意されたから、黙って頷いて見せる。
「じゃあ、安靜にしていてね。ミハイルくん」
今、なんて言った?
トラックに轢かれて、ミハイルに転生したとか……。
※
ナースが言った通り、數時間後、擔當醫が現れた。
軽く質問をしたあと。診したり、脈を計ると。
近くにいたナースへ指示を出す。
「この子、ミハイルくんだっけ? もう、個室へ移させていいよ」
だから何故、名前がミハイルで登録されているんだよ。
「分かりました」
なんの薬かは分からんが、効果が無くなってきたようだ。
意識もハッキリしているし、視界も良好。
4人のナースさんが、俺のベッドを囲むと。
「今から個室へ移するから、そのまま寢ていてね」
と言われた。
自分で歩こうと、ベッドから降りようとしたらすごく叱られた。
この年で若いねーちゃんに介護されるとか……屈辱だわ。
仕方なく、黙ってナースさんに『お神輿』をしてもらうことに。
寢たままガラガラと廊下を走り回る。
途中エレベーターを使って、移すること10分ほど。
ようやく、個室へ到著した。
部屋にるとベッドの各キャスターをロック。
そのあと、俺のについていた様々な管や機材を外してくれる。
これでが軽くなった……と思ったが。
そうでもない。
俺の左腳は、頑丈なギブスで固定されていた。
つまり、歩けないってわけだ。
參ったな……次のスクリーングも近いってのに。
※
ナースさんたちが出て行くと。
れ替わるように一人のが、ノックもせずにってきた。
ボディコンのミニワンピースを著た。
こちらをギロっと睨んでいる。
「おい、何日人を待たせる気だ?」
「……え?」
ようやく聲を出すことに功した。
ずっとマスクをつけていたから、が乾燥していて、かすれている。
「とりあえず、意識が戻ったと聞いたから……一発、毆らせろ」
「な、なにを……」
ツカツカと音を立てて、こちらへ向かってきたと思ったら。
途中から走り出し、勢いをつける。俺の頬へ目掛けて、ストレートパンチをお見舞い。
「がはっ!」
こっちはケガ人だぞ! とぼうと思ったが、そんな気はすぐに失せてしまう。
毆った本人はベッドの上でうずくまり、泣いていたから。
「バカ野郎……死んでどうするんだ。これ以上、心配させるな」
俺は彼の頭にれてみた。
小刻みに震えている。
「せ、先生」
「うう……死ぬことなど、絶対に許さんからな」
※
しばらく、俺の膝で泣いていた先生だったが……。
近くにあったテイッシュを數枚摑むと、勢いよく鼻をかむ。
「チーン! あ~、すっきりしたぁ♪」
まだ鼻水が顔についているよ。
汚ねぇ、大人。
「先生……俺どれぐらい、意識がなかったんですか?」
「まあ、そう慌てるな。お前は通事故により……。脳震とう、左腳の骨折及び裂傷で、この病院へ擔ぎ込まれたのだ」
「事故ですか」
「うむ。トラックに轢かれたようだが、新宮の位置がもうしズレていたら。おっ死んでいたらしいぞ」
先生は警察から聞いた報を元に、々と説明してくれた。
事故から、既に3日経っているらしく。
左腳の外科手のため、麻酔を使ったらしいが。
それよりも、の衰弱が激しく……醫師から栄養を補う點滴を、指示されていたそうだ。
「これを見ろ、新宮」
先生はそう言うと、真っ二つに割れたヘルメットをベッドの上に置いてみせた。
「あ、俺の……」
「そうだ。奇跡的に助かったが、トラックの運転手がブレーキをかけなかったら……お前の頭は、こうなっていたんだ!」
「……」
先生はすごく怒っていた。
この怒りは、新聞配達の店長と同じだ。
心配してくれたのだろう。
「あのな、新宮。私はお前が必要だ。生徒してな。今までどんな大人たちがお前を見捨てて、學校から逃げたのか。私には理解できん。それでもだ。私はどんなことがあっても、お前たちを見捨てることはない!」
「はい……」
気がつくと、熱い涙が頬を伝う。
「たかが、の一つで死ぬなんて絶対に許さん! いいか、新宮。今回の事故を機に踏ん切りをつけるんだ! 生まれ変われ!」
「え……どういうことですか?」
「決まっているだろ。古賀のことで、自分を見失っているお前を元に戻す。いや、以前よりも強くなるのだ! 一ヶ月以上、院するんだから。自分を磨いて、古賀への想いを、ちゃんと伝えられるようにな」
「は?」
なんで、宗像先生にそこまで決められてしまうんだ。
でも、確かに……以前の健康なを、取り戻さないとな。
また事故っちまう。
「あと、ちなみに今から私は教師として、お前を24時間監視するからな」
「はぁ!? どうしてそんなことに……」
「だって今、裝した古賀が來たら、お前はどうする気だ?」
「それは……」
「アンナとして接するんだろ? ならば、ダメだ。家族以外の面會は止とする!」
いや、それを言うなら、あんたも面會しちゃダメだろ。
「どうしてですか?」
「お前の気持ちが中途半端なせいだ! 相手を傷つけまいと、下手な噓をつく。だから、このような事態に陥ったのだ! そうなれば、古賀も巻き込まれるぞ、分かっているのか? 自分の立場を」
「はい……」
先生の言う通りだ。
もし、俺が死んでいたら、ミハイルやアンナは……。
「新宮。そろそろタイムリミットだ、ちゃんと自分の意思で選べ」
「選ぶ?」
「ああ……男のミハイルか、のアンナかをだ」
どっちもは、選べないんだよな。
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