《骸骨魔師のプレイ日記》自由人な令嬢

新章が始まります!

ログインしました。昨日は全員が疲労困憊だったということもあり、コンラートには明日にしてしいとメッセージを返してから自室に戻ってログアウトした。

その際、カルとリンはモンスターキューブにれたこともあって非常に小回りが利いていた。やはりモンスターキューブは便利である。これはまず間違いなく売れるだろう。ほくそ笑むコンラートの顔が浮かぶようだ。

剝ぎ取りに行ったアイリス達だが、彼らが剝ぎ取って得られたのは報酬に含まれていたモノとは別のアイテムだった。眼球や舌、牙やなど武や【錬金】の製作に使える素材ばかりだったようだ。

これらも當然のように『と秩序の神』アールルの関係者への特効があったようだ。死に戻りした者達を含め、戦闘に関わった者達全員に十分行き渡る量を確保しているらしい。

ただ、報酬として得られたアイテムは大量にあった。余剰分をなるべく彼らに譲渡、あるいは換や売買するように推奨している。國王とは言え、我々は現地の住民(NPC)と魔プレイヤークランによる緩やかな連合だ。共通の敵を前にすれば強固に結束するが、強制的に何かをさせることは出來ないしなるべく避けたい。あくまでも推奨、ということなのだ。

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「それで、當の本人はどこだ?ザビーネ嬢と會談するという話だっただろう?」

エリステル戦の報酬についてのことは置いておこう。後始末に関しては基地の修繕などもあるのだから。今、私が集中するべきはコンラートが連れて來た人についてである。その人と會談すべく、私はリンに乗って『エビタイ』までやってきていた。

だが、コンラートに會談してくれと頼まれていた當の本人であるザビーネ・ヘルメスベルガーは指定された場所にいなかった。私と共に『コントラ商會』の応接室にったコンラートは珍しく骨に顔を引きつらせていた。

「そうだよ。そう伝えてたんだよなぁ…」

「そう言えばザビーネ嬢の見た目は知っているが、中は聞いていなかったな。どんな格なんだ?」

「すごくダウナー系な見た目でしょ?実際、基本的に塩対応なんだよ。でも、実は好奇心の塊でねぇ…」

つまり、あれか。押しかけた國の國王と會談することよりも、自分の知的好奇心を満たすことを優先したと?國王としての矜持やら何やらは持ち合わせていないが、それにしたって相當に失禮だぞ。

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呆れつつも私はザビーネ嬢を探すことにした。これまでいなかった人間(ヒューマン)というだけでも非常に目立つ。外で聞き込みすればすぐに見つかるだろう。

「ん?アイリスからのメッセージ…えぇ?」

「どったの?」

「…ほれ」

外に出ようとした私だったが、アイリスから屆いたメッセージを開いて困してしまう。そんな私を不思議そうに見ていたコンラートに、私はメッセージをコピーしてコンラートに送ってやる。それを開いたコンラートの表は凍り付かせていた。

コンラートの反応も無理はない。アイリスから送られてきたメッセージには一枚のスクリーンショットが添付されているだけだったのだが、その畫像には『マキシマ重工』の會議室にて様々な生産職と熱心に議論をわすザビーネ嬢の姿が寫し出されていたからだ。

「『マキシマ重工』は『ノックス』にあるんだぞ?」

「そうだね…」

「水路を使ったのだろうが…凄まじい行力だな」

『マキシマ重工』の會議室は『ノックス』、それも研究區畫に存在する。『ノックス』に行くには水路を使えば良いのだが、その水路をどうやって使ったのだろうか?

資の運搬で行き來する船があるので、そこに潛り込んだのかもしれない。だが、水路は龍人(ドラゴニュート)達の住処であると同時に彼らが警備している場所だ。許可を得られる訳もないし、ほぼ確実に航したのだろう彼はバレたら槍に貫かれていたことだろう。行力だけでなく度も凄いらしいな。

さらに研究區畫はわざと行き來するのを難しくしてある。この短時間で研究區畫にり込んだことも驚愕に値するし、まるで以前から研究者の一人としてずっといたかのように馴染んでいるのも驚きだ。

「それにしても、連中に馴染み過ぎだろう」

「馴染むのは當然さ。同類だもん」

「同類…?まさか…」

「そ。自分の研究のためなら周囲の迷なんて一切省みないってタイプだよ」

…どうやら研究區畫は良識に欠けた研究者の吹き溜まりになっているらしい。まあ、この國は世界の果てにあるのだ。爪弾きにされた者達しか集まらないのは道理である。道理であるし理解も出來るのだが…喜ぶことは難しいだろう。

一方で、良識に囚われていないからこそトンデモ兵を生み出せるような気もする。隔離するためだけに研究區畫を作るという手間を掛けたのは我ながら英斷だったようだ。

「ザビーネ嬢の魔道を持ってることが貴族のステータスになりつつあるって話は前にしたでしょ?」

「ああ。覚えているぞ」

「ステータスになるのは、希価値があるから。でも、天才たるザビーネ嬢は一日に幾つもの魔道を作るんだ」

「…何?」

コンラートの発言は完全に矛盾している。毎日複數の魔道を作ることが出來るのなら、供給は間に合うはずだ。なのに希価値が出るほど流通していない。どう考えてもおかしいだろう。

この矛盾はザビーネ嬢の父である侯爵が流通量を絞って政治の道にしている…と普通なら考えるだろう。しかしながら、ザビーネ嬢の本を知ってしまった私はわかってしまった。流通させられる魔道ないのだ、と。

「ほとんどは誰かに譲渡させられないような品だということか」

「大正解。想を言わなかったら熱湯を浴びせる全自紅茶淹れ裝置、質問に答えてくれるけど何故か必ず罵倒してくる音聲辭書、果以外をれたら中を燃やしてしまうミキサー…何でそんなの作ったの、って言いたくなる謎の魔道が大半なんだよね」

「ふざけているのか?」

「いや、本人は至って真剣に作ってるよ。ただ、技的に可能だからって余計な機能を詰め込めるだけ詰め込んでしまうってだけだよ」

「本當にマキシマ達の同類じゃないか」

優秀だが、だからこそ技的限界に挑戦しようとし、結果として余計どころかあったら困る機能をつけてしまう。ロマンのために変な機能を付けがちなマキシマや、技的限界に挑戦して異臭騒ぎを起こすパラケラテリウムとそっくりだ。

頭痛がしてくるような気がするが、私は何とか耐えるとコンラートと共に船に乗って『ノックス』へとんぼ返りをする。その際、私が乗ってきたリンにはモンスターキューブにってもらった。

小さくなって船に揺られるのは悪くないのか、モンスターキューブの中でリンは機嫌良さそうに尾を左右に振っている。今度はカルにも同じことをやってあげよう。きっと喜んでくれるはずだ。

水路を移して研究區畫にり、そして『マキシマ重工』の建に踏み込む。すると作業所に目的の人が…ザビーネ嬢が當然のようにクランメンバーに混ざって作業を行っていた。

「やあやあ!探しましたよ、お嬢様!」

「ん?ああ、『コントラ商會』ね」

努めて明るくコンラートは聲を掛けたものの、ザビーネ嬢はチラリとそちらを見てから再び作業に戻ってしまった。私は橫目でコンラートの方を窺うと、彼は普段通りの笑みを浮かべているように見える。

だが、その目だけは笑っていない。まあ、普通に考えて失禮にも程があるからな。彼がセッティングしていた私との會談を無視した時點でコンラートの顔を潰しているのだ。その上であの態度…怒るなと言う方が難しい。それなりに仲が良い私が注意深く見てようやくわかるほどにを隠しているのは流石は敏腕商人と言ったところか。

「なあ、コンラート。聞いていなかったが、彼はどうしてここに來たんだ?お前から頼んだのか?あり得ないとは思うのだが…」

「違うよ。侯爵…彼の父君から頼まれたんだ。イベントやってるでしょ?そのほとぼりが冷めるまで匿ってくれって」

あー、溺していると言っていたっけ。イベントが原因で変な蟲が寄ってきたのかもしれない。娘を守るためなのだろうが、その娘の態度があまりにも悪いのはいかがなものか。傍若無人な振る舞いはコンラートに託した侯爵の面目を潰すことにもなるのだ。

決して褒められた態度ではないし、なくとも頼んでいる側の振る舞いとは思えない。頼んだのは侯爵であって自分ではないと思っているのかもしれないが…隨分と甘やかされて育ったようだな。

「あっ、イザーム。コンラートさんも」

「アイリスか」

ただアイリスだけが私とコンラートの姿に気付く。ああ、研究區畫の數ない良心である。彼手を上手に使って普通に歩くよりも素早く移して私達の前にやって來た。

「メッセージを見てくれたんですよね?ザビーネさんって、今日會うはずの人だと思って送ったんですけど…」

「その通りだ。送ってくれて助かったよ」

「お役に立てて良かったです。それで、どうしますか?」

「そうだな…」

ザビーネ嬢はただの貴族令嬢ではない。一級の技能を活かした作品を作る職人という面も持ち合わせている。言い方は悪いが、その価値はかなり高い。無下に扱うという選択肢はなかった。

一方で可能な限り関わりたくない人でもある。初対面の相手にあまりにも失禮だからだ。ならばどうするか。私は決斷を下した。

「彼むなら研究區畫に住まわせてやれ。どこかに部屋くらいはあるだろう。そして自由に研究させてやろう。研究果で使えそうなモノがあれば…」

「回収しておきます。任せて下さいね」

全く、アイリスは頼もしい。私とアイリス、そしてコンラートは頷き合ってから研究區畫を後にする。その後、神的に疲れたコンラートの労のため、暇な者達と共にトランプで賭けポーカーに興じるのだった。

次回から9月3日に投稿予定です。

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